幕間 薄すぎるコーヒー牛乳と探知機
結論として大浴場は今日も素晴らしいくらいに気持ちがよかった。
こんなお風呂は本当に楽しい。広いしお湯の温度は冷めないし、シャワーとかも水圧が弱かったりしないのだ。
石鹸などは、各々アレルギーや肌に合わないだの色々あるため、持参だけれども、気にしない人は据え付けのを使う。私は据え付けのを使っているけれども、どうも解析班の人たちは、風呂も入れない時が多いから、据え付けの物しか使わない様子だ。
通りすがりの人たちのシャンプーの匂いが、みんな同じだから勝手に判断している事でもある。
私もじっくりお湯につかって、体のコリをほぐして、心から満足して着替えて、大浴場の入り口から、いつの間にか現れていたマッサージチェアなどの設備がある、いかにも銭湯の待合所みたいなところにでてしまった。
いったいこの施設のからくりは、どうなっているんだろう。
そんな事を考えても、神様とかも関わっているというオトハタに、不可能なんて存在しないのかもしれない。ど〇でもドアがあるわけだし。
「ああ、待ってた待ってた、コーヒー牛乳!」
裸足に安っぽいビニルのスリッパをペタペタと鳴らして近付いてきたのは、じょなさと本人である。
この人待っていたのか、コーヒー牛乳のために……と思うと呆れてしまうが、本人がそのあたりを一向に気にしていないらしい。
それどころか、周囲の誰も、私に対する集りに似た行為を止めないのだ。
「……買うんですか」
「買ってもいいよ?」
「言いましたね……?」
コーヒー牛乳は一本250円くらいする。これ一本にそんな値段を払ってたまるか。
私は彼に声をかけた。
「食堂に来てくれたらコーヒー牛乳あげます」
「うん」
何言われているのか、分かっていなさそうだと思いながらも、私は彼を連れて食堂に向かった。
あるのは当然、買い置きの物とか常温保存のものである。
私は数日前に見つけていた、皆で共有して飲んでいいらしい、インスタントコーヒーの瓶を開けた。
それと熱湯、それからこれもみんなで飲んでいい事になっている様子の牛乳。
誰の持ち物かも不明な大きなマグカップに、それを適当に突っ込んで、スプーンでかき回してから差し出した。
「はい、コーヒー牛乳」
「こういう事をしてくれる人は初めてだなあ。皆あの場所で買ってくれるものだから」
「単価が高すぎます」
「そっか、そっか。……へえ、美味しい。君は僕の好みの配分ができるんだね、珍しい」
私はにこにこと好意的な彼に、ケチなコーヒー牛乳を褒められたため微妙だった。
粉は少なめ、お湯をがっつり入れたアメリカーノもどきに、牛乳をさめそうな位入れた謎の配分だ。
本当に雑に入れたのに、彼は嬉しそうな顔で飲んでいる。
「それがいいんですか」
「君は嫌い?」
「もっと濃くないと、コーヒー飲んだ気分にならないかも」
「それは他人の好みだからねえ。ありがとう。君は確か探索班の新人さんだったよね」
彼はそう言いだして、自分のポケットから何かを探り当てた。
そのポケットは何でも入っているんじゃないか、と思うほど膨らんでいて、よくまあ探り当てられたものだ、と半ば感心しながら見ていたのだ。
彼は探り出したものを、私に差し出してくる。
「新人さんが規格外だから、端末もちょっと調整してほしいって局長に頼まれてそのまま、ポケットに入れっぱなしにしちゃってた。はい、しまらないけど、これどうぞ」
「……これなんだか、バズ先輩のと違うような」
バズ先輩のものと、渡された端末は大きく姿が違う気がするのだが、そこはどうなのだろう。
新機能を追加したら、こうなるのだろうか?
そう問いかけたくなるほど、形状は大きく異なっている。
スマホ状のものとはいえない。
スマホよりも珍しい形であること間違いなしなのだが、これは一体。
真剣にそれを見つめていると、じょなさと先輩がにこりと笑顔でこう述べた。
「君は自分で方角も周辺の町もわかるって聞いたから、多少機能を追加したんだ。後君すごく勘が働くみたいだから、それも加味して、早く実行部隊呼べる仕様にしたんだよね」
「それってすごい事じゃ」
「君ここにきて数週間で、二つも山を解決しちゃったでしょう。君もってんだもん、何かいい物」
にこりと笑ったじょなさと先輩は、まだなみなみと入っているマグカップとともに、壁に直進し、そのまま通り抜けていってしまった。
「解析班って、規格外すぎるだろう……」
私の突っ込みに、その辺にいた人が噴出していた。解せぬ。




