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モノクロの蝶  作者: Riviy
第八章:疑心暗鬼の光と闇
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第八十五ノ世界:能力の開花方法予行


朝食後、匡華と村正は使っている自室に帰って来ると、部屋に鍵をかけた。既に殺し合い開始の時間は過ぎている。誰かが入って来る可能性を考慮してのことだった。匡華が村正に視線を向ける。村正が力強く頷き、深呼吸をすると能力を発動させる。黒い光が村正を包み込み、何処からともなく吹く風が彼の髪を妖艶に揺らす。


「『鬼姫』、対象:〈シャドウ・エデン〉住人。連絡開始スタート


ブオンと軽く風が吹き荒れる。と村正を包んでいた光は風で消え、匡華と村正の目の前で人の形を作って行く。小さな青白いキューブが一つ一つ積み重なっていき、まるで何処かのゲームを形作っているかのようだ。形作られたのは三人の人物。彼らは、透明な体をしている。相手からも自分達が見えているようで三人中二人は、匡華と村正を見て心底嬉しそうに微笑んだ。


「匡華!」

「村正」


嬉しそうに二人に手を差し伸べる。が、透明な手は意図も簡単にすり抜けてしまった。それに驚いたように二人に駆け寄った二人が、彼らを見上げた。


「……どういうこと?」

「これ、能力ってわかってます?祢々も蜘蛛も」

「わ、分かってる!」


村正の問いに蜘蛛切丸がムキになって叫ぶ。それにわかってなかったのだなと可笑しくなって笑った。村正が不貞腐れる蜘蛛切丸の頭を撫でようとして、手を止めた。今、こちらでこの三人が透明、そして触れられないとなるとあちらでも同じ事が起きているのは確実だった。だが、それは先程の現象を越えて大きく外れた。祢々切丸が村正の手を掴む。すると、そこにいるかのようにぬくもりが伝わってきた。先程は触れる事も出来なかったのに、どうして?驚く村正とは裏腹に、蜘蛛切丸は久しぶりの兄に抱きついた。嗚呼、驚くのは後だ。そう思った村正は兄弟二人を抱き締めた。彼がそんな行動に取るとは思わなかった二人は、目を見開いていたが、ギュッと抱き締め合う。久しぶりに兄弟全員が集まった。嬉しい事だった。暫くその光景を眺めていると匡華は、最後の一人がおろおろしていることに気づいた。味方である伽爛だ。自分でもこの状況が理解できていないらしい。匡華は仲睦まじい彼らを振り返った。


「ほら、そろそろ始めるよ!……祢々、蜘蛛、元気だったかい?」


村正から離れながら蜘蛛切丸が「当たり前だろ!」と云うようにニッと笑って見せた。祢々切丸もニッコリと笑う。それに匡華も安心する。匡華はパンッと手を叩くと軽く説明を始める。


「今、私達は村正が受け継いだ能力によって繋がっている。伽爛、私達は貴方達が欲しい内部こちらの状況を、貴方達は私達が欲しい外部そちらの状況を教えておくれ」

「良いけど…神様にバレたりしないのかい?加護夜くん」


伽爛がその体格に似合わぬ、怯えた声で言う。神様にバレる、と云うことは自分達がいる世界が消滅される可能性もあるわけで。それに気づいた祢々切丸と蜘蛛切丸も不安そうに匡華と村正を見る。すると村正は片目を閉じ、人差し指を口元に当てて、妖艶に微笑む。兄弟の証がライトに反射して怪しく光る。


