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モノクロの蝶  作者: Riviy
第六章:不気味な色
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第六十一ノ世界:怖い瞳なんて、知りたくなかった

明けましておめでとうございます。今年もよろしいお願いします。

さて、お待たせ(?)致しました。投稿です!


匡華の手を引いていた前方の千早のスピードが突然落ちた。匡華はどうしたのだろう?と不思議がっていると、千早が心配そうな表情で振り返った。


「ねぇ、匡華さん。相談したい事があるの」

「?」


千早が言い出すのを戸惑ったように見えた匡華は、重要な案件だと思い、力強く頷いた。友人の千早のためなら。そう言ったのを千早は感じ取ったのか、嬉しそうに頬を緩ませた。匡華が周囲を鋭い視線で確認する。此処とは違うところから殺し合いらしき刃物の音が聞こえるような気がする。だが、気がする、ので此処ではない。近くに椅子などはないし、匡華は仕方なく廊下の壁に背中を預け、両腕を組んだ。匡華が背中を預けたのに気づいた千早は、自身も背中を壁に預ける。痛む傷は既に流血が止まり、固まりかけている。が、脇腹の傷は傷んだらしく、千早が背中を預ける際、軽く呻いた。匡華が心配そうに彼女を見やると千早は大丈夫だと微笑んだ。


「…特効薬飲んでからにするかい?」

「っ大丈夫よ、お願い聞いて。詳しくは後でもいいから」

「嗚呼、わかった」


少し必死な千早に匡華は優しく微笑みながら頷いた。お願い、誰か聞いて。この違和感を。この悩みを。じゃないと、私達は、()()()()()()()()

千早は何処か遠くを見つめて、言葉を紡ぐ。


「あのね、近頃鳳嶺の様子が可笑しい、変なの」

「?変って、どんな風に?」

「うーんと、なんて言ったらいいのかな…難しいんだけど……鳳嶺の目が、怖いの」


そう言うと千早は自身の体を両腕で抱き締めた。その顔には「怖い」と云う鳳嶺の目を思い出したのか、それとも混乱、いや、戸惑っているのか複雑な表情が刻まれている。千早は自身の体を暖めるように擦りながら続ける。


「時々、私を愛おしそうに見て笑ったかと思うと次の瞬間には違うとこを見てるの。盲目だから、気配だから、確証はないけれど、私を見た後ね、絶対と言ってもいいほどに()()()を見てるの」

「なにかって、なんだい?」

「分からないわ。でも、それを見てる時の鳳嶺は物凄く怖い瞳をしてるの……あんな鳳嶺、初めて見た…」


ブルリ、千早の背筋に悪寒が走った。あの目は鳳嶺が鬼になっている時と同じ鋭い目をしていた。だが、なにかが違う。決定的に何かが違うのだ。千早()は、何も見ることが出来ないから。だから、他の感覚ところで感じ取る。そうしないと、色がなくなってしまうから。

匡華は両腕を組んだまま、千早に問う。匡華も、千早の言葉に少なからず同意だった。殺し合い中、鳳嶺が自分と村正を見ている時があるのだ。その時の目は酷く、混乱していた。


「私も、たまにだが感じたことがある」

「!」


まさかの匡華の同意に千早は驚いたようだった。「だが」と続けられた匡華の言葉に千早は表情を固くした。


「原因は分からない。そもそも、鳳嶺が何故そのような目をし出したのか…心当たりはあるかい?」

「え、えーと、確か茉亞羅って子の亡骸を部屋に置きに行ったでしょう?その後からよ」


必死に記憶の渦から一部分を引っ張り出し、千早が言う。そこで二人は以心伝心、同じ事に気づいた。あの時、()()()()()()()()()。しかも、「先に行ってくれ」と言われて。あの時はどうしたのか気にも止めなかった。だが、もし、あの僅かな時間に千早が感じ取った気配、()()()を入手し、見ているとしたら?全ては憶測に過ぎない。けれど、時期も視線も、タイミングも合っている。可能性はある。


「で、でも!あの部屋には茉亞羅の遺体しかなかったのよ?!何があったっていうの?!」


匡華に恐怖ですがり付くようになる千早。そんな千早の頭を優しく撫でて落ちつかせると、匡華はうむ、と悩みながら言う。


「誰かと接触した、と云うのが一番高いだろうが証拠も確証もないし…此処は殺し合いの場だから鳳嶺が相手と交渉するために偽の情報を与えようと観察とかしているだけかもしれないしねぇ」

「そうよね。私達、友人で、共犯者だものね!」


千早が匡華を見上げ、安心したように笑う。千早の中では、いや、匡華の中でも千早の中でも、鳳嶺を信じていた。それは此処にはおらず、鳳嶺と一緒にいるであろう村正も同様である。匡華はふと、思ったことを彼女に問った。


「話は変わるが、貴女達の事は多からず私達は知っているが、貴女達は気にならないのかい?」


突然の匡華の問いに千早はキョトンとすると小さく笑った。そして、「気になるけどね」と前置きをして言う。


「相手には聞いて欲しくないところもあるでしょう?私は、匡華さんといるのが楽しいから自分の事をペラペラ喋っちゃうけど。喋れる範囲内で良いわ、友人を知るのはそのくらいでも十二分すぎるもの」

「………ふふふ、本当、貴女は純粋だね」


だからこそ、村正も二人といるのを拒まなかったのだろうね。千早のハテナが浮かんだ表情を見ながら匡華がクスクスと笑う。千早が不貞腐れそうになった辺りで匡華は再び言う。


「この相談事()はまた明日にでもきちんと話そう。出来れば、鳳嶺が見ていたと云うものがあれば良いねぇ」

「うーん、頑張る!」

「無理するんじゃないよ」


ふん、と鼻息荒く両手の拳を握り締める千早の額を軽く指で弾いた匡華。千早が言いたいことを言えて、ホッとしたように、荷が降りたように笑う。それに匡華も笑い返した。その時だった。自分達が先程までいた闘技場から銃声が聞こえたのは。新しい敵襲か、それとも千早が言っていた事が原因か。


「匡華さんっ!」

「嗚呼、行こう!」


小太刀の鞘に手を当て、走り出す匡華とそれを追う千早。と、一旦匡華は千早の方へ引き返すと自分がされたように手首を取って走り出した。

村正、無事でいておくれ。そして鳳嶺。貴方は一体…?心中に渦巻く不安は、千早も同じだった。どうか、二人が無事でありますように。


誰もこの後の事なんて、分かりっこない、予知しようがないのだから。誰も悪くない。………多分。


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