表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロの蝶  作者: Riviy
第八章:疑心暗鬼の光と闇
97/153

第八十九ノ世界:勝者、敗者




アーギストが耳元で囁き返されたその言葉を聞き、剣を振った。剣と刀が交差する。二つの刃物が交差した際に起きた風が二人の服をはためかせる。そして、二人はそのまま激しい攻防戦を繰り広げる。アーギストは素早く人物に突きを繰り出す。しかし、その攻防戦の勝負は既についているにも関わらず。


「へぇ~そんなに信頼しているんだね。やっぱり、自分を造って(産んで)くれた人だから?」


剣と刀を交差させた間からアーギストがグイッと人物に向かって噛みつくように、顔を近づける。仮面と顔が触れあってしまいそうなほどの距離になっても人物は物怖じしなければ、行動を起こすことはない。ポタポタと人物の腹から血が滴り落ち、二人の足元に紅い水溜まりを作って行く。人物はブンッと刀を振り、アーギストを剣と共に弾く。よろめく彼の懐に一気に迫る。人物は、思っていた。茶番は、もうやめよう、と。アーギストに何か言われたからではない。自分の産みの親であり主人である愛しい神様のためだ。


人物は仮面越しにアーギストに気づかれぬよう、背後を確認する。そして、アーギストの剣を持つ手に向かって刀を容赦なく、素早く突き刺す。手首に突き刺さった刀は、アーギストの動きを封じ込めるかのようにいつの間にか背後に迫っていた壁にその手首を縫い付けた。勢い余って背中を壁に強く打ち付けるアーギスト。アーギストがつい数秒前に後方を確認した時は壁なんてなかった。それに此処の闘技場の壁は白。だが、アーギストの背後にある壁は灰色をしていた。つまり、これは人物の能力。なんとも厄介だな、とアーギストは混濁する頭の隅でそう思った。手元から弾かれた剣は人物の遥か後方に飛んで行き、カツンッ!と床に落ちてバウンドした。アーギストはクッと苦痛を漏らす。アーギストは自由な片手に光をまとわせる。そんなアーギストの思考を読み取ったのか、人物は腹に向かって、再び蹴りを放った。腹に突き刺さる痛みと体に走る痛みの電撃。アーギストが苦痛の声をもらしながら、前のめりになる。ゲホゲホ、と咳き込むアーギストを見下ろす人物。人物は静かにアーギストの手首を突き刺す刀の柄を握り、さらに奥に突き刺す。


「っっ!」


痛みに顔を歪め、声すら出せぬアーギスト。アーギストは軽く両膝をつきながら倒れこむ。しかし、手首が刀で壁に固定されているため、倒れこむ事は出来ず、中腰になっている。手首から流れ出る紅い血液が灰色の壁に絵を描いていく。アーギストは人物をキッと憎らしげに睨み付けた。仮面の隙間から人物が自分を見下ろしている瞳が見えた。酷く冷たい瞳。アーギストは口角の端を軽く上げながら、自由な片手に光をまとわせようとする。が、光は出なかった。先程まで普通に出来ていたのに、突然できなくなったのだ。アーギストは驚く事もなく、冷静だった。そして、自嘲するように人物から視線を外し、嗤った。恐らく、手首からの大量出血ショックにより、一時的に能力が使えなくなっているのだ。以前にも、似たような事があった。あの時は、数秒で治った。だから今回も恐らく。これは、演技だ。相手を信じ込ませろ。

人物はアーギストが負けを、処刑を受け入れたと思ったのか、アーギストを腰を屈めて眺めた。そして、彼の片手に微かに集まりつつある光に気づいた。アーギストは、自分が演技に気づいていないとでも思ったのだろうか?初めは騙された。けれど、今はもう()()()()()。人物は片手に別の刃物を出現させる。人物が新たに出現させた刃物は、先程よりも切っ先が妖しく輝き、鋭く尖った鋭利なナイフ。そのナイフを容赦なく、紅い血液を手首から吐き出すアーギストに向かって振り下ろした。


「!」


が、アーギストの片手が数秒早かった。光をまとった彼の手が人物の額をかすったのだ。そのため、人物は微かに後方に仰け反った。人物が仰け反ったため、ナイフはアーギストの顔の横を通り過ぎた。通り過ぎた際、アーギストの髪の先についているビーズがパリンッ!と甲高い音を立てて砕けた。そして、アーギストの手がかすった衝撃で人物の仮面が外れた。カコン、と小さな音を立ててアーギストの目の前に仮面が落ちた。仮面からは紅い紐が垂れており、その紐で固定していたのだろうと云うことは容易に想像できた。だが、アーギストにとってはそんな事、どうでも良かった。間近で見た人物の素顔に驚いていた。人物は外れてしまった仮面の代わりか、片手を顔に当て、動揺を隠していた。しかし、その動揺を隠し、人物はアーギストを見下ろす。ピクピクッとアーギストの片手が痙攣する。アーギストの頬がひきつる。何故?嗚呼、そんな事分かってるはずなのに。視界が霞む、意識を必死に繋ぎ止める。人物がアーギストを見下ろす。


勝負は決した。勝者は、神様が造った人物で。アーギストは……アーギストは……()()()()()()()()()()()()。彼は早く殺れ、と云わんばかりに人物を見上げた。けれど人物は神様からの指示を待っているのか、ナイフを構えたまま動きを止めていた。アーギストと人物の足元に転がった、白い大理石の床によくはえるその仮面が動きを止めた二人を静かに見上げていた。


百部に到達してしまう…一番長い物語になりそうで少し震えてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