「大丈夫です。すでに確認済みです」


その答えに匡華が細く微笑んだ。以前、匡華は神様に「手紙を出したい」と交渉していた。殺し合いが始まる数時間前の事である。匡華の要望に神様は快くー顔は見えなかったがー応じた。その結果、匡華が送った手紙は神様を通じて外部にいる彼女の伯父に届けられ、返信が来た。戯いもない会話だったが、それが此処で役に立った。つまり、手紙を送れ、返信も可能と云うことはルール違反ではない。屁理屈を云えば、外部と連絡を取ってはいけない、などと云うルールは聞いていない。つまり、存在しないのだ。神様がそんな初歩的ミスをするとは思えないが、なにやら理由わけがあるのだろう。そういう旨を説明すると彼らは納得したようだった。匡華は、その説明を言いながら、村正の新たな能力は彼の意思によって先程触れなかったのではないのかと考えた。村正が能力越しでは触れないと思ったから、手はすり抜けたのではないか。それに気づいたから祢々切丸は「触れれる」と云う意思と共に村正の手を掴んだのではないだろうか。そう考え、祢々切丸をチラリと見ると彼は悪戯っ子のように小さく笑っただけだった。


「こっちでは、加護夜くんと村正くんが〈闘技場〉に移動してから二週間経ったよ。世界が四つ消滅されたって……早いってみんな、怯えてる」

「「!」」


伽爛の言葉に匡華と村正は顔を見合わせた。恐らく、〈闘技場ここ〉では既に一ヶ月以上経っているはず。しかし、外部ではたったの二週間。時間の経過が此処まで異なっている、いや、狂っているとは思わなかった。そして


消滅された世界数は、正確に伝わっているんだね」

「?どういうことだよ匡華」


世界数は合っていると云う異様な状況である。蜘蛛切丸が匡華を見上げて怪訝そうに首を傾げる。祢々切丸が村正の隣の壁に背中を預けた。恐らく、〈シャドウ・エデン〉では寄りかかっているものは木の幹なのだろうけれども。伽爛は周りをキョロキョロと見渡して、座る事を諦めた。諦めんな、である。


「私達が〈闘技場ここ〉にいる期間はすでに一ヶ月以上のはずなんだよ。確かではないが、そうでないとあり得ない事があるからね」

「ハァ?!ってことは…数は合ってんのか?」

「嗚呼……祢々、蜘蛛」


「数」と云う言葉に村正の肩が僅かに跳ね、表情を暗くした。それに気づいた匡華は驚く蜘蛛切丸と村正の隣にいた祢々切丸を呼び寄せると彼らの耳元で囁いた。村正は集まった三人が気になるらしく、少し不満そうである。


「村正と話して来な」

「匡華、外部の状況はもう良いのか?」

「伽爛から聞くよ。だから、久しぶりにでも兄弟水入らずで話しておいで。能力内だったんだろう?」


匡華の悪戯っ子のような含み笑いに祢々切丸と蜘蛛切丸は顔を見合わせた。そこで二人は村正が、能力での事を話したのだろうと思った。そして、あの時の話が本当なら今、村正は……たまに相手の感情が手に取るように分かる彼ら。蜘蛛切丸はいても立ってもいられず、「兄さん!」と叫びながら彼の方へ飛んで行った。それを慌てた様子で振り返った祢々切丸が匡華を一瞥し、フッと笑った。


「ホント、村正の云う通り、きみには敵わないね」


ヒラリと黒いマニキュアが塗られた爪を見せながら手を振った。それに匡華も手を振り返す。そして、祢々切丸は村正と蜘蛛切丸の方へ歩いて行った。その様子を見ていた伽爛が躊躇気味に匡華の方へ向かう。匡華は久しぶり、と彼に向かって手を挙げた。それに伽爛は笑いながら同じ事を返した。


「じゃあ、他にもなにかあったら教えてくれないかい?」

「嗚呼、味方きょうはんしゃだものね」


そう言って、伽爛は笑った。


そういえばやってなかった。アーギストに合いそうな曲!……やっぱ、めっちゃ早口の曲?

あ、あと過去編で言い忘れていましたが、ウチの過去作を読んだ事ある人にとっては「あれ?」と云うのがあったと思います。はい、いつものです(ドヤァ)←

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