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モノクロの蝶  作者: Riviy
第八章:疑心暗鬼の光と闇
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第八十三ノ世界:目覚めた明日


村正は、ゆっくりと真っ黒な闇から意識を取り戻した。目を開けて真っ先に入って来たのは、明るい光。天井につけられたライトだと云うことは容易く理解出来た。村正はまだ少しボーッとする頭を押さえながら起き上がる。自分が寝ていたのは使っているベッドで、毛布がかけられていて。


「(僕…確か、能力継承の儀式の副作用で倒れたんでしたっけ…)」


倒れる前、暗闇から覚める前の記憶が波のように襲いかかってくる。鳳嶺が村正に攻撃し、匡華と共に敵と認識したこと。鳳嶺を説得しに行ったこと。時間を置いて再び訪れた時、千早と鳳嶺は虫の息だったこと。そこで、真実を言い、「役に立つ」と言われて能力『鬼姫きき』を受け継いだこと。そして、二人の死を見届け、意志を確認した時、副作用で倒れてしまったこと。全ての記憶が村正に帰って来た。村正は「あの時」のような莫大な情報に軽く頭を振って、中身を整理すると匡華を探して視線をさ迷わせた。と、自分の片手を包む暖かくも優しいぬくもりがあった。その方向を見てみると自分の手を握ったまま、匡華が眠ってしまっていた。ベッドの縁に両腕を置いてそこに顔を埋めている。チラリと見える顔の目元は泣いたのか、少し紅くなっていた。村正はそんな匡華を見て、場違いながらも微笑ましく思った。「あの時」から、僕もあんたも随分変わった。けれど、その本質は、あの時のあんたは変わらない。


村正は匡華の頭を優しく撫でた。すると、ビクリと反応があった。頭を撫でた際、起こさないように注意していたのだが起こしてしまったらしい。匡華はゆっくりと起き上がりながら、眠気眼で村正を見上げた。意識がはっきりしてきたのか、意識を取り戻した村正を見上げ、心の底から嬉しそうに微笑んだ。


「村正!目が覚めたんだね」

「ええ、心配をおかけしましたね、匡華」


村正が匡華がギュッと繋いだままだった手を軽く上げると、それを見た匡華はほぼ無意識だったらしく、恥ずかしそうに軽く頬を染めた。


「ぶ、無事で良かった。何故、倒れたか心当たりはあるかい?」


村正がクスリと匡華の慌てように小さく笑いながら、スルリと手を離す。ぬくもりがなくなる。もう少し繋いでいても良かったかと思う。そう思うほどに、村正は変わっていたし、匡華も変化していた。匡華は無意識のうちに繋いでいた手を、開閉するとベッドの近くにある小さなテーブルの上からコップを取った。その中に、水差しの水を入れ、村正に渡す。村正はそれを受け取り、一気に飲み干す。冷たい水が村正の喉を伝う。飲み終わったコップを両手で弄びながら、村正は匡華の問いに答える。


「鳳嶺から『鬼姫(能力)』を受け継ぎました。その副作用です」

「うむ、確かその副作用は受け継いだ者に過去を見せる…だったか…村正、過去を?」


匡華が心配そうに聞きながら、ベッドの縁に腰かける。匡華の言いたい事はよく分かった。それでも。

村正はニッコリと笑って言う。


「大丈夫です。ちょうど、祢々の能力と鉢合わせましたので」

「そうか…伽爛を認めたようだね。彼なら祢々と蜘蛛を受け入れてくれるだろう。で、村正は?他の二人…正確には傍観者合わせて三人だが、と過去を閲覧したんだ。大丈夫かい?」

「ふふ、大丈夫に決まっているでしょう?あれは、忌まわしいと共に匡華と出会えた。改めて色々思い知ったところですよ。それに、一度過去を遡った事で強くなった気がします」

「そうか、なにかあったらきちんと言いな。私は今でも、貴方の味方だからね『黒蝶』?」


匡華が安心させるような優しい笑みで言う。『黒蝶』とは、村正の能力の名でもあるし、匡華と村正、二人が能力を発動する時に舞う蝶の片割れでもある。村正は安心したように、息を軽く吐いた。そして、匡華の額に軽く口付けした。突然の出来事に匡華は茫然としていた。が、何をされたのか気付き、頬が紅く染まる。それを見ながら村正は得意気に、悪戯っ子のように笑った。


「そうですね『白蝶』」


『白蝶』とは、匡華の能力の名であり、蝶の片割れでもある。そして、匡華は女性である。見た目が中性的なため、はたから見れば分からないし、言動や行動で男と勘違いされる事も多い。しかし、予想出来ていたかもしれないが女性である。だから、女性と分かった千早は匡華を一度、着物直しで部屋に招き入れたのだろう。まぁ、それ以外の理由もありそうだが。村正自身も、いや、彼女に助けられた村正も祢々切丸も蜘蛛切丸も以前は匡華が女性である事に気づかなかった。なんとなく、「女の人?」と云う認識だった。それが確定したのは匡華の伯父の一言だった。正直、そんなことをあっけらかんと云う方に驚いたが。まぁそんなこんな、匡華は女性である。


匡華は村正に口付けされた額を軽く一瞬押さえながら、村正に続きを話せと顎をしゃくる。それに村正は、はいはいと頷く。そして、自身の心に問いかけるように深呼吸をする。すると、一気に視界が晴れたかのように受け継いだ能力の内容が理解出来た。


「受け継いだ『鬼姫(能力)』は、連絡…と云えば良いんですかね?会話ができるようです」

「?どう云うことだい?」

「まだ実際に使っていないので、本当にそれだけなのかは疑問ですが、どうやら遠くにいる者と連絡がとれる、会話ができるようですね。恐らくさっきも言いましたが、連絡だけではない可能性も」


村正の新たな能力に匡華はうむ、と口元を押さえて思考する。連絡…つまりそれは、外部と繋がる事ができると云うこと。うまく行けば、外部の情報も手に入る。村正も同じ事を考えていたのか、少し表情が険しい。それに匡華はクスリと小さく笑う。倒れた時は、それはそれは驚いた。が、何事もなさそうで安心した。


「村正、体に異常は?」

「ありません」


匡華の不安を取り払うように即答する村正。村正は自分の傍らに置かれていた刀を手に取りながら、毛布から抜け出し匡華の隣に並ぶ。コップをテーブルの上に置く。


「祢々と蜘蛛の様子は?能力内で会ったんだろう?」

「まぁはい。元気でしたよ、声だけでしたが」

「ふふ、それは良かった」


能力で会った祢々切丸と蜘蛛切丸の元気を聞いて匡華は、安心したように微笑んだ。村正も声だけではあったが、元気そうだったのには安心した。〈闘技場ここ〉にいると、どれ程の時間が経ったのか分からない。だから、声だけでも、出会えた事は嬉しかった。見えずとも、姿はわかる。そんな気がした。


「あとでその能力を使ってみようか。外の情報も手に入れたいし。恐らく、ルール違反ではないだろうからね」

「そうですね、賛成です。()()がありますし」


匡華の提案に村正が同意した。匡華はそれに頷くとテーブルに置かれた水差しとコップを手に取り、それらを片付けに立った。それを横目に村正は刀を帯刀した。そして、自分も紅茶の準備をしようと立ち上がった。


匡華は!女!です!

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