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モノクロの蝶  作者: Riviy
第四章:偽りで手に入れた
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第四十一ノ世界:彼女の矛先




「『欲罪・憤怒』!『欲罪・強欲』!」


茉亞羅の声が大きく闘技場に響き渡る。途端、彼らをブォン!と強い風が襲い、吹き飛ばされかける。それを床に足をついて辛うじて防ぐ。彼女は二つ持ちか?そう考えながら匡華が強い風に対抗し、片目を開いた。目の前に茉亞羅が迫っていた。その傍らには真っ黒な狼を一匹引き連れて。匡華が茉亞羅のナイフを防ぐ。上段から振り下ろされたわけでもないのに、重い一撃に匡華が苦痛を漏らすと匡華の背後から『闇』の鎖が伸び、茉亞羅を攻撃。それを踊るようにかわすとパチンと指を鳴らす。


途端、もう一匹の狼が現れ、千早に向かう。千早は靄をトライデントに変えると素早い動きでこちらに駆けてくる狼に突き刺した。狼はそれをかわし、千早に襲いかかると鋭い爪で露出した右肩から左脇腹へと一線。痛みに耐えながら、トライデントを振る。ともう一匹の方に銃弾の雨が降り注いだ。狼はそれを器用にかわしながら、タンタンッと後退する。鳳嶺が千早の元に行くと近づいてきた元の一匹が彼らに襲いかかった。思わず防御した右腕に深く突き刺さる牙。鳳嶺がマシンガンを狼に向けるが、近すぎて引き金が引けない。そこに千早がトライデントではなく、槍にした『闇』を突き刺すと狼はもう一匹の方へと後退した。二匹揃ってこちらに牙を向ける真っ黒な狼。そこへマシンガンを乱射しつつ、千早が槍を狼二匹に向かって突き刺した。銃弾をかわすことに集中していたであろう狼達は突然の千早の攻撃に一匹が足に銃弾を受けて転倒した。その狼の胴体に槍を突き刺し、もう一匹が襲いかかる。千早がトンッと蹴り、槍を軸に攻撃をかわす。槍の下で苦痛を吠える。


反対側へ滑り込んだ狼は素早く方向転換する。その目の前に鳳嶺。鳳嶺はニィと笑いながら拳銃の引き金を引いた。その銃弾を口で間一髪掴み、難を逃れた狼は銃弾を吐き出すと唸る。鳳嶺はその行動に驚きながら、苦笑した。と、そこに千早がトトト、とやって来た。鳳嶺の隣に並ぶとちょうど先程の狼のところに槍の餌食になっていた狼がやって来た。貫かれたにも関わらず、その体からは血すら出ていない。むしろ、肉が抉れ、骨が見えている。痛くないのか。こちらを見て唸るその空気の振動で出血し、痛む傷が刺激された。普通の狼ではない動きと行動。一筋縄ではいかないか。恐らく、茉亞羅かのじょの能力で誕生うまれたから。先程の天使よりも強い。傷を押さえながら二人は頷き合った。


