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モノクロの蝶  作者: Riviy
第五章:別れた愛と憎しみの兄妹
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第五十八ノ世界:殺戮愛の果て



匡華に上段からカインが襲いかかる。迫る二つの刃に匡華は後方に飛んでそれを避けた。カインは床にガキンッと甲高い音を立てて当たった短剣とナイフをそのままに、爪先でクルリとバレエのように回ると後退した匡華に迫る。再び振られた短剣とナイフを小太刀を横にして防ぐと、カインはそのまま急所目掛けて凄まじい攻撃を開始する。その一つ一つを丁寧にかわし、隙を伺う。が、全てをかわすことなど、到底不可能である。匡華がカインに向かって小太刀を突く。それを二つの刃を交差させて、交差させたところで小太刀を防ぐ。匡華が素早くカインの腹に足を置くと押し込んだ。カインが後方に飛んで行き、匡華も後方に飛ぶが、態勢を低くして旋回すると、今度はこちらから迫った。そして、小太刀を顔の横にして、力強くついた。その一撃はカインの右肩を貫き、紅い血を溢れさせる。が、カインは右肩に突き刺さった刃を左のナイフで突き上げる。突然の事に反応が遅れた匡華に向かって小太刀が抜かれた右手にある短剣で突き返した。が、それを紙一重で匡華は間一髪、かわすと殺戮が出来ずにイライラしていることを隠さずに、カインはブンッと匡華を挟み撃ちするように刃物を振った。匡華はしゃがみこむとそれを避け、カインの足元を素早く駆け抜ける。カインがそれを追って振り返った。


途端、足が重くなった。何事だと下を見ると足には黒と紫の足枷がつけられていた。足枷から伸びた鎖の先にいたのは千早。カインはニィと口角を上げると片足をガンッと床に叩きつけた。次の瞬間、足枷は初見の時、剣を折ったように足枷は意図も容易く、砕け散った。驚き、目を見開く千早が次の行動へ移すよりも早く、自身の周りに青い霧を衣のように纏わせると近くの壁に跳躍し、その壁を千早の方目掛けて駆ける。そして、大きく跳躍して千早に向かって短剣を振りかざす。カインのその一撃をかわしきれず、額を軽く切った千早は靄を手元に纏わせる。不気味な青と、純粋な黒と紫が周囲を漂う。カインが千早が行動する間を与えずに鋭い、狂気的な瞳を向けながら短剣とナイフを首筋と心臓目掛けて振った。顔半分が紅く染まった千早が、妖艶に微笑んだ。彼女を守るように漂っていた靄は、姿を消していた。


「!?なっ!?オレ様はよぉ、んなこと初めてだぜ!?」

「あら、それは良かった、と云うのかしら?」


ガッとカインの右頬から左脇腹にかけて紅い線が刻まれる。カインが後退しつつ、千早に追撃。見えていた足の素肌に痛々しい一線が刻まれる。カインは千早を見て、興奮したのか口角を上げて嗤った。そこに匡華がやって来、合流する。匡華は「どう?」とお茶目にも聞いてくる千早を見て、クスリと笑った。彼女の両手には美しい華を夜の闇に一輪咲かせた扇があった。扇を持つ部分からは赤い糸が妖艶に揺れ動いている。千早は右の扇をバッと軽く振るとそこに靄が纏う。その扇で口元を隠しながら、匡華と共に狂気的な笑みを浮かべるカインを見る。


「アッハハハ!!オレ様に殺されろぉ!」

「嫌よ」


カインの狂気的な叫びに千早がにっこりと笑って返す。そして、両者跳躍。匡華とカインが刃物を交差させ、弾き、防ぐを繰り返す。カインのナイフを殴るように繰り出した一撃をかわしきれずに左腕に見た目は浅いが、実際は深い一線が刻まれる。カインを包む青い霧が使用者と同じ感情を表すかのように、ユラユラと揺れ動いた。匡華はその霧目掛けて小太刀を振った。切った感触はなかったが、霧は真っ二つになって床に溶けていった。だがカインはそんな事など気にも止めずに匡華に向かって攻撃。が、それを半歩下がって匡華はかわすと力強い一撃を放つ。それを短剣でギリギリ防いだカイン。短剣を通じて防ぎきれなかった振動が、カインの腕を伝い、傷を襲う。その痛みにカインが顔を歪め、口角を上げた。そんなカインなどいざ知らず。匡華はカインに向かって回し蹴りを脇腹に向かって放ち、そしてそのまま素早く態勢を低くし、足を刈る。カインは素早すぎる攻撃を防げず、脇腹を押さえながら後ろにヨロヨロと躓きかけながら後退する。と、そこへ彼の首筋を狙い、背後から千早の扇が迫る。間一髪でその一撃を背後を見ずにかわすと、千早の方へ体を向け、扇での追撃を防ぐ。なんとも硬い扇だ。千早がバッと片方の扇を振り払うとカインも同じように動き、短剣が吹っ飛んだ。このまま新しい刃物を出しても良いのだが……ニィと嗤った笑みに、それを近くで感じ取った千早は背筋が震えた。慌てて後退しようとする千早の腰をカインが掴み、逃げ道を防ぐ。あまりにも突然の行動に千早は面食らい、キッと鋭い瞳でカインを睨み付けた。


