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モノクロの蝶  作者: Riviy
第一章:毒入りお菓子のハッピーエンド
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第七ノ世界:鏡写しの御伽噺


広間に入って来たのは鏡に写したように瓜二つな少年と少女だった。両開きの扉を片方ずつ仲良く、少し押して入ってくる。


「…子供?」

「代表者の中に双子はいませんでしたよね…?」


困惑気味の鳳嶺と村正。辺りを見回した少年と少女はこちらに気づくと明らかに残念、と言った表情を浮かべた。それがムカッと来た村正と鳳嶺を背に隠された匡華と千早が宥める。


「あれ~?なんで起きてる人がいるの~?」

「食べ損なったのかなぁ?どう思うグレーテル」

「同じ意見かな~ヘンゼル」


そう言って、少年と少女は互いの指と指を絡ませて手を繋ぐ。絡めた仕草が子供らしからぬ妖艶さを醸し出して、それを視覚ではなく他の四感で捉えたらしい千早の頬が恥ずかしそうにピンク色に染まった。


「まぁいいや」

「愛し子が」

「「食べちゃえばいい話だし」


ゾワリ。二人の幼い子供の無邪気な笑みに背筋に悪寒が走るのを感じた。村正が刀を抜き放つと、二人の幼い子供は指を絡め合わせながら、不機嫌そうにそれでいて不愉快そうに言う。


「なんでそんな物騒なもの抜くの~?」

「あんた達を敵と認識したからですが、なにか問題でもあるんですか」


少女の問いに村正は刀を構えながら、不機嫌そうに言い放つ。その体からは陽炎のように殺気が漂っている。それを感じ取った少年と少女が少し後退った。匡華も小太刀を抜き、村正と並ぶ。二人に任せて大丈夫だと思ったのか、鳳嶺は千早を一瞥すると彼女を守るために立ちはだかる。千早はその後ろで不安そうに立っている。少年と少女は殺気に圧倒されて少し後退ったが、突然、ニィと不気味に嗤った。そして、言い放つ。


「「愛し子に手ぇ出したら、食べちゃうぞ!」」


「愛し子」とは一体誰の事なのか、考える隙などなかった。突然、二人が消えたかと思うと次の瞬間、匡華と村正の目の前に少年のみが現れた。少年が何処からか取り出した、頑丈で重たそうな大盾を村正に向かって振り下ろした。それを受け流し、村正は少年に向かって刀を斬りつけた。ガキン、と村正の刀から痺れが伝わる。少年が大盾で刀を防ぐと弾き返す。そこへ匡華が容赦なく首筋目掛けて素早く攻撃する。それを寸でのところでかわし、少年は後退。


「きゃっ」

「!千早!」


短い悲鳴に匡華が顔だけで後ろを振り返る。そこにいたのは千早を守る鳳嶺の前に少年と同じように現れた少女。その両手には炎の球体がある。鳳嶺が驚愕し、慌てながら懐に手をやっているが間に合わないのは明白。少女が片方の炎の球体を千早に、もう片方を鳳嶺に向かって投げた。が、次の瞬間、その球体二つはボッと鈍い音を立てて、消えた。面食らったように驚く少女。その少女の顔面に鳳嶺が懐から取り出した黒く光る拳銃を突きつける。今度は少年と少女の顔色が変わる番だった。匡華と村正はホッと胸を撫で下ろすと何かの能力だろうと推測し、苦虫を噛み潰したような表情をする少年に向かって刃の切っ先を向けた。


「形成逆転、と言ったところか」

「!ちっ」


少年が舌打ちすると少女と共に再び、ふっと消え、扉の前に姿を現す。匡華が千早と鳳嶺の元に村正と共に駆け寄る。と、そこで匡華は千早の変化に気づいた。彼女の足元に紫色と黒色をした靄が漂っていたのだ。その靄は先程、少女の炎の球体を消した何かと同じ気配だった。


「千早、それは」

「ふふ、驚いた?私の能力の『闇』よ。私にかかれば、炎なんて軽いわ。ねぇ鳳嶺」


軽く人差し指にまとっていた靄を振り払いながら、悪戯っ子のように笑う千早。鳳嶺がそれに小さく笑いいつつ、拳銃を少年と少女へ向けながら、自分の事のように誇らしげに言う。


「千早は視覚ひかりを失う代わりに能力やみを得たんだ。美しいだろ?」

「ええ、そうですね鳳嶺。まるで闇夜に咲く一輪花のようです」

「だろ?村正」


鳳嶺の言葉に村正がそう返す。褒められていると感じた千早は両手を頬に当て、恋する乙女のように頬を染めた。その前方で、少年と少女は苦々しげに匡華達を見ながら、再び指と指を絡め合わせる。少年は大盾を消しながら、二人は両手の指を絡め合わせる。


「あ~そうか~そういうことか~ねぇ、ヘンゼル」

「そういうことだね、なぁ、グレーテル」


顔と顔を近づけ、匡華達を睨み付けるようにしながら言う。匡華達には何を言っているのかさっぱりだ。


「どういう事でしょうか?」


村正が刀を構え、その切っ先を少年と少女に向けたまま訊く。殺気が漂い、その殺気に少年と少女は時折、ビクッとするが、最初のように怖がっている様子はない。鳳嶺は千早を守るように立ちはだかり、匡華も小太刀を構えて立ちはだかる。切っ先を向けていられているにも関わらず、二人は悪戯っ子のように笑みを浮かべている。その時、再び扉の向こうから靴の音が響いた。此処にいる人物でないのならば、神様か、はたまた二人の言う「愛し子」か。匡華達四人の体に緊張が走る。


千早は足元に漂っていた靄を自身の周りに、目線のところまで上げて漂わせ、身を守るように展開させる。匡華、村正、鳳嶺は少年と少女に武器の切っ先と銃口を合わせながら、警戒を強める。静まり返った広間に小さな苦痛の声と扉の向こうから聞こえてくる靴の音が異様に大きく響き渡る。ギィと不気味な音を響かせて、少年と少女の背後の両開きの扉が開いた。誰が来るのか。二人を抜かした四人の視線が扉の人物に注がれた。


たまに「生まれてくる次元間違えた」って本気で思ったりしますけど、これって重症ですかねぇ…あ、すいません失礼しました。

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