表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロの蝶  作者: Riviy
第三章:二人のマリオネット
32/153

第二十九ノ世界:落ちた影



一人、部屋に向かって歩いている村正。一つ角を曲がり、少し歩いたところで


「………」


壁に体を押し付けると荒くなった息を鎮める。たった数メートル歩いただけなのに。相当、疲れているんだなと村正は自分の軟弱さを嘲笑った。息を整えると壁に手を付けながらゆっくりと移動を開始する。

嗚呼、イライラする。体が重い、と云うよりもぎこちない。原因は分かっている。昨日のあれと、生活環境のせいだ。大所帯、多くの人と一緒にいるのはいまだに慣れたものではない。体は慣れているが精神までは慣れていないのだ。多くの人と一緒に長くいると「あの時」を思い出されるから嫌いだ。だから疲れが出たのだろう。殺し合いに参加すると云うことはそういう事もあるはずなのに、油断していた。自分は、ある意味未熟だ。そして、ある意味、克服に近い。そう思うと疲れが吹き飛ぶようであった。嬉しいのか、憎いのか。その感情さえ疲れで理解が追い付かないが。


村正はズキリと傷んだ頭を抑え、早く部屋に戻ろうと重たい足を懸命に動かす。部屋で少し休めば、治る。そういうものだ。千早と鳳嶺達と一緒にいても治る事には治るだろうが、逆に悪化する恐れもある。だからそれに気づいた匡華には村正も恐れ入ったし、嬉しかった。


「………だいぶ良くなりました」


部屋に着く前に足取りが軽くなった。イライラもなくなりつつある。今なら考えても大丈夫でしょうか…?全てが良くなったわけでは決してない。けれど、村正は気分がよくなった事をいいことに考えたかったことを思考し始める。

村正は匡華と同じように神様の行動や抑揚のない声が気になっていた。何故あそこまで世界を消滅させたがる?創造神と云うからには何か理由があるんでしょうけれども。それに、朱雀が持っていた、いや使ったであろうあの試験管の中身は一体?彼女に手を貸した人物は、これからの殺し合いに影響があるのか?もしそうならば、全力で排除するまでですがね。

と、村正はそこまで考えて、自分がうっすらと笑っていることに気づいた。だいぶ調子が戻って来たらしい。本当に自分の体なのに理解が追い付かない。


「ふふ、飽きませんねぇ」


村正は愉快そうに微笑むと壁に付けていた手を離し、しっかりと立とうとした。その時、空気が揺らぎ、ある気配を導き出す。だいぶ良くなったとしても本調子ではなかったらしい。村正がその気配に気付き、振り返ろうとした次の瞬間、村正の左肩に痛みが走った。


「?!」


左肩に視線を向けると刃物の切っ先が突き出ていた。村正は左肩から伝わる痛みに顔を歪ませた。嗚呼、自分の不注意が原因か。村正は刀を抜き放ちながら後方に向かって刀を振った。村正の背後にいたその人物は村正の攻撃に驚いたように後退しながら刃物を抜いた。村正はその人物に向かって追撃を行うと人物は怯えた様子で後退していく。殺気を放つとその人物は怯えたようにビクリ、と足を止めた。人物の体はブルブルと震え、こちらに辛うじて向けている刃物の切っ先も微かに震えており、明らかに怯えているのが分かる。村正は刀の切っ先を人物の首筋に突きつけた。寸止めしたがそれでも人物はヒッと悲鳴を上げていた。村正は人物を見て、あの怯えた少年かと思ったが相手をよく見て違うと確信した。明らかに青年。両手には脇差を持っている。と、青年の視線が変わった。暫く、両者睨み合う。ズキリ、村正の頭に激痛が走り、顔を歪めた。そこをつき、青年が刀を左の脇差で弾くと村正の懐に迫る。痛みを振り払い、顔を上げた村正は驚き、目を見開いた。今からでは防ぎようがない!青年が繰り出す右の脇差の攻撃を頬に受けながら村正は背後の壁を使って駆け上がると、青年の背後へ着地する。青年が振り返り様に脇差を振る前に足元に向けて刀を振り、回し蹴りを放つ。反対側の壁に背中を打ち付けたが、青年は素早く立ち上がると脇差を構えた。村正は彼に次の行動に移る時間を与えてなるものかと刀を上段から振り下ろした。ガキン、と脇差二振りを交差させて重い一撃を防ぐ青年。足が痛むのか顔を歪め、ガクリと片膝をついた。