途端、千早の体に電気が走った。そして、遅れてやって来る痛み。カインに引き寄せられているのでどこを攻撃されたのかは不明だが、痛み的に左脇腹が負傷したようだった。身を捩って逃げようともがく千早。しかし、男と女では体格も力も差がありすぎた。体を駆け巡る痛みに耐えながら攻撃に特化した二扇をカインに向けて振る。が、痛みで鈍っているのか、攻撃は当たっても全てが浅く、カインは痛みを耐える千早を嘲笑う。


「……ッ!笑わないで、くれるっ!?」

「ハハハ、それを云うなら」

「?!」

「これを見てから言え?」


グリッとカインは左脇腹に刺しているナイフを回した。途端、言い表せないほどの痛みが千早を襲う。カインは千早を苦しめる、殺せるからか興奮したように目を細めている。本当に狂気的である。と、カインに刻まれた傷口と千早の傷口に青い霧が漂い始め、千早の体から力が抜ける。ダラリと千早の腕が垂れ下がった。カインが勝った、と得意気に、余裕げに嗤った。だがしかし、嗤ったのはカインだけではなかった。途端に漂う、背筋をも凍る悪寒、殺気、畏れ。カインはハッとし、自身の手を見下ろす。そこにあったのは確かに紅く染まったナイフと千早の左脇腹。血の生暖かい熱も感じる。だが、そこには「違和感」しかなかった。


「ふふ、ふふふ、ねぇ、気づいたかしら?」


妖艶に微笑んだ千早。その笑みでカインは足りない頭をフル回転させ、ようやっと気づいた。途端、目の前にいたはずの千早が黒と紫の靄に覆われて消えた。思わず前のめりになったカインがその靄を両腕で、鬼の形相で払いのけると、数メートル先に、青い霧が左脇腹に漂っている千早がいた。カインの傷は少し治っている。つまり、千早に少しは攻撃できていた。左脇腹から垂れる少量の血にカインは気づいてすらいなかったが。カインは千早の方へ新たにコートから出したダガーと共に跳躍しかける。


その時、あの時と同じ背筋をも凍る悪寒、殺気、畏れがカインを支配した。千早もピタリと動きを止めてしまっていた。そして、カインに突如迫ったのは黒と白の、幾つもの刃物。それら全てをかわしきるなど出来なかった。痛みに顔を歪め、顔を上げたカインの目の前にいたのは、匡華。音も立てずにどうやって来た?!そんなカインの疑問はすぐさま消え去る。匡華の服装が一瞬、変わったのだ。だがそれはすぐさま、元通りになる。能力。「保険として発動させた」と云う能力の効果であろうことはカインにもわかった。だがそれは、「誤り」でもある。


匡華はカインの両肩目掛けて小太刀を振り切ると、軽く跳躍。空中でカインの反撃をかわしながら、彼の頭目掛けて回し蹴り。カインは辛うじてかわしたが、続いてやって来た攻撃はかわしきれずに、飛ばされた。ドゴン!と音がして、壁に大きな亀裂が入る。カインが今だに消えぬ殺戮の瞳を、ランランと輝かせながら、ひび割れた壁から出てくる。手には持っていたはずの武器はなかった。飛ばされた際に何処かへ行ってしまったらしい。コートを大きく広げ、中から新しいダガーとナイフを取り出す。千早が片足を軽く上げた状態の匡華に近寄る。そして、ゾワッとしたそのオーラに思わず「ぴゃあ」と変な声を出してしまった。それに、場違いながらも恥ずかしがっていると、匡華が気付き、ゆっくりとオーラを納めた。その気遣いに千早が軽く頭を下げ、二人はヨロヨロと頭をぶつけて千鳥足なカインを睨む。両者が睨み合う。カインが口角を上げ、興奮したように再び笑う。嗚呼、愉快だ。そうカインは思いながら、足に力を入れる。匡華がその様子にクスリと苦笑しながら、片腕を広げた。一瞬、匡華の袖が振り袖のように大きくなった。が、すぐさま消え、黒と白の蝶が舞う。千早が二扇を構える。そんな様子を横目に、場違いながらも千早は思う。


「(匡華さんの能力って、不思議ねぇ。まるで幻みたい)」


と。正確に云えば、匡華は「保険として発動させている」にはいる。ただ、「本気」か「手前」かの違いだけで。それは、村正にも当てはまる事ではあるが。


「さっさと、殺されろよぉお!!」

「イヤよ、絶対にっ!」

「さて、もう一回、激突とでも行こうか」


両者、相手を睨み付け、跳躍した。体に刻まれた傷も、発動された能力も気にも止めずに。



もう、今年も終わりますねぇ……良いとこで今年分の投稿終えなくては…イケる、か?…

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