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モノクロの蝶  作者: Riviy
第二章:血で償われた戦場
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第二十六ノ世界:消えた骸、生まれた骸



観客席の後ろに身を潜めていた匡華は千早を彼女の楽な体勢にすると、影から闘いを覗いた。が、近くに気配を感じ、振り返った。


「ふーん、どうなるんだろ」


自分達の背後の観客席に神様が足を組んで座っていた。いつの間に。匡華がそう目を見張っていると神様は匡華に気付き、フードの中からにっこりと笑った。笑っていない笑みが匡華を貫く。神様は匡華から視線を外すと殺し合いを見下ろす。匡華じぶん達には興味がないらしい。あるのは殺し合いの結果、ただそれだけ。匡華は息の荒い千早を気遣いながら、神様に気付かれぬよう鋭い視線を送った。


「(だが)」


神様は気づいていない。いや、「気づいていて見知らぬ振り」をしているのか。それでも、大丈夫。

匡華は駆ける相棒を見やった。黒く美しい妖艶な姿が目に移った。匡華はすんでのところで思考を中断し、小さく笑った。その笑みは傷を負い、痛みに苦しむ千早をも癒すほどの慈悲深げな笑みだった