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モノクロの蝶  作者: Riviy
第五章:別れた愛と憎しみの兄妹
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第五十二ノ世界:死愛




「そうだ、言ってなかったね」


唐突に少女が思い出したかのように言う。どうやら挨拶をしようとしているらしい。が、それでも青年は殺し合いをしたいのか少女の手を振り払おうとしている。しかし、その手を払うことすら出来ていない。匡華達も相手が名乗るのならば名乗るのが礼儀。少女が軽く頭を下げ、言う。


「あたしはアベル、ノア・アベル。兄さん…ノア・カインって言って〈地獄感染ヘル・インフェクション〉の代表者なの」

「……名乗る意味わかんねぇんだけどぉアベル。どうせ、死んじまうのによぉおおお!!!」


狂気じみた瞳を匡華達に向けながら〈地獄感染ヘル・インフェクション〉代表者の青年は言う。その言葉に村正が鼻で嗤った。それにピキッと青年のこめかみが痙攣が走り、彼を睨み付けた。が、村正はその睨みを受け流す。


「どちらが死ぬかも分かっていない愚者に言われたくはありませんねぇ」

「あ"あ"?!」

「ハハ、確かに村正の言う通りかもな」


苛ついた様子の青年を放って鳳嶺が同意するように笑いを溢す。少女は今にも怒りで暴れ出しそうな青年を押さえながら苦笑い。匡華は少し呆れた様子で村正と鳳嶺を見たが、頼りすぎて頬が緩む。と、千早と目が合い、頷き合った。ちょうどその時、少女が苦笑したまま問う。


「そちらは?」


匡華がどうぞと千早に目で促すと彼女は礼として軽く頭を下げると差し出された鳳嶺の手を取った。前に軽く引き出された千早は妖しく微笑む。彼女の手元に纏う靄が鳳嶺にも舞い出し、二人の空間だけが別世界のようだ。


「私は〈吉原の華〉代表者、千早よ」

「彼女の能力で誕生うまれた、鳳嶺」


匡華と村正が刃同士を交差させて、殺気を放つ。その殺気に、凄まじい気配に隣にいた千早も鳳嶺も圧倒された。暴れ出しそうだった青年もピタリ、と動きを止め、愉快そうに口角をあげた。


「〈シャドウ・エデン〉代表者、加護夜 匡華だ」

「言うのはしゃくですが、村正と呼ばれています」


両者が挨拶を交わし、静かに睨み合う。緊迫した、緊張した空間に荒い息が微かに響く。


青年、カインは瑠璃色のショートヘアーで後ろの髪が少し長く、眼孔鋭い猫のような眼をした橙色の瞳。服は全体的に暗めで、二つほどボタンを外した白シャツの上に黒のロングコートを着、下は黒が多めの深緑色のカーゴパンツ。靴は黒の編み込みブーツで、ブーツにズボンの裾を入れている。全体的に暗めなため少し分かりずらいが、微かに血のような紅い色が至るところに染み込んでいる。


少女、アベルは柑子こうじ色のロングヘアーで少し垂れ目、橙色の瞳。首に黒のチョーカーをし、服は黒の学ラン(サイズぴったし)に灰色の膝上スカートで赤茶色のチェックが入っている。灰色のソックスに焦げ茶のローファー。


カインとアベルは兄妹のようだ。顔つきと目元がよく似ている。しかし、双子と云うわけでもないようだ。

アベルが片手にダガーを持ち、鞘からゆっくりと抜き放つ。カインは両手に持つナイフと短剣を手首でくるくると弄ぶ。その二人の姿は、ある意味狂気的。その姿に冷や汗が匡華達の額を伝う。


「じゃあ、殺し合い、やろ?」


コテンと可愛らしく首を傾げながらアベルが言う。その言葉を皮切りにカインは奇妙な、それでいて興奮している笑い声をあげながら、大きく跳躍した。


…*…*…


アベルは拳銃を自分に向け、乱射する鳳嶺に向かって姿勢を低くし、滑るように近づく。あと数メートル、というところでダガーを鳳嶺に向かって振った。頬にかすった。鳳嶺が数歩後退した。そのままアベルが踏み込む、と彼女の足元がグニャリと歪んだ。驚いて足元を見ると紫と黒の靄がアベルの足を拘束していた。素早く視線を走らせると靄は千早が放ったものだと判明した。動きを止めたアベルに向かって鳳嶺が容赦なく拳銃を乱射する。それらをかわせるものはかわして行く。が左肩に激痛が走った。前方を見ると鳳嶺が口角を上げて笑っていた。途端、アベルは片足を靄から上げるとその場で可愛らしく一回転。すると、足を拘束していた靄はスゥ…と消え失せた。そして、大きく跳躍し、鳳嶺の隣で靄を薙刀に変えていた千早に向かってダガーを振り下ろした。千早が間一髪、薙刀でその重い一撃を防ぐ。アベルはダガーの鞘を千早の白濁した目に向けて突き刺した。それに気配で気づいた千早は顔を横にずらしてかわすと薙刀を回転させ、アベルを弾く。彼女を弾いてすぐに靄を解き、別のものへと形を変える。それは弓矢。後方に飛んでいくアベル目掛けて千早は弓矢を引き抜いた。アベルは空中で勢いをつけて回転するとその矢をダガーで切り裂いた。そして、着地。途端に銃弾の嵐だ。アベルは迷惑そうに顔を歪めながら銃弾を弾く。


