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パンデモニウム  作者: 墨崎游弥
魔族編
15/30

魔族を倒したいか?

「新しい空洞に行ってきたのかい?」


 階段横で待ち構えていたカナリアは言った。すべてを知っているような表情で。

 隠し事は不可能だ。シオンは観念し、答える。


「行ってきましたよ。このところ色々なことが起こりすぎて頭がおかしくなりそうです」


「そっか。今から知っていることをすべて話しなさいな。仮に何か隠したら炎の弾丸でぶち抜くからね」


 と、カナリアは笑顔で言った。彼女の体を魔力がほとばしり、いつでもシオンを攻撃できる状態だ。怒っているわけではない。ただ、シオンを本気で問いただすつもりだった。


「はい。どうかショックを受けないでください。イーノックとカインは魔族でした。とても俺に太刀打ちできそうな相手ではない」


「だろうね。そうでもなかったらクレイグを呼ぶことなんてしなかった。が、まさかその2人だとはね。まあ、他にもいるだろうけど。とにかく、敵を2人見つけ出してくれたことは感謝する」


 カナリアは長い息を吐いた。直情的ですぐに行動に移そうとするカナリアでさえ慎重になっているこの状況はまさに異常事態だった。

 3人を重苦しい空気が取り囲む。これからどう行動するか、イーノックを殺さずに済む手段はあるか、鮮血の夜明団から犠牲者は出ないか。考えは三者三様だった。

 そんな中で階段からもう1人、人がやってくる。黒髪と鎖を垂らして。


「申し訳ありません、カナリアさん。魔族こそこの目に焼き付けられたものの妨害が入って倒すことまではできませんでした」


 その男クレイグは言った。赤い上着に何かで切り裂かれたような跡があること以外は特に変わったことはない。無傷であるあたり、クレイグの実力が見て取れる。


「大丈夫。それで、妨害したのは誰?どんな人だったか?わかれば真実に近づける」


「そいつは赤黒い髪の眼鏡をかけた女でした。雷の魔法で俺を妨害してカインと2人であの空洞の奥に向かっていました」


 クレイグが答えるとカナリアは何かがわかったようにほくそ笑んだ。だが、その目は全く笑っていなかった。


「やっぱりそいつか。私も怪しいと思っていたよ」


 シオン他2人にはカナリアの考えが読めなかった。だが、カナリアは既に決断していた。今行動しなければ大変なことになる、今すぐに行動に移す、と決断していた。

 彼女はシオンやクレイグが思うほど穏やかではない。


「私があの女に接触してみる。シオンとウォレスとクレイグは考古学者のキム教授を訪ねてくれるかい?」


 と、カナリアは言う。

 考古学者キム。彼はディサイドの町に住んでいながら魔族という種族に興味を示す変人。パロ支部にもよく出向いていることから、クレイグの知らない人物ではなかった。


「わかりました。幸い、俺もキム教授の住所と研究室の場所はわかります」


 クレイグは言った。


「頼んだよ。それと、ごめんね。これだけ丸投げにしてしまって。けれど、私たちは必ず魔族を倒す。いいね?」


 4人はそれぞれの目的とする場所へ向かった。カナリアはクレイグを妨害した人物の居場所へ、シオンたちは考古学者キム教授のもとへ。彼らが無事に再開できることを祈って。




 ディサイドの町の住宅街。キムはその場所に研究所を置いていた。

 一般人の住む住宅地の一角に柵で囲った研究施設が建っている。内部には様々な論文や調査用の器具などが置かれ、一般人の立ち入りは禁止されている。

 そんな研究所に立ち入る者は一般人。いや、人ではない。人間ではない、人間より強い力を持つ人外の存在。


 彼は有刺鉄線や電気柵をものともせず、研究所の敷地内に入る。

 目的はこの場所にいる人物を殺すこと。その人物が生きていれば彼に命の危険が及ぶ。


 虎柄のスーツを着たオレンジ色の髪の男は研究所の敷地内を歩いて進んでいった。




 侵入者に遅れること30分。シオンたちも研究所にたどり着いた。敷地をぐるりと囲む柵、そして中に入るための唯一の門には「ディサイド考古学研究所」と書かれていた。


「セキュリティのために柵には電気が流れている。門から入るしかないが、その門も簡単に開けられるものではない。絶対に見るなよ」


 クレイグがそう言って門のインターホンに近づいた。インターホンを押すと何かが浮き上がる。クレイグは浮き上がったものに鮮血の夜明団の手帳をかざすと番号キーを押す。

 5秒ほど経つと門のロックが外れ、中に入れるようになる。


「急げ!この門は2分で勝手に閉まるぞ!」


 と、クレイグは言った。

 シオンとウォレスは門をくぐり、考古学研究所の敷地内に入った。


「さて、ここから先にいるはずだな。あの人は研究所で徹夜するタイプの人だ」


「熱心なのかやらされているのかはわかりませんが徹夜だと生産性が下がりますよ」


 ウォレスは口を挟んだ。


「そうだな。まあ、あの人いわく集中していたら日をまたいでいたとのことだ。

 さて、中に入るとするか。早いとこ資料を見つけておきたい」


 と、クレイグは言う。

 やがて3人は研究所のうち、2番目に大きな建物に立ち入った。異様な雰囲気。ここに遺された情報を奪われるか消されてしまえば状況は悪くなる。


 悪い状況に持っていく者はいつであろうとも存在する。そう、この考古学研究所の建物にも。

 彼らはやがて接触する。



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