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モノクロの蝶  作者: Riviy
第六章:不気味な色
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第六十六ノ世界:変化の先




その翌朝。千早は匡華に相談を持ち込んだ場所に早めに着いていた。朝食時、争いを起こさないためか、匡華と村正はいなかった。無論、鳳嶺もだ。千早が昨夜、戻ってきた鳳嶺に「一緒には行かない」と告げたためでもあった。そのため、一人だった千早は朝食ー案の定、神様は「〈地獄感染ヘル・インフェクション〉を消滅した」と宣言していたがーを摂った後、早足で此処へ戻ってきたのだ。殺し合い開始までまだ少し時間があるらしく、広間では三人以外の代表者達がゆっくりしていた。


「……匡華さん、遅いなー」


トン、と背中を背後の壁に預け、凭れる千早。そして、天井で瞬く電気を見上げた。

鳳嶺は何処で情報を手に入れたのかしら?やっぱり、茉亞羅の後?時間があり、何か情報を得るにはその時間帯しか不可能だ。他は千早と一緒か、匡華と村正も入れた四人で行動していたのだから。千早は顎に指先を当てて考え込む。匡華さんみたいに、村正さんみたいに私は頭が良くないけれど、自分なりになら、考える事が出来る。


千早の疑問はただ一つ。鳳嶺は何処で情報を手に入れたのか、または何故その情報を手に入れる事が出来たのか、と云うこと。鳳嶺が匡華と村正を疑う原因が鳳嶺が手に入れたと云う情報にあるというのは千早でも思い付く。けれど、どうやって手に入れたかまではわからない。もしかすると、敵を騙すにはまず味方からの方針で手に入れた情報を元に、他の代表者を陥れる魂胆だろうか。けれど、そこまでする必要はあるのか?あの闘技場には特効薬を取りに行き、戻ってきた匡華と千早以外、誰も入っていない。入っていたのだとしたら匡華と村正が気づかないはずもないし、あそこまで怪我を負わせる必要はない。もしかして、闘技場の外にいた?そうであったならば、いないと自信を持っては云えない。終わった後で、急いで駆け込んだのだ。闘技場付近にまで目が行っていなかった。だが、それも可笑しい。先に出ていった匡華と村正が気づかないはずもない、それに視覚以外が発達している千早が気づかないのも可笑しい。だが……と千早は考える。


「(もし、気配を消せる…神様みたいな代表者がいたとしたら…?)」


そうならば、誰も気づかないのは無理はない。しかし、仮に鳳嶺がその代表者を騙そうとしていたにしても千早が感じたあの冷たい瞳は、確実に匡華と村正を敵と認識し、疑っていた。


「う、う~ん……やっぱり、騙し討ちでもなくて、本当に、鳳嶺はあの二人を敵と見なしちゃったのかしら?疑っちゃったのかしら?」


そう思うと千早の心は悲しくなった。鳳嶺の考えや感情までをも能力で誕生うませた千早(自分自身)で縛る気はない。けれど……けれど、ずっと一緒にいた愛しい彼が、大切な友人を疑い、牙を向けるのは千早にとって悲しい以外のなにものでもなかった。昨日は思わず平手打ちをかましてしまったが、自分の思いで鳳嶺が考え直してくれると嬉しい。


「……見たとしても聞いたとしても…どっちが真実かなんて、その人によるのかしら…」


ふぅと小さくため息をつきながら千早は云うと軽く俯いた。鳳嶺は、私が言いたいことをわかってくれたかしら?


