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転生者を探せ! 乙女ゲーム世界破綻対策本部局 新人かがやまちの場合  作者: 家具付
一章 たぶん初級じゃない任務!

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大体誰でも同じことを考えるらしい

馬車の中には一人の男性が座っており、その男性の向かい側には、使用人と思しき見た目の男の人が、座っていた。


「この娘ですか」


「ええ、色々嗅ぎまわっていたようで


「まったく、命が惜しくないものですかね……」

私はまったく会話の流れが分からない。何が命が惜しくないだ、命は惜しいに決まっている。

だってまだ、限定のケーキ食べてない……!!

そんな事を思いながら、明らかに特権階級の男性を睨んだ時だ。

私の探知機が、ぶるぶると震えている事に気が付いたのは。

……そう言えば、変な時にびいびい鳴られたら困るから、サイレントモードにしていたんだった。

この探知機優秀で、サイレントモードにもできるのだ。

という事は、この男性が、この世界に入り込んだ最初の一人って事か?

そんな事を考えていると、男性が口を開く。


「いったいどこの商会の者です? 色々わたしの事を嗅ぎまわっていたようですが」


「どこの商会でもないけど」


「この! 若君何という口のききかただ!」


「いってええ!!」


私の口のきき方が、使用人の癇に障ったらしい。使用人が、容赦もなく殴りつけてきたのだ。

馬車の中で乱闘なんて、悪目立ちもいい所なんだが……そこら辺わかってんのかな。

私はそれでも、出来るだけ相手を刺激したくないのだが。

というか、言われた事に素直に答えただけで殴られるとか、どんな理不尽だよ!

うめきながら、痛みを紛らわせるために、深呼吸を繰り返していると、転生者が口を開く。


「どこの商会でもないのだったら、どうしてこちらの事を色々調べていたんですか?」


「ううう……」


「ズギ、あなたは少々乱暴が過ぎますね、彼女が答えられないほど痛みに苦しんでいるではありませんか」


「申し訳ありません、若君に対して、こんな下々の人間が何という言い方をするのかと思うと、頭に血が」


「あなたの心がけはとても立派ですが、私たちはこの娘の話を聞きたいから、こうして馬車に乗せたのですよ、気をつけなさい、今後は」


「ああ、若君、何と寛容なお心なのでしょう!」


寛容だったら、私が商会の手先で、嗅ぎまわっているとか思わねえよ、と思った物の、痛みが痛みであるために、私はうめいているばかりだった。

クッソ痛いな……

まともに喋れないほど痛い。こんなの山の中でも体験しない痛みだ。

しかし、この人が最初の転生者だったら、何とか探知機の紐を引っ張って連絡できれば……

と考えながら、スカートの中に隠した探知機を探る。

その間ずっと、探知機はびいびいと鳴っている。

だがここで、ひもを引っ張るという怪しい行為を、彼等が許すわけもなかったのだ。


「あなた、何を持っているんです? ズギ、取り上げなさい」


「かしこまりました」


「きゃあ! 何をするの!」


あっという間に、探知機をとられてしまったのは、私が手の中に探知機を隠したからだ。

手首を強く殴打されたら、手の感覚がなくなって、ぼろりと落したのだ。


「これは……?」


「怪しいものです、壊しますか?」


「……」


じっと私を見る転生者。私の持っていた物が明らかに、この世界の者と違っていたからだろう。

たまご型の探知機は、それ位、この世界に合わないものだ。


「もっと詳しい話が聞きたいですね、屋敷に連れて行きましょう」


「は……? はい」


ズギはいぶかしげな声をあげたものの、若君の命令には従うらしい。

馬車はこの間もずっと進んでいた物の、転生者の暮らす屋敷に向かう様子だ。

私は何とか、ここから脱出するか、探知機を取り返すかしたいのだが……どうすれば次の一手を打てるのか、全く分からなかった。

ただずっと痛みにうめくふりをして、無抵抗な仕草を見せて、油断を誘うほかなさそうなのは間違いなかったが。



「これは一体何なんです? 貴方は日本から来たのですね? でもどうやって……」


屋敷に連れていかれて、私は麻縄で縛られながら、転生者の質問を聞く羽目になっている。

相手の質問には答えない。ただ困った顔をする。


「これは一体何なんです? 日本人なら、痛みには弱いでしょう? 痛い目に遭いたくなかったら答えなさい」


「……絶対に、そのひもを引っ張って外しちゃいけない護身具です」


「ほう?」


私は罠を仕掛ける事にした。だってとりあえず、あの探知機の紐を引っ張れば、実行部隊と連絡が取れて、彼等を召喚できるのだ。

さあ、かかれ!


