第八十六ノ世界:演技の延長戦
アーギストはある人物と闘技場で対峙していた。この闘技場はアーギストが住む世界〈夜の京〉がモチーフとなっていた。天井と云うよりも空には美しい夜空が、眼下にいる者達を美しく見下ろしている。アーギストの目の前にいるのは神様と、ある人物。その人物は顔を仮面で覆っているので正体は不明だが、アーギストにはなんとなく、予想出来た。きっと、あの時見た……
「なっ、なんのよ、う?か、神様」
アーギストが怯えた声と、神様の威圧に怯えたように言う。その演技に気づいている神様にしてみれば、アーギストの演技は嫌なものでしかなかった、苛立つものでしかなかった。それにはアーギストも気づいていた。聞かなくても、自分を見る目でなんとなくわかっていた。だからこそ敢えて、神様を苛つかせようとしていた。神様は感情があまり出ていないように見えて、怒りにだけは敏感だ。怒らせれば、自分に有効な情報を口走ってくれるかもしれない。そんな思惑もアーギストにはあった。
神様は大袈裟に肩を落としながらアーギストに言う。
「ボクが此処に来た理由、わからないわけじゃないでしょ?」
「!……なんの、こt「とぼけるな。わかりきってるくせに」……」
アーギストの言葉を遮り、低い声で、足元から響くような声で言う神様。その声と言葉にアーギストは冷や汗を垂らす演技をする。そして、神様を下から除き見る。神様は、これを演技と思っていない。けれど、既に演技はバレている。これ以上、演技を続けるのは無難か。アーギストは鼻で嘲笑うと言った。
「まぁ、ね。だって、計画通りで物語通りだもん」
「は?何言ってんの?言ったよね、"休息時間内で殺し合いをしてはいけない"って。君は、それを破り、〈吉原の華〉を殺した……覚悟できてんだろ?」
神様がフードの中からギロリとアーギストを睨み付ける。そして、隣にいる人物に目配せをする。隣にいる人物は静かに、無言でコクリ、と頷いた。なんについての目配せか。分からないほどに、アーギストは落ちぶれてはいない。アーギストは慌てた様子を、敢えて相手に強調するようにして叫んだ。
「それでも!アナタは、ボクの世界を消滅しはしない!」
「…………」
神様の動きが止まった。アーギストは内心、細く微笑んだ。此処からは、アーギストがどれだけ神様を揺さぶれるかが勝負だ。アーギストは両手を胸の前で組みながら、神様を嘲笑うように続ける。神様は黙ったまま、固まったままだった。
「その人、『キューブ』で造ったんでしょう?ボクと同じ。そして、『キューブ』。『キューブ』は、神様の命であり、創造と滅亡を司る……ボクは知ってるよ?それ以上の事も、ね……もちろん、神様、アナタの事も。アナタが本当h「黙れっっっっっっ!!!!!」」
突然、アーギストの言葉を遮って神様が叫んだ。その声量と神様から放たれた凄まじい畏れにアーギストは半歩、後退った。アーギストの頬を冷や汗が伝い、大理石の床に落ちた。こんな神様、ボクはきっとまだ知らない。嗚呼、でも、でもね神様。此処まで予想通りなんだよ。アナタが怒る事なんて、予想済み。
神様がゆっくりと俯いていた顔をあげる。フードで見えない顔から、視線だけで人を殺せるような殺気が放たれている。背後からはやはり神様、と云うべきか、凄まじいオーラが漂っている。そのオーラは、近くにいて触れれば鋭い刃物ですぐさま心臓を刺されてしまいそうなほど、鋭く尖っている。それらにアーギストは一瞬、怯えたにも関わらず、神様の隣にいる人物はぴたりとも動かなかった。それにさすが神様が自ら手間をかけて造っただけはある、と関心した。自分と同じ、人造。
神様の視線がアーギストを貫く。暗くてよく見えないが、明らかに猫のように光っていた。アーギストはクスリと口元を押さえて笑うと片腕を広げる。
「ふふ、まぁいいよ神様。アナタの秘密を、弱味をボクが握っている限り、アナタは容易に〈夜の京〉を消滅せはしない。ルール違反だけならまだ、許されるけれどね」
「は?本当に、てめぇは何言ってんだ?やっぱり、鈍ったのか?ルール違反者」
アーギストの言葉に神様は首を傾げながら、いつもの淡々とした雰囲気を消して言う。そこにいるのは、神であって少年、そして酷く人間じみた者だった。アーギストの言葉全てを神様は理解していた。恐らく、彼は自分を混乱させようとしているのだ。そして、処刑から逃れようとしている。以前に閲覧した一覧表には、アーギストは前にも似たような状況で相手を手玉に取り、最悪の事態を回避していた。今回もそうだと神様は確信していたのだ。だから今回は、自らが手掛けた愛しい者を連れて来たのだ。神は偉大だと、神には、創造神には到底勝てないのだと思い知らせてやる。例え、輪廻転生を果たしたとしても、その魂に深く刻み込まれるように!神様は内心、大きく笑っていた。それは正解か不正解か?その答えを持っているのはアーギストか否や。
アーギストはクスクスと口元をブカブカな袖口で隠して笑う。
「秘密を握っただけで世界を消滅すなんて、世界が許さないし、不公平だって喚く。でも、ルール違反なら?それなら、恨まれるのは代表者であるボクだけ……そう思っているからボクを抹殺するのでしょう?秘密を握ったまま死んだ場合、その秘密は何処に行くか検討はつかない……」
「確かにそうだな。交渉でもしたいのか?」
神様の口調が完全に変わっている。化けの皮が、剥がれてきているのだ。アーギストは顎を引き、俯き加減で神様を睨み付ける。アーギストの心中は拍手喝采だった。かかった!アーギストは続ける。
「ん~ん、そういうんじゃないよ。ただ、ボクは違反で殺される。でもね、秘密を握ってるってことだから、故郷は殺し合いの権利を持たせて。此処まで…神様だって言わなくても分かってるでしょ?」
自分は殺し、世界は殺さない。つまり、アーギストは死ぬが世界は消滅さずに別の代表者を送り、続けるということ。秘密を握っているから。
神様はしょうがないとでも言いたげに肩を竦めた。それは、交渉成立を意味していた。此処で、アーギストの死亡は決定した。覚悟していたのだ、自分が犠牲になれば。だって、そういう目的で来ているんだから。アーギストは内心細く微笑んだ。さあ、此処からが本番だよ、神様。
神様はアーギストの闇のように深い思惑など、自分が堂々巡りに陥らされていることにさえ気づかない。目の前にある事にしか、その目も関心も興味も動かない。神様は隣の人物に指示を出すようにパチンと指を鳴らした。するとその人物は軽く、神様に向かって頭を下げる。と、その手に何処からともなく出した刃物を握る。形から見て、仕込杖の刃物がある部分のみを握っているようだ。アーギストは袖口の中で手に光をまとわせ、能力を発動させながら武器を創造していく。
「さあ、狐影、あの馬鹿な死にたがりを処刑しな」
「『創造物』・ナイフ!」
その人物がアーギストに向かって飛び出すのと、アーギストが能力で造った武器を構えたのはほぼ同時だった。
この物語を投稿したのが九月六日でクロなんで狙っているのは四月六日でシロ。無理な気がする……まぁさておき、説明分かんなくなったらスルーですよ何時ものように!←