昨夜は「一緒に行かない」と告げる際、鳳嶺の顔をキッと睨み付けるようにして千早は言った。その時の鳳嶺は、疑心がまだまさっているようだった。それを感じ取った千早は余計に意固地になり、鳳嶺の「せめて一緒に行く」と云う要望を無視してしまったのだ。その後、鳳嶺とは一回も会話らしい会話をしていない。千早は匡華に村正の様子を聞いて、相談し、共に考えた後、二人と一緒に鳳嶺の元へ行こうと考えた。決定的な証拠と云うか矛盾がない考えがあれば、鳳嶺の疑心も消えるかもしれない。その際は、はっきりと本音で村正さんと鳳嶺に話し合って貰おう。その時は、匡華さんと私も付きっきりで一緒にいよう。話し合いで解決すれば文句はない。けれど、話し合いで解決する事なんて、能力がある時点で少数なのだろうけれど。


「………ん?」


その時、千早は何かを感じ取り、壁から背中を離し、左右を見回した。けれど、誰かがいる気配はない。千早は首を傾げる。そこで、先程自分が考えた仮定を思い出した。「神様のように気配を消せる」代表者、いないと云う保障はない。後で聞いた話だが、茉亞羅は能力で「読めなく」したらしい。能力と云う可能性もある。だが、能力で出来た茉亞羅はいない。しかし、彼女以外に出来る代表者がいるかもしれない。


「………まさか、ね」


千早は考えすぎよね、と自嘲すると匡華が来るまで此処ら辺を少し歩こうと思った。その時、遠くからゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーンと殺し合い開始の鐘が鳴り響いた。千早は脳の半分と四感を警戒に切り替え、そのまま匡華を待つ。

暫くして、走っているような足音が廊下に響いた。千早は足音を聞き、振り返った。風が、千早を襲った。


…*…*…


ある闘技場。王冠とティアラが闘技場を輝かしく、豪華絢爛に彩っている。そんなところにあの青年達が観客席に並んで座っていた。闘技場の扉は誰かを誘い出すかのように開け放たれている。二人のうち一人の青年はその扉に鋭い視線を向けている。もう一人、眼鏡をかけた青年は足を組み直しながら相方である彼に云う。


「何か、思うところでもあるのか」

「ハッ、いや?でも、タクの攻撃を止めれるアイツらは早く始末したいなーって思うけど」


扉を凝視していた青年は諦めたように後ろに倒れ込んだ。後ろは平らになっているため、彼は思いっきり背筋を伸ばした。届きそうで届かない天井に向かって何気なく手を伸ばす。視線を少し横に向ければ、相方の青年が移る。自分を怪訝そうに見ている。


「でも、なんとなく今は手を出さない方が良い」

「へぇ……なんかそう思う根拠でもあったのか?」


眼鏡をかけた青年の答えに青年が問う。問いながら彼の方へ顔を向けると彼は扉の方を何故か見ていた。青年はそれが気になり、反動をつけて起き上がる。扉のところには人っ子一人もいない。青年が不思議そうに首を傾げた時、眼鏡をかけた青年が言いたいことに気づいた。眼鏡をかけた青年が懐に手をやり、ごそごそと何かを探っている。その様子を横目に見ながら青年は、面白そうに口角を上げた。そして、青年達は突然、消えた。跡形もなく。扉は、誰が閉めたのか不明だが、閉じられていた。


…*…*…


鳳嶺は千早に「一緒に行かない」と言われていたが、彼女の事が心配で少しの時間を置いて彼女を追っていた。恐らくだが、千早は匡華となにやら話す。その内容が奇しくも村正と鳳嶺の事であることは容易に想像できる。だが、鳳嶺は邪魔をするつもりなどなかった。千早が「話し合おう」と云えば素直に応じるつもりだった。いまだに彼の中では疑心がまさっていたが、微かに良心が疼いていた。


鳳嶺は千早がいくら歩いても見当たらない事を不思議に思っていた。この先に千早は歩いて行った。それは確かな事なのだが……


「?!千早!?」


突然 ひらけた、他の場所よりも少し広い廊下。そこにいたのは仰向けで倒れている千早だった。鳳嶺が慌てて彼女に駆け寄る。千早の腹と左肩に深い傷。鋭利なもので攻撃されたのは明らかだった。千早は荒い息を吐きながら意識を失っているようだった。鳳嶺は極めて落ち着きながら、この状況を整理する。その時だった。聞いたことのある足音が響いたのは。


終わりが一応、近づいている~……って言っても先ですけどね!ウチの子全員大好きです!(突然)

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