第三ノ世界:そんな事、聞いてない
外に出た三人は匡華の伯父が見守る前で、神様が創った専用の世界、〈闘技場〉に移動しようとしていた。伽爛の前には武器を持ち、真剣な表情をした匡華と村正がいる。
「じゃあ、二人共、動かないでくれ。移動から」
伽爛は真剣な表情で「頑張れよ」と希望を託し、頷く二人に向かって『異世界案内人』としての能力を発動させた。
「『異世界移動』・対象者:加護夜 匡華 及び 村正。移動:〈闘技場〉」
伽爛が天に向かって挙げていた両腕を二人に向かって振り下ろした。ブオン、と腕を振り下ろした瞬間、二人を黄色い、優しくも暖かい光が包む。驚く二人の足が地面から離れる。伽爛がクイッと右手の人差し指を天に向けた。眩い光に、匡華と村正が目を瞑った。
「頼んだよ、加護夜くん、村正くん」
優しい、伽爛の声が遠退く意識の中、聞こえた。
…*…*…
ハッと匡華が目を開けた。そこは伯父の家ではなかった。傍らには村正が自分の肩に寄りかかるように意識を失って座っている。匡華は、彼を起こさぬよう、態勢を変えながら周りを警戒して、見回した。自分達がいるのは、円形闘技場のようで、観客席には誰もおらず、観客席の一番上には自分達の世界のシンボルとも云える光と影のクリスタルが美しく、混ざらずに上手い具合に調和しながら、闘技場を一周するように鎮座している。
匡華は一瞬にして、此処が神様が創った〈闘技場〉だと理解した。だが、そうだとしても何故、他の代表者がいないのだろう?何故、自分の世界のシンボルが?疑問しか湧かないでいると、肩で「ん…」と呻く声と振動があった。そちらに顔を向けると村正が意識を取り戻したらしく、赤に近い朱色の瞳が開かれる。
「………匡華?」
「起きたかい村正。ご覧」
目を覚ました村正に周りを見るよう促す。村正が周りを見ながら立ち上がり、それにつられるように匡華も立ち上がる。
「…何ですか此処。専用の〈闘技場〉、ですか?此処。他の代表者は?なんでクリスタルがあるんですか?」
「それ、私も同じ事を思ったよ」
二人して同じ事を考えた事に、匡華と村正はクスリと笑い合った。その時だ。空気が揺らいだのだ。二人は警戒して、腰にある武器に手をかけた。その場から動かずに、二人は視線だけで空気が揺らいだ原因を探る。ハッと匡華が頭上を見上げた。それにつられて村正が頭上を見上げる。驚く彼と共に匡華は警戒心を漂わせながら、頭上にいる…いや、浮かんでいるフード付きローブを身に纏い、フードを頭からかぶった者から距離を取るように後退った。フードの人ーフード付きローブの人だと長いのでーの全身が見える位置に辿り着くと、村正が匡華の前に抜き身の刀片手に立ちはだかった。そして、殺気を放つ。二人の警戒態勢にフードの人は何が可笑しいのか、村正の殺気に動じる事もなく、クスリと嗤うと、声を発した。
「ようやっと、最後の世界が来たか。とりあえず、ようこそ」
片腕を広げて、優雅にお辞儀するフードの人。少し高い、声変わりが済んでいなさそうな声と服の上からでもわずかに分かる男らしい体付きから恐らく少年だと推測される。だが、ただならぬオーラに匡華はまさかと思う。それを感じ取ったのか、フードの人は、再び小さく嗤った。
「そう。ボクは君達が神と呼ぶ者。早速だけど、此処はボクが創った専用の世界の"一部"だ」
「?一部?」
村正が怪訝そうに眉をひそめるとフードの人、神様は肯定するようにフードに隠れた顔で頷いた。そして、ローブからブカブカの、サイズが合っていない服の袖口を出すと口元に当てた。
「そう、此処は君達の実力を試すために創った云わば実験場。『異世界案内人』には代表者を送るまでを一任したけど、それ以降は頼んでないしな?」
なるほど、つまり神様は今から自分達の実力を試し、条件に合っているか確かめようと云うのだ。匡華も村正も彼のー恐らく少年なのでそう表記したー意図を読み取る。匡華が小太刀を抜き放ち、村正と並ぶと彼も刀を抜き放ち、二人は構える。まさか、理解出来ると思っていなかったらしく、神様はキョトン…と静まると小さく、震え出した。どうやら笑っているらしい。そして、バッと顔を挙げると2人を袖口に隠れた手で示した。
