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これなんて乙女ゲームですか?  作者: マカロニ
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「ルイス、ただいま帰りました!って、ちょっと誰その可愛い方!?」


ルイスと服を一緒に選んでいた時に、その女性はやってきた。


どうやったらそんなに騒がしくドアを開けられるのか不思議なほどの物音を立て、それにかき消されないくらいの大きな声を発している。簡単に言えばうるさい人だ。


彼女は私たちよりも年上に見えるが、若々しく瑞々しい輝きに満ちている。顔はルイスによく似た美人で、「裏切りは女のアクセサリー」とでも言いそうなスタイルを持つ。あどけない雰囲気だが、セクシーな体型と色香が魅惑的だ。蠱惑的の方が正しいかもしれない。


その彼女は私に抱きつき、身体中をペタペタと触りまくる。いや、別に触られるのは嫌じゃない。だが抱きしめられると、豊満で柔らかい胸があたりドギマギしてしまうから困る。


ルイスは慣れた手つきで彼女を引き剥がした。私に「ごめん」と謝ったから、慌てて首を振り気にしていない事を伝える。


むしろ幸せな気分になってしまって申し訳ないくらいだ。…何で、とは言えないけど。


「これは僕の姉さんのドロシー。姉さん、誰にでも抱きつくの止めろって言ってるよね?」

「だって可愛い子だもの。抱きしめたくなるのは自然な事だわ!」

「それは姉さんだけの常識で、世間一般ではそういうスキンシップの取り方を変態行為って呼ぶんだからな!」

「あら、私に抱きつかれて喜ばない人は見た事がないのだけれど?」

「少なくとも僕はうっとおしくて嫌だ」

「ルイスが冷たい…!反抗期かしら?でもルイスが女の子と楽しげに話してるところ初めて見たわ!もしかして恋人かしら?あ、やだ、待って。そしたら私の義妹になるの!?…ルイス。すぐ籍を入れてくる事をオススメするわ!」


怒涛のマシンガントークに相槌を打つ暇すらできず、私は曖昧な微笑みでやり過ごそうとした。ルイスのオタクトークのルーツは確実に血筋ね。


というかあっさり私が女だってバレてる。服屋の店員さんってスキル高すぎない?前世では少し憧れていたけど私には無理そう。


私は結婚させられそうになったところで意識を取り戻し、訂正するために彼女の服の袖を掴んだ。


「待ってください!私はルイスと仲良くなりましたが、そういう関係ではありません。ただ服を見にきただけですし…」

「そういう事。まだ口説いてもないんだから余計な茶々入れないで。この出会いは大事にしたいんだから」

「ふふっ。まだ、ね?分かったわ!お姉さん、納得する!で、お名前は何ていうのかしら?」

「アシュレイです。アシュレイ・フォード」

「アシュレイ!随分変わった名前ね。あ、嫌味じゃないのよ?女の子にしては珍しくて素敵って意味!…それにしてもあなた可愛いわね」


ドロシーはふんわり微笑み、私の手を握る。普段なら賛辞としてありがたく受け取る言葉も、自分より圧倒的に可愛い女性に言われると嫌味かと思ってしまう。前世の僻み根性が恨めしい。


「そうですか?私はドロシーのが魅力的だと思いますけど」

「まぁ、嬉しいわ!でも私の理想はあなたよ?この店にある服のデザインも、あなたのように線が細くて儚げな少女をイメージしてるの!それにしても、もったいない格好をしているのね?これじゃ素材の良さを活かせてないばかりか、殺してしまっているわ…」

「ほら、王都でも活躍している姉さんが言うんだから似合ってないんだよ。女の子らしい方が、か、可愛いと思うし」

「くっ、馬鹿にして!でも男装は必要なの!」

「あら?そうなの?じゃあもっと柔らかい格好にしましょう!私が選ぶわ。ね、良いでしょう?お願い」


顔の前で手を合わせて懇願する美女を誰が無下にできるだろうか。いや、誰もいない。


私はドロシーに大きく頷いてみせ「こちらこそお願いします」と頭を下げる。彼女は花が咲いたような満面の笑みを浮かべ、すぐさま店の中を周回し始めた。


私たちがボーッとしている間に何着か服を持って戻ってきた。その間、約3分。もはや苦笑しか出てこない。


「これなんてどうかしら?」


彼女の問いとともに差し出された服は、淡いブルーのチュニックに白の7分丈パンツだった。優しい色合いで女の子っぽいが男性でもおかしくないシルエットだ。紐で腰の辺りを縛ればもっとスタイリッシュになるだろう。


次に出てきたのは濃紺のシャツにグレーのハーフパンツだ。細身のデザインが女らしくもあり、ダークな色合いは格好良くもある。襟元に刺繍が入っておりデザイン的にもお洒落だった。


それからも色々なコーディネートを教えてもらい、私は結局最初の2着を買う事にした。アスランからお金貰っといて良かったと内心安堵しつつ、私は服を受け取る。


ドロシーは嬉しそうに微笑みながら、ふと思い出したように尋ねてきた。


「そういえば、あなたの顔見た事ないわね?ここの村人じゃない客が来たなんて一度もないけれど、あなたはどこの方なの?」

「それなら僕も気になってた。どうなの?アシュレイ?」


面倒な質問だが避けては通れないか。しょうがない。私は覚悟を決めるように息を吐いた。

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