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モノクロの蝶  作者: Riviy
第七章:『荒神』
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第八十一ノ世界:癒



匡華が三人を連れて来たのは、森の中に佇む一軒の家だった。古い建物なのか、まだ新築なのか。夜なのではっきりとしない。しかし、その家の窓から暖かい光が漏れている事だけはわかった。その家へ匡華は躊躇せずに扉を開けて入った。その後を村正達が警戒しながら、続いた。中は、牢屋とは全然違っていた。温かくも優しい光、心までも暖めてくれそうな家具や小さな可愛らしい小物。見たことがない、未知の世界に三人は目を見開き、部屋の中を見回した。


「伯父さん!」


匡華が部屋の奥に行きながら大声で叫んでいる。匡華の言い方からするに此処は伯父の家と推測される。と、蜘蛛切丸が立っていた方の扉がギィ…とゆっくりと開いた。蜘蛛切丸が驚愕しながら振り返った。


「なんだ匡華…うるさいな…」


真っ暗闇の部屋から頭をかきながら出てきたのは、一人の青年だった。祢々切丸より年上そうな青年は目の前の蜘蛛切丸を見て、驚いたようで目をぱちくりさせた。突然現れたその人物に蜘蛛切丸も目をぱちくりさせる。その人物は、静かに蜘蛛切丸に近寄ると彼と同じ視線になるように片膝をついた。その行動に蜘蛛切丸が半歩後退る。青年は蜘蛛切丸を興味深そうに観察した後、彼の後ろにいた祢々切丸に目を移し、そして村正に目を移した。


「うむ……『荒神』…いや、()()…これはまた、珍しい者達が家にいるものだな」

「珍しいって、化け物だからってこと?」

「!?兄貴!」


ニッコリと、親しみ深そうな笑みを浮かべながら祢々切丸が問う。だがその笑みは仮面ニセモノ、嘘である。何度もやって来る刺客から逃れるために、欺くために祢々切丸が取得したものであった。それに蜘蛛切丸がやめろと振り返る。蜘蛛切丸が感じるに、青年は敵ではなかった。青年は祢々切丸をスッと見た。その瞳に全てを見透かされている錯覚に陥る。その感覚に祢々切丸がグニャリと笑みを歪める。と、そこへ村正が様子が少し可笑しいと感じたのか祢々切丸の元にやって来、肩を軽く叩いた。それに祢々切丸は大丈夫、と彼に向かって微笑みかけた。青年が誰だか分からない以上、警戒するに越したことはない、と言わんばかりに殺気が放たれた。が、青年はその殺気に匡華と同じように物怖じせず、静かに立ち上がった。そして、クスリと意味深そうに笑う。


「いいや。お前達は化け物ではなく"特殊"。だから珍しいと言ったんだ」

「…"特殊"…?」


村正と祢々切丸が青年の言葉に顔を見合わせ、首を傾げる。村正が問おうとしたその時、ガッタンと大きな音が響いて、奥に行っていた匡華が帰って来た。伯父は見つからなかったようで、見つからなかった事実に顔を歪ませていた。が三人と対峙している青年を見て、呆れたように肩を落とした。


「伯父さん…また、籠ってたのかい?どうりでいないと思った…」

「え?伯父…?」

「んだよ、匡華。俺が何処にいようが勝手だろう?それより彼らは誰だ?怪我もしている。教え「「伯父さん?!」」…はーい、匡華の伯父は俺だが?」


ごくごく当たり前のような会話に三人は面食らっていたが、ハッと我に返り、村正と蜘蛛切丸が叫んだ。近くにいた蜘蛛切丸が「嘘だろ!?」と飛びかからんばかりの勢いで迫ってきたので、青年は愉快そうに笑いながら片手を腰に当てた。そして、迫ってきた蜘蛛切丸の頭を片手でワシャワシャと撫でた。その手付きは乱暴だが、暖かく優しい。それに身を委ねていると、祢々切丸が不安そうにやって来た。そんな彼の頭も青年は蜘蛛切丸のように撫でた。突然の事に、祢々切丸は驚愕し、固まってしまっていたが、口元が小さく綻んでいるのを蜘蛛切丸は見ていた。餌待ちの鯉のように口をパクパクさせた村正が青年を指差しながら、匡華を振り返る。と匡華は肯定するように肩を竦めた。


「嗚呼、若すぎるとでも思ったんだろうが、彼は正真正銘、私の母親(母さん)の兄。伯父だよ」

「はぁあああ?!」


驚く村正の声が響く中、二人の頭を撫でていた青年はニヤリと口角を上げて、ニヒルに笑った。伯父!?彼が!?少なくとも伯父ではなく匡華より少し年上の兄か親戚ならまだ信じられた。若すぎるだろ?!驚く村正と、驚きつつも彼を見上げる祢々切丸と蜘蛛切丸。そんな三人の視線を受けて、見た目が若すぎる青年は言う。


「正真正銘、俺は匡華の伯父だよ。名前は、夕顔ゆうがお。よろしくな、"特殊"な坊主ども」


そう言って、青年はニヒルに笑った。

名前のように美しい萱草色かんぞういろの長髪を首根っこ辺りで束ねている。薄桃色の瞳。右耳にのみ、リング型のピアスを付け、黒の七分丈カットソーを着、青のカーゴパンツ。茶色の編み込みブーツを履いている。

はっきり言って、伯父さんに見えない。匡華が恐らく十代だろうから、母親が早くに匡華を出産したのならば納得行く。だが、それでも若ぎるような…?夕顔は、そんな疑問が顔に出ていたのであろう三人に向かって言った。


「俺、こんな身なりだが確か年は三十いってんぞ」

「「「?!」」」

「伯父さん、彼らを混乱させないでくれ」

「嗚呼?……四十…あれ?五十だっけ?」

「伯父さん!」


三人をからかって遊ぶ夕顔に匡華が痺れを切らして叫んだ。その表情は呆れと共に怒りに滲んでいた。夕顔はケラケラと愉快そうに笑いながら、百面相を繰り広げる三人を振り返る。


「んじゃ、匡華にこいつらを連れて来た理由聞くと同時に手当てすっか。んで、俺の()()も聞いてくんねぇかなぁ…"特殊"……いや、"特殊"な『荒神』達」


夕顔は自分が出てきた部屋に入ると、どうぞと言わんばかりに顔だけで振り返りながら言った。パチリ、と付けられた明かりが三人にはまた眩しかった。


匡華の伯父さんは色々可笑しいのですよ……伯父さん年齢詐称ですか!?「違う」知ってます!

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