「理解が良くて嬉しいよ!じゃあ、早速始めようか!」
声に抑揚はついているが、感情がこもっていない。そんな声が闘技場に響き渡った。匡華がチラリ、と神様の様子を伺うと神様は「二人」いることに疑問を抱いていないようだった。神様は村正を匡華の能力で誕生した者と認識したのだろうか?確認しなくても良いと云うことは他にも能力で誕生した者を連れている代表者がいるからだろう。なんにせよ、好都合だ。匡華は一人納得し、村正の能力ーと、肯定するには難しい…かーに恐れをなした。
神様の遥か足元の地面から、黒いスライムのようなものが数体浮き出て来た。スライムの中央や右斜めなどに、目であろう青や赤、色とりどりの球体が浮き出る。
「そいつらはボクが創った実験場用の魔物。もしくはモンスターとも言うけど……まぁ、世界によって違うし関係ないか。さあ、実力試しの始まり始まり!」
神様がそう叫ぶと数体のスライムがその体に合わぬ、素早い動きで匡華と村正に迫った。二人は視線で会話するとスライムに向かってこちらも迫った。
「さぁーて、早く死んでくれる代表者でありますように…」
空中で足を組ながら座る神様は、眼下に広がる闘いを見て物騒なまでに冷たい声で言い放った。
匡華は小太刀をスライムに向かって斬りつけた。スライムの体が一瞬、真っ二つになった、がすぐさまその傷は塞がり、元に戻った。キョトン顔の匡華に向かってスライムが二体襲いかかる。頭上から雨のように降り注ぐ二体のスライムを横に飛んで避ける。そこに村正がやって来た。匡華と同じく、斬っても斬っても倒れないスライムにイライラしているようで、瞳が鋭くなっている。
「村正」
「なんです匡華」
「一人一人はきつい。なら、二人同時に切り刻んでやろうじゃないか」
匡華が悪戯っ子のように村正に言うと彼は口角を上げて、同意を示す。二人は武器を構え、集合したスライムに向かって跳躍した。素早い動きで迫る両者。だが、突然、村正の姿が消えた。そのまま匡華はスライムに突っ込み、素早い攻撃で全てのスライムに大きな傷を与える。スライムの球体が無駄だと匡華を嗤った。スライムの傷が治って
「?!」
いかない。スライムの球体が驚きに瞬く。匡華の攻撃よりも素早い動きで村正がスライムを攻撃し、傷が塞がるのを邪魔している。そこに匡華も加わり、傷が塞がらずに、スライムは傷だらけになっていく。そして、二人が闘技場の床にカツンッとヒールの音を響かせて距離をとった時、既にスライムは傷を治す事すら困難な状態だった。グジャッと不気味な音を響かせて、スライム数体は水のように溶け、床に染み込んでいった。その闘いを見ていた神様は匡華と村正を見やった。疲れた様子もなく、二人は互いに怪我がないかと心配し合っている。
「……君達には、もう少し必要みたいだな!」
パチンと神様が指を鳴らすと、闘技場全体が揺れた。匡華と村正がその揺れに驚きながらも態勢を取るために足を踏ん張る。神様がフードに隠れた顔で、愉快げに嗤った。神様の足元の地面から、茶色の鱗を持ったドラゴンが現れた。ドラゴンの大きさは中くらい…と云ってもいいのだろうか。匡華も村正もドラゴンに出会った事がないので正確には判断できない。匡華と村正は無意識のうちに視線をかわし、武器を構えた。その威勢の良さに、神様は袖口を口元に当て、小さく嗤う。その声に反応してドラゴンが雄叫びを上げた。
「村正、倒そうか」
「はい、分かりました。匡華のお望みとならば」
匡華は村正の答えにクスリと笑う。そして二人は再び、大きく跳躍した。
「怪我、しないでおくれ」
「分かってます!」
ドラゴンが二人に向けて、両の鋭い爪を振り下ろした。
朝にも投稿しましたがもう一つ。えいっと。
アニメとかゲームとかでマニキュア塗った男キャラや女キャラいますが、なんか妖艶になる(?)んで不思議だなぁって思います。なんとなく、ウチが考えるにマニキュア塗ってるキャラって何かしら妖艶さ持ってるキャラが多い気がします。気のせいでしょうか?それでもウチはマニキュア塗ったキャラ、どっちも好きです!
長文失礼しました。言いたかったんです。