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転生者を探せ! 乙女ゲーム世界破綻対策本部局 新人かがやまちの場合  作者: 家具付
二章 潜入捜査は命がけ!

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初手から異常事態

初日の入学式、つまりこれはゲームの中だったら物語の始まりであると言っても過言では無い行事だ。

大体において学園ゲームというやつは、入学式から歯車が動き出すというのがセオリーらしいので、どう考えてもここから何かが発生するわけだ。

しかしながら今まで、乙ハタの人員が入学式のさなかに潜入できなかったと言う事実があり、私がポケットに忍ばせている探知機は、入学式のまっただ中でびいびいと大きな音を立てていない。

入学式で最初の一人が判明すれば、こんなわかりやすい事など無いのだが、そう簡単に”プリハイ”風の異世界は難問を解決させてくれないらしい。忌々しい。面倒くさい。

仕事だから遂行するまでだが、私はこの年になって入学式かよ……と内心でそんな感想を抱きつつ、こうしてほかの生徒達とともに入学式のお決まりである、校長先生のお話だの、教員からの注意事項だのを聞く事になっている。

この場に最初の一人がいるのならば、間違いなく探知機が作動する。

つまり……この場にいる人達の中に、最初の一人という乙ハタが血眼になって探す人間はいないという現実である。

これはどういう事だろう。私は周囲を気付かれないように見回す。入学式に集合するのは在学生全てでは無い。入学式に参加できる在校生は、名誉ある生徒会長と副会長くらいだと周りがひそひそ話していたので、生徒会長である第二王子様と、副会長である第一王子様の侍従は白という事であろう。生徒会長が第二王子様であって第一王子様で無いのは、慣例だと聞いている。第一王子様には数々の後継者としての年中行事が王室側であるために、生徒会の仕事まで時間を割く余裕が無いのだとか。それゆえ継承権の低い王子様が、生徒会長になる事が多いのだとか。王子様のいない年は、公爵家から男爵家まで熾烈な生徒会長の座を争う選挙が行われると言う話もある。身分関係ないのかいと言いたいが、貴族学校は入学した生徒には誰にでもチャンスを、を掲げているそうで、生徒会長になった男爵家の人間がいたという嘘か誠かと言う話もあるそうだ。

生徒会長になれば、それだけの実力者と目されるために、色々実家に便宜を図ってもらえるとかなんとか。よくわからん。

そんな中で、私は頭の中で、このゲーム世界によく似た世界の貴族学校で、接触した方が良いであろう相手をリストアップしていった。

生徒会長と副会長は白なので、接触しなくて良い。彼等に婚約者はいないため、彼等の婚約者が最初の一人という話にはならない。使用人が最初の一人である可能性は割と低い。何故なら使用人の功績は彼等の功績となるわけで、そういった噂はしたたる水滴のごとくじわじわと広がっていくか、大々的に広がるわけで、そう言った話はほかの乙ハタの探索班の人が探し当てているはずだから。

それが無いという現状から考えて、第二王子と第一王子近辺に、最初の一人はいないはずだ。

ならばその他の、ゲーム中ならば”プリンス”と言われるであろう何かしらに秀でた人達か。それはあと六人というわけで、彼等は二年生と三年生である。入学してほやほやの”プリンス”が最初の一人と接触していれば、探知機が何かしらの形で動くはずだ。それがないなら入学した一年生の”プリンス”の所は白。そうなると五人。

二年生と三年生の五人に近しい何者かが、最初の一人と想定できると言うわけだ。

ここに隠しキャラの教員も参加しているのだから、彼の近辺でびいびいと音がしないから彼も白。

私は思考の海に入っていく。周囲の気配をたぐり寄せていき、異分子と言えそうな何かがこの入学式の場に現れていないかを探っていく。

細く細く感覚を研ぎ澄ませていく。校長の話は長い。生徒会長の挨拶に移った。美貌の生徒会長に入学生達がざわめいている。色々な人達の意識が、生徒会長と、その隣のりりしい第一王子の侍従の方を向く。

私の細く研ぎ澄ました感覚の中に、針の一穴ほどの異分子が、そんな瞬間に引っかかった。


「危ない!!」


気付けば私は大声で怒鳴っていて、座っていた椅子をひっつかみ、投擲する場所を確認する事もせずに、生徒会長の立っている壇上の左斜め上に向かってぶん投げていた。

椅子をぶん投げるってなんだそれはと思うだろう。だがほかにとっさに投げて良い物が見つからなかった。それだけの話だった。


「ぎゃああああ!!」


私が投げた、その椅子は入学式などの式典用の、折りたたみだが丁寧に仕上げられた格式高い折りたたみ椅子で、それの形は現代のパイプ椅子に似ている。内部が空洞の樹木を使用した、軽くて簡単に運べるそれだが、勢いよくぶん投げれば結構な衝撃だ。

それが、私の感覚が探知した異分子……顔や体を覆った何者か、刃物かなんかを持っている人間……が、生徒会長に向かって何かしようとしたその瞬間をぶち壊した。

異分子の胴体に、折りたたみ椅子がもろに入る。異分子は吐瀉物をまき散らしながら壁にぶつかり、がしゃんと折りたたみ椅子が一段高い壇上の上に落ちて壊れて転がる。


「殿下!!」


最初に動いたのは第一王子の侍従で、彼が生徒会長に駆け寄る。続いて警備の人達が大騒ぎしながら腹に折りたたみ椅子が直撃した何者かを捕まえるために走り、生徒会長を守るべく校長が生徒会長と侍従の前に飛び出す。


「静粛に! 入学生は順番に割り当てられた教室に戻りなさい!」


副校長が冷静になろうとしながらも、焦った声でざわめく入学生達に伝える。


「……こんなシーン、”プリハイ”の冒頭からは存在しない……」


「これまでの探索班の情報の中に、こう言った事件はあったか!?」


「解析始めます! かがやまち! 入学生達の中に紛れて情報を集めるように!」


いきなり折りたたみ椅子をぶん投げた私にも、入学生達の視線は突き刺さっていたけれども、耳には乙ハタの解析班からの指示が入ったので、教員達から別室に来るようにという指示もないのを幸いと、私はほかの入学生達とともに、割り当てられた教室に戻っていったのだった。

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