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モノクロの蝶  作者: Riviy
第七章:『荒神』
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第七十四ノ世界:捕


「ッ」


三人は壁や床に叩きつけられるように、乱暴に拘束を解かれた。そして、強く打ち付けた事によって朦朧としている中、村人達は手際良く彼らの足に足枷をつけていく。足枷は太い柱や細い柱に繋がれていた。意識がはっきりと戻った少年が立ち上がりかけた村人に襲いかかった。が、まだ朦朧としていたのか腕を払う事で村人は少年を引き離し、壁に叩きつけた。少年が背中を強く打ち付け、痛みにもがく。そんな少年を村人は煩わしそうに見ると他の村人と共にそこを出ていった。一人の青年がジャラジャラと鎖を奏でながら、彼らを追った。だが、それは無理だ。目の前で閉められたのは鉄格子。そう、此処は、牢屋である。


「なんでこんな事する?出せ!」


青年が鉄格子を力強く前後に揺らすが、取れる気配はない。青年の怒りが混じった叫び声に誰も顔を向ける事はなかった。青年は村人の誰も助けてくれない事に落胆した様子で少年ともう一人の青年の元へと戻って行った。ペタン、と二人の前で座り込む。その表情は混乱、困惑、怒り、悲しみ、絶望……複雑に混ざり合い、どれが本当の感情かさえも分からなかった。少年が四方八方見回し、


「此処、何処?」


と口を出した。此処、とは牢屋の事ではない。村の事である。牢屋はコンクリートで出来た頑丈な作り。牢屋は何処か建物の中にあるのか、上からパラパラと塵が落ちてくる。いや、もしかすると老朽化が進んでいるだけかもしれないが。牢屋の外は広い空間になっているのか、何処までも闇に覆われている。牢屋の中には鎖を繋ぐための太い柱と同じ役割を果たすのであろう少し細い柱が一定の感覚で配置されており、三人の足枷の鎖は少年が細い柱、青年が太い柱、そして先程立ち上がっていた青年が細い柱となっていた。牢屋の中の壁には一ヶ所だけ、蝋燭の灯りが灯されており、薄暗い事この上ない。少年の隣に座っていた青年ー先程、村長に顎を掴まれていたーが言う。


「…此処までの記憶がないので、なんとも言えませんね」

「あ、やっぱり?オレもなんだよなー」

「じゃあ、此処にいる全員が、そう?」


三人は顔を見合せた。村に来た時の記憶が、いや、正確に云えばそれ以前の記憶がないのだ。まるで生まれたばかりの赤子のように。記憶を失った記憶喪失者のように。此処が何処で、どういう場所なのかも。


「ぼくたちは、炎の前にいた。そこら中に人がいて、ぼくたちを見てた。蔑むみたいな、そんな目で」

「その後に、一番偉いであろうあの年寄りが僕の顎を掴んで上を向かせた」

「その後、『滅命』と叫んで、オレらは拘束され……牢屋、に…」


三人で声に出して記憶を辿って行くと、この村の人々に怒りが沸いた。何故、自分達にこのような仕打ちをするのかと。記憶がないのでもしかすると自分達が何かやった可能性もあるが、あれはそんなかわいらしいものではなかった。狂喜、いや、それ以上の異常で恐ろしいものだった。

と、少年の言葉が途切れた事に二人の青年が怪訝そうに首を傾げていると彼が「嗚呼!」と思い出したと言わんばかりに声をあげた。牢屋に彼の叫び声が木霊するが、誰かが様子を見に来る気配はなかった。


「オレらの傍らにあった脇差!あれ、どうなった?!」

「「は?/え?」」


少年の言葉に二人は怪訝そうな声をあげた。それに少年は何かまずいこと言った?と不安げな表情になる。


「脇差ではなくて、刀でしょう?」

「え?大太刀じゃないの?」

「「「……………ん?!」」」


噛み合わない意見に彼らは面食らった。何故、全員が全員、傍らにあった武器について違う供述をするのか。勘違いか否や。いや、勘違いなんかではない。三人の瞳は、真実を言っていた。それが手に取るように分かった三人は、誰がと言うわけもなく、その武器の名を口にした。何故、武器の名を知っているのか、気にはならなかった。