「ん~遠くからの攻撃はやっぱり、いやだな。動きが制限されちゃう………嗚呼、でも……兄さんが愉しいならいいか」


橙色の垂れ目を細め、アベルは笑う。そして、背後に迫っていた千早に向かって振り返らずにダガーを振った。千早は驚いたように攻撃された左腕を庇いながら後退する。左腕には深い傷が出来ていた。それを、銃弾を背に受けながらアベルが追う。鳳嶺は目を見開いていた。何故なら、彼女アベル鳳嶺こちらを見ずに全ての銃弾を避け始めたのだ。背中にもう一つ目でもついているんじゃないかと疑うほどに。鳳嶺はギ、と唇を噛み締めると両手に持っていた拳銃を手放す。拳銃はすぐさま紫と黒の煙が包んだ。鳳嶺は強く床を蹴り、跳躍した。


千早は自分に迫るアベルに向かって目眩ましとして靄を放った。が、それをダガーで振り払う。千早はそれに一瞬、茫然としたが気を引き締める。そして靄を素早く引き寄せるとある物を形作らせる。しかしそれを遮るようにアベルがダガーを素早く振り回す。そのため、千早の手元で漂っていた靄は千早が思うような形にはなっておらず、小さな傷が増えた。千早は諦めて、少しアベルから距離を取る。その背後は壁。冷たい感触を着物越しに感じながら、千早は神経を集中させる。上段から振り下ろされたダガー。ガキンと甲高い音がして、アベルの顔が歪んだ。そして、大きくその目が見開かれた。ブンッと振られたそのものを後方に後転しながらかわす。が、遅れてやってきた風で頬が切れた。ガキン、と再び甲高い音がした。


「初めてだったけど、結構形になってるんじゃないかしら?ねぇ、どう思う?」


千早の手には明らかに千早の背丈を越える大太刀があった。思ったより重かったのか、千早がいくら頑張って持ち上げようとしても大太刀は持ち上がらない。しかし、その口角には笑みが浮かんでいた。そのため、アベルは動きを止めていた。千早の笑みを深く取れば、何か来るのは確実。そう考えて、アベルははたと気づいた。鳳嶺もうひとりは何処で何をしている?そう思った途端、アベルの体に激痛が走った。そして、前方を見ると忽然と千早の姿が消えていた。アベルが背後の気配に向かってダガーを振る。が、それは空を切った。そのまま振り返るとそこにいたのは鳳嶺に抱き抱えられた千早で。彼女がアベルに向かって突き出しているのは拳銃だった。千早は拳銃の引き金を引いた。それは、アベルの眉間目掛けて、吸い込まれるように放たれた。彼女の眉間に吸い込まれた銃弾は、眉間に勢いよく食い込んだは食い込んだ。だが


「!?え?!」

「………樹丸みたいな奴だな?!」


驚く二人。アベルの眉間に食い込んだ銃弾はポロッと落ちて来た。アベルの眉間には銃弾が食い込んだと云うことが分かる小さな窪みがあった。アベルは驚く二人を見てクスクスと笑う。その笑みはただ純粋に楽しんでいる笑みだった。鳳嶺はアベルをよく見てみた。血は出ているし、痛みを我慢しているようにも見える。だが、急所を撃たれても死なない。つまりは、樹丸のような能力で誕生うまれた者?そんな問いに答えるようにアベルが言う。


「あたしね、兄さんの能力で死ねない体になってるの。正確には兄さんが死ぬまで……あたしは死なないし死ねないの。でも、痛いものは痛い」

「……なるほどそう言うことか」

「納得した?」

「嗚呼、それでも手加減しないけれど」

「そうね……あなたにとってそれが吉とでるか凶とでるか、だけど」


小さな声で悲しそうに千早が言った。それが聞こえたのかアベルも少し悲しそうに笑った。鳳嶺が千早を下ろし、拳銃を再び持ち、千早は拳銃を解いて靄を手元に纏わせる。アベルもダガーを構え、両者はしばらく、動きを止めていた。そして、大きく跳躍した。


遅い時間になってすいません!

カインとアベル兄妹の曲…あまりない気がします…デュエット曲かなぁ

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