「厄介な狼さん達ねぇ」

「ま、でもすぐに倒せばいいよな」


マシンガンを肩に担ぎ、『闇』を無数の刃にして背後に漂わせ、妖艶に彼ら二人は微笑んだ。袖を振りながら、再び攻撃を開始した。


茉亞羅は踊るように匡華に攻撃しながら、片手にも粒子をまとわせてナイフを出現させると匡華に向かって勢い良く突き刺した。それを匡華は空中で後転しながらかわす。と少し離れた二人の間に素早く村正が滑り込み、大きく跳躍し、二本のナイフを振り下ろした茉亞羅の攻撃を防いだ。何故か、とてつもなく重い一撃に村正も狼狽えたようだったが、すぐさま態勢を建て直し、殺気を放ちながらナイフを弾く。弾かれて後方に飛ぶ茉亞羅。村正の殺気に怯えたように口角をひくつかせた。村正が片手を背後に伸ばし、前方に引っ張り出す。村正に引っ張られた反動で勢い良く飛び出した匡華が茉亞羅の足元に滑り込み、下から茉亞羅に小太刀を振る。その一撃で片手のー粒子をまとって出現させた方ーナイフが茉亞羅の手元から弾かれ、遠く、観客席の方へ飛んでいった。茉亞羅の右腰辺りから左肩にかけて紅い一線、左手に傷を負わせた。茉亞羅は悔しそうにしながら、匡華に向かってナイフを振り下ろした。匡華は素早く小太刀を口で持つとその手首を掴み、強く引いて床に叩きつけた。その反動で起き上がる。背中を叩きつけられ、茉亞羅が苦痛の声をあげる。村正が倒れた茉亞羅の喉元に刀の切っ先を突き付けた。村正が殺気を放ちながら茉亞羅を嘲笑った。


「先程までの威勢はどうしたのです?」

「……………」


何も言い返さない茉亞羅に村正が怪訝そうに匡華と顔を見合せる。と、茉亞羅はクスクスと笑い出す。そして、真上にいる匡華と村正を見上げ、嘲笑った。


「説明するのはめんどくさくて嫌いよ。でも、見下すとは良い度胸ね!茉亞羅様に逆らった罪、教えてあげる!」


茉亞羅から放たれる不穏なオーラに匡華と村正はすぐさま行動を開始する。捕らえがなくなった茉亞羅は素早く立ち上がりながら、口が裂けるのではないかと思われるほどに上げて、退避する二人に向かって叫ぶ。


「『欲罪・傲慢』、アーンド、『欲罪・強欲』!」


カツンッと踵を合わせて鳴らす茉亞羅。途端、彼女の背後に色とりどりの花が現れる。それらは一瞬、美しいかったが次の瞬間には匡華達に牙を向けた。花びらが鋭い刃となり、鞭となり、匡華達に襲いかかったのだ。二人は花びらを冷静に捌いて行くが数が多く、捌ききれない。そこにまた、素早い動きで茉亞羅が匡華に迫った。突き付けられたナイフを小太刀で防ぎ、回し蹴りを放つ。それを腕で防ぎ、二人は暫く、睨み合った。彼女の背後から幾度なくやって来る花びらは的確に匡華を傷つけていく。茉亞羅の瞳は匡華を写していながらも、怒りと色を写していた。そこで匡華は気づいた。彼女の能力に。


「七つの大罪かな?貴女の能力は」


ギリッと小太刀とナイフが音を奏でる。グサッと匡華の肩を刃となった花びらが貫通した。その痛みに顔を歪ませる匡華に茉亞羅は満足げに叫ぶ。


「ええそうよ。当てたアンタには特別に花丸をあげる♪」


茉亞羅が匡華の顔にズイッと顔を近づける。マジでキスする5秒前、の距離くらい、突然やって来た。突然の事に匡華が驚き、背後に半歩下がるが、動けない。横目に背後を見やるとそこにはあの花。大きな花が匡華を優しく包み込んでいた。だが、包み込まれている匡華の背中にはとてつもない痛みが走っていた。嗚呼、「読めない」。


「……強欲が攻撃。傲慢、憤怒は補助系能力か?」

「あら、あらあら。すっごーい。正解よ。でも、"読めなくなる事"は、気づかなかったでしょ?」


グサリ、と匡華の腹に広がる痛み。匡華は久しぶりな痛みだなと思いながら、目の前の茉亞羅を見つめた。彼女はニィと嗤う。匡華は小太刀でナイフを弾きながら上へ跳躍すると花を切り、茉亞羅の後ろへ着地する。匡華が着地した途端にガクッと傾いたが小太刀で態勢を立て直すと茉亞羅を見やる。ナイフを持っていない方の手には「なにもない」。匡華は困惑したように自分の腹を見やる。そこには大きな紅い斑点が出来ていて。攻撃されたのは明らかだ。そこで匡華は気づく。茉亞羅の手にある透明なナイフに。そのナイフは粒子となって消えた。匡華がフッと小さく笑った。「読めない」、透明なナイフ。嗚呼、厄介で滑稽。