「村正、です」

「祢々切丸…」

「蜘蛛切丸。って、全部違っ!?」


名前を口にした途端、三人一気に頭を押さえた。金づちで頭を殴られたかのような痛みが走る。そして、頭の中である記憶が巡る。鮮明に、目の前にスクリーンがあってそこに映像が写し出されているかのように。暫くして、青年が頭に当てていた片手で顔の半分を隠すと笑い出した。ビクリと他の二人が驚くのも気に止めず、彼は狂ったように笑い続けた。少年の前に座っていた青年が恐る恐る彼の手首を掴み、顔から引き離す。そうして二人はまた驚いた。


「ハハハ…………なんとも、抗えない血ですね」


彼の瞳から涙が溢れ落ちていた。理由は、悲しみか絶望か。彼が自分自身を嘲笑うように言うと少年が話の矛先を変えるように言う。


「守護武器……あの武器がオレらの守護ねぇ」

「持っていかれたっぽいから、確かめようがないけど。恐らく、いや、事実、ぼくたちの守護武器でありぼくたちを成すもの」

「……………『荒神』、か」


そう、彼らは先程の頭痛で記憶を取り戻していた。記憶、は少し語弊がある。記憶を取り戻したのではなく、()()()()()()()()、と云う方が正しい。つまりそれは、三人の出生、そして自分達が何者で誰なのか、と云う問いを明かしていた。

《神記》に記されし『荒神』と云う存在。それが、自分達であり、詳しく云えばその子孫である。何故それが分かったのか。それは必要な記憶、必要な歴史が彼らの脳内に収まったからである。恐らく、武器の名を口にしたためであろう。何故、武器の名が引き金となったのか。それは守護武器ーと此処では称される、が正式な名称を三人は知らないーである寄り添っていたあの武器達に尋ねる他ない。

そして、彼らは〈シャドウ・エデン〉を滅亡させた『荒神』・『滅命』の血縁者、子孫である事も、その歴史で知ってしまったのである。だが、それだけで村人達が自分達を閉じ込める理由にはならない。得た記憶は、全てが正確とは云えないからだ。そして、歴史が全て正しいとも限らないのだ。


青年が自身の手を掴んでいるもう一人の青年の手を無理矢理引き剥がそうとするが、力が強く剥がせない。その事に苛ついた様子の彼は青年に、離せと下から睨み付けた。が、強く青年の方に引っ張られて彼は態勢を崩した。態勢を崩したため、彼は青年の腕の中である。驚く彼の横に少年もやって来、「オレもー」とギュッと抱きつく。何がなんだか理解出来ていない彼の頭の上に顎を乗せながら青年が云う。


「イラついてんのも分かるし、悲しいのも分かるよ。あんだけ情報量もらっちゃあね。それでも、此処にいるのは『荒神』でも滅亡させた『滅命』でもない。ぼくたちだよ」

「オレも同じだな。まぁ、最初はなんでって疑問だったし、今も疑問しかねぇよ。でも、()()()()()()()

「……………は、そうですね……」

「ぼくたちは味方。あの人達とは違う」

「味方って云うよりも、同じ出生だから兄弟って方がしっくり来ね?」

「ハハハ、そうですね。じゃあ、兄弟で友人で仲間。これなら良いでしょう?」

「ふふ、良いね。じゃあ、それならさ、守護武器持ってるし、それで呼ばない?」


クスクスと三人は笑い合う。此処にいるのは、同じ出生で、同じ道を歩んでいて、同じ守護を持ち、同じ血をその体に通わせた兄弟であり友人であり仲間。信じられる、温かく、優しい存在。それが、彼らの心の支えだった。


「じゃあ、僕は村正ですね」

「ぼくは祢々切丸か。長いから祢々ね」

「オレは蜘蛛切丸。同じく長いから蜘蛛な!」


顔を見合せ、兄弟で友人で仲間である彼らは楽しそうに笑う。一時の絶望も悲しいも怒りも全てを忘れて。三人でいれば、この先何があっても大丈夫な気がした。


そう、この先に地獄が待っていようとも。


あれー八十…だと(棒)

いつに間に。

ていうか、兄弟愛?タグつけたいかわいいよお前らぁあああ!!!…はい、失礼しました黙ります

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