「引っ張ってはいけない理由は何ですか?」


「知りませんよ、聞いた事ないんで」


いけしゃあしゃあと嘘を吐く。転生者はじっと探知機を見ていた物の、ひもは引っ張らない。

引っ張って外せばいいのに。

そう思いつつ、私はいつでも立ち上がれるように、姿勢を直した。


「日本の防犯ブザーに似ていますね……引っ張ったら何が起きるんでしょうか……」


彼が完全に油断している、今しかない。


「えい!!」


私は全力を持って、立ち上がり、彼に飛びかかった、縄? そんなもの靴のかかとに仕込んでいた刃物で切ったわ!

こんな装備何の役に立つの、と周りに言われながらも、絶対に外せないんだと主張した隠し武器である。こんな役に立つとは思わなかった。

そして相手は、私が縄を抜けて飛び掛かるなんて思わなかったらしく、体勢を崩す。


「何を!」


「うおりゃああ!」


私は彼から探知機を取り戻すでもなく、ただ、その探知機の紐を思いっきり引っ張った。

引っ張ると……


“始まりの転生者、”ターゲット 認識しました! 実行部隊転移! 探索班は巻き込まれる前に帰還してください!


無機質な女性の声に似た声が響き渡り、その場は一面、モノクロと化した。

唐突に広がった、モノクロの世界に、転生者は動揺したらしい。


「な、なにを……転生者と言ったが、君は転移者じゃないのか!」


転生者が叫ぶから、私は胸を張った。

私は転生者でも、転移者でもない。

オトハタの構成員だ! 下っ端だけど!


「私はオトハタ探索班の一構成員! 貴方みたいな転生者を探すのが仕事さ!」


私が距離をとると、彼は明らかに混乱していた。私の言った事の中身が理解できないらしい。


「オトハタ……? 何故転生者を探して……?」


「転生者が世界を終わらせてしまうからですよ」


「いったいどこから現れたんだ!」


彼の問いかけに答えたのは、仮面をかぶった実行部隊の一人だ。


「あなたを憑依した体からはがさせていただきます」


実行部隊が転生者を中心に、三人、囲む。


「穏便に済ませたいので、大人しくしてください」


狐お面の人が言う。


「はがす? 違う、違う、私は生まれ変わったんだ、今度こそ素敵な恋愛をして、がっぽり儲けて、ぜいたくな暮らしを! 押しキャラだった彼女が美女になったんだから!!」


「あなたは生まれ変わったのではなく、もともと存在している人に乗り移った存在です。ですから、突然前世の記憶を思い出したように思っているだけですよ」


うわ、聞くと結構残酷かもしれない。

実際に、転生者はそのことを聞いてわめきだした。


「とりついていない、生まれ変わったんだ、今度こそこのイケメンの見た目で、日本の知識で!」


「残念ながらそれは叶わない望みになります」


実行部隊の一人が、話しかけて気をそらす役割なのだろう。残る二人が印を組み、一人に合図する。そこで一人が、転生者の魂を引っぺがす、あの鏡を取り出した。

それを構えて口を開く。


「人生はやり直せないからこそ、人生という物なのですよ」


無情な声で告げて、実行部隊が最後の印を組む。


「いやだ、いやだ、いやだあああああああ!!」


転生者は最後の悪あがきのように、実行部隊の中でも一番小柄な人にとびかかったが……そこで私は、今回の殴られた恨みがあったから、転生者に飛びかかって、後ろから蹴倒して押さえ込んだ。

猫お面の人が笑う。

狐お面の人が持っていた鏡は、吸引力だけならどの掃除機に負けない掃除機のように、ぐいぐいと転生者の魂を吸い込んでいき……

転生者の顔から、憑き物が落ちたように顔色がよくなり、彼は眠くなったように欠伸をして、目を閉じた。

鏡を見て、実行部隊の人たちがよし、という。


「君にまた助けられたね、帰ろう」


「はい!」


私は彼等の手を取り、そして毎度のごとく、落下するように、日本に帰還する事になった。


「や、やっぱり慣れない、これは慣れない!」


「私たちは慣れっこなんですけれどね」

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