「なるほど、確かに能力だ…」


茉亞羅が嬉しそうに笑う。と、村正が匡華の元にやって来た。匡華の腹の傷と茉亞羅を険しい顔で見比べると、匡華を支えるように片腕を自身の首に巻き付けた。匡華は驚いたようであったが、彼に身を委ね、小太刀を納めた。そこへ千早と鳳嶺もやって来た。茉亞羅のところへは一匹へと減った狼がやって来た。腹の辺りは肉が抉れ、骨が見えていた。 茉亞羅は狼の頭を愛おしげに撫でる。千早が匡華の傷に気付き、心配そうに匡華に近寄った。


「大丈夫?匡華さん」

「大丈夫に決まっているでしょう」

「なんで村正が答えんだよ」


千早の問いに村正が何故か答え、それに鳳嶺が問いを投げ掛けると村正は匡華を視線で示した。二人が茉亞羅に気づかれぬよう、匡華に視線を送る。すると、匡華は口を動かし、こう言った。「逃げよう」、と。恐らく、茉亞羅は彼ら四人に殺意と云うよりも怒りを持っている。身に覚えのない彼らにはこのまま茉亞羅の相手をして、死ぬ意図が見つけられなかった。匡華の言葉に二人は頷く。茉亞羅は自分が勝ったと思ったのかうっすらと笑みを溢す。それを村正が鼻で嘲笑う。


「なによ。負けてるのはそっちよ?」

「いいえ、もう少し考える脳を持った方が良いと思いましてね」

「なッ?!」


村正の毒舌に茉亞羅の表情が歪み、狼が唸る。それに村正が明らかに怖いと嘲笑あざわらうような振りをする。と、千早と鳳嶺は自分の周りをゆっくりと舞う黒と白の蝶に気づいた。茉亞羅に気づかれぬほどに小さい。千早は気配と微かな空気の振動でわかったが、目を凝らさなければ鳳嶺は見逃してしまうところだった。鳳嶺がチラリと匡華と村正を見る。二人から蝶は舞い出ていた。二人を繋ぐ鎖のように、間で交錯し、千早と鳳嶺へと続いている。匡華は俯きながら、小さく呟いている。恐らく、此処から出るための策だろう。鳳嶺は茉亞羅に向けて銃口を合わせた。茉亞羅はクスリと笑いながら、ナイフを手元で弄ぶ。


「なによ。なによなによなによ!殺し合いに私情はつきものだと思わない?」

「そうかもな。でも、今は村正に同意」

「おや、奇遇ですね鳳嶺」

「?」


妖艶に顔を見合わせて微笑む二人に茉亞羅は首を傾げる。そして、ようやっと気づいた。彼らを取り巻く蝶の群れに。


「!逃がさない!」

「邪魔、しないでね?」


茉亞羅と狼が逃げようとしている彼らに気付き、慌てたように駆け出す。が、チラリと合った恐ろしいほどの匡華の視線に足が止まった。そこに千早の『闇』が無数の刃となって床に突き刺さり、茉亞羅と狼の行く先を阻む。その間に、黒と白の蝶が匡華達を包み、少しずつ蝶となって格子が伸びる天井へと消えて行く。格子の僅かな隙間に蝶は入り込み、逃げていく。無数の刃が靄となって消え、ようやっと狼が牙を向いて匡華に噛みついた。だが、その攻撃は当たらず、向こう側に移動しただけだった。美しく舞う蝶。彼らが蝶となり、消える直前、村正は驚く茉亞羅を見て、笑った。


「ほら、僕の言った通りでしょう?」


蝶は格子の奥へと消えて行った。それを惚けた表情で見上げていた茉亞羅は自分の掌に当たった柔らかい感触にハッとした。茉亞羅はあまりにも美しい黒と白の蝶の舞いに見惚れていた自分を叱咤しながら、掌に頬擦りした狼の頭を撫でた。狼は申し訳なさそうに茉亞羅に頭を下げ、粒子となって消えた。それを眺めながら茉亞羅は悔しそうに歯を噛み締めた。



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