「背後からとは、少し油断しましたが覚悟は良いですね?僕に攻撃したんですから」

「……ええ、もちろん」


低い、そんな低くもない声が村正の鼓膜を震わす。放たれている殺気に青年は冷や汗を垂らす。逃げたいほどの殺気。でも、逃げるわけには……しかし村正の問いに自信満々と言いたげに笑って答えた。その答えに村正も満足そうに口角を上げた。青年が村正の刀を弾き、よろめく村正の腹に蹴りを入れる。腹を押さえながら後退した村正に踊るように脇差で攻撃する。それらを右、左とこちらも踊るように回避する。と刀をクルリと手元で弄び、逆手持ちにすると右脇腹を狙って来た脇差の刃と脇腹の間に刀を押し込むようにして防いだ。すかさず青年が左の脇差を突き刺すがそれを冷静に首を傾げる要領でかわすと刀を上へ振り、脇差を弾く。前のめりになった青年の腹を蹴り上げ、うずくまる彼の背中に刀を突き刺す。


「!?ふふ、やりますね」


が、ガキン、と云う甲高い音に村正は口角を三日月のように上げた。調子が戻って来た。青年は左の脇差を素早く自分の背中と刀の間に滑り込ませ、間一髪逃れた。右の脇差が村正の顔面目掛けて突き上げられる。それを後方に顔を引いて避けると横に出て一度、距離を取る。廊下と云っても狭い。行動範囲は限られる。青年は口元から垂れてきた血を拭い取ると困ったように笑った。


「私も簡単に殺られるわけにはいかないのです」


その答えに村正は刀を構える事で答えた。殺気を放ちながら、その切っ先を青年に向ける。青年は一瞬、怖じ気ついたようだったが、すぐさま気を取り直した。そして、表情を引き締め、脇差を構える。何処か先程の殺し合いよりも何かに怯えているように見えるのは気のせいか。と、青年の気配が変わり、堂々と言う。


「能力、発動」

「?!しまったっ」


どんな能力かも分からないのに発動されては困る。村正は床を強く蹴り、青年に向かって跳躍し、刀を首筋目掛けて突き刺した。が、それは意図も容易く防がれた。防いだのは青年ではない。ユラリと青年の前に現れたもう一人の青年だった。驚く村正を尻目に両手に短刀を持ったもう一人の青年は刀を弾き、村正を後退させる。着地し、前方を睨み付ける村正。もう一人の青年はその睨みに臆する様子もなく、右手を青年の肩に乗っけ、言う。


「おぉーい、いつまでもオレに頼んじゃねぇぜ。此処は殺し合いの場。汝が殺しをしなけりゃあ、世界は消滅しぬんだぜ?」

「理解しています…」


彼の言いように青年はわかってると言わんばかりに頷いていた。それに少し表情が歪んだようだった。もう一人の青年はそれに満足したようにニヤリと笑い、村正に向かって突然、牙を向いた。二振りの短刀を突き刺すように村正に向け、勢いよくぶつかってくる。それを刀を横にして防ぐと突撃された勢いのまま、背中を強く壁に打ち付けてしまった。鈍い痛みを感じているともう一人の青年が再びニヤリと笑みを浮かべた。その笑みで細められた瞳はまるで相手の心の奥底まで見ているようで、それを嘲笑っているかのようだった。嗚呼、気味が悪い。


「気色悪い笑みですねぇ」

「クク、否定はしねぇさ。でもな、あいつもやる時はやるんだぜ」


もう一人の青年を短刀ごと弾き、村正が次の行動に移ろうとした時、既にそこに青年が二振りの脇差を村正に向けて突き刺していた。先程のもう一人の青年は村正が逃げ出さぬよう頭上から攻撃しようとしている。背後は壁。前方からは青年、頭上からはもう一人。ほぼ退路を断たれた。二人分を防ぐのはきついか…?


「(ですが)」


村正は柄を強く握り締め、一瞬、意識を集中させる。刀の、妖刀の力が手を通して体に流れ込んでくる錯覚に陥る。目を細め、刀を構えた。その時


「村正!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