幕間 能力によって特別仕様になるらしい
「じょなさとに会ったんでしょう、規格外の生き物に出くわした顔をしているもの」
そう声をかけて来るのは、最初から私の教育係に似た事をしてくれている、あおやどまがる先輩だ。
彼女は歴戦練磨の探索班の一人らしいが、最近はもっぱら探索班の調整を行っているらしい。
聞けば聞くほど謎が深まる、それがオトハタである。
「あの、先輩方がみんな持っているモノの改造版をもらって」
「じょなさとはそういう男よ、本当に規格外なんだから! それもじょなさとが単独で組み立てたに違いないわ、あの男そういう変な物作るの上手なのよ」
単独で変な物を組み立てるのが上手とはいったい。
天才ってどこでも天才のゆえんがあるんだな、とうっかり思ってしまった。
だがそれも当たり前のようだ。
「じょなさとはとんでもないわよ、解析班で一度も倒れた事がないのが、あの男だけなんだから」
他の人は倒れる仕様なのか、と思わず聞きたくなるわたしは悪くないと思う。
しかし空気を読んで聞いていないだけだ。とにかく山のような筆記試験を終わらせて、早く実践に出たいのだ。
何故ならば、しょっちゅうあちこちから、緊急シグナルが響いているのだから。
そんなにも、あちこちで転生者が自分勝手をしているのだろうか、……しているんだろうな。
そりゃあ皆の考える事は一緒だし、未来を知っているならば、自分の都合よく変えたいのが人間の欲望である。
それ自体は否定しないけれども、その結果世界が壊れてしまったら元も子もないと思うのだ。
わたしはポケットの中に入っている物をいじった。
たまご型のそれは、どこかストップウォッチ風のボタンが四か所についていて、なんだかとっても頼もしい。
部屋で尻尾のように伸びた部分を引っ張ったら、操作ガイダンスが流れていて、どれだけ丁寧な造りなのだろうと思う物があった。
「まさか二回目から、ブザー音とともに実行部隊呼び出しになるとは思わなかったですけど」
それも操作ガイダンスの最初に教えられたわけである。
一度目で覚えろ、と言いたげなガイダンスであるが、その他は四つあるボタンのどれかを押せば、説明が聞けるという安全使用でもある。
確かに、防犯ブザーも尻尾の部分を引っ張るし、そういう仕様の方が使いやすいという心遣いなのかもしれなかった。
「じょなさとならやるわね。じょなさとは解析班の中でも別格中の別格なんだから」
「しかし、何でこれだけ別枠な見た目なんでしょうか」
たまご型のそれは、バズ先輩とかの探知機とは、大きく違う見た目をしている。
とてもじゃないが、スマホもどきよりも怪しい見た目だ。
「支給されている端末は、いくつか種類があるの」
「そうなんですか」
「こちらに来て使用しても目立たない形、これはめちすばずが持っている物ね。あとは異世界で持っていて違和感がないもの。これはヤカブが持っていた物が該当するわ」
たしかに。バズ先輩のものはスマホみたいな形状だったが、ヤカブ先輩が持っていた物は、鉱物を使ったお守りみたいな形をしていた。
どちらも、別の世界にあったら、違和感ばりばりな見た目だ。
「それとは別に、じょなさととか、解析班が独自の研究結果に基づいて作る別型ってものがあるの。まちさんのはそれね」
私のものは、確かにじょなさと先輩が、改造したって言っていたけれども、これはもっと特別枠だったのか……大事にしなければ。
「たぶん、あなたが立て続けに二件も解決したから、解析班はどこまでやってくれるのか知りたいのよ。あなた色々規格外だって報告が、あがってるからね」
そういってあおやどまがる先輩はにこりと微笑んだ。
「あなたみたいに、直ぐに見つけられたり、勘が働く人間ばっかりじゃないのよ、ここで働いている界渡はね」
どこか寂しそうな声をにじませた彼女の手は、よく見ると手の甲に引き攣れた傷痕が残っていた。
それはまるで、何か大きなものに、手を貫かれたかのような傷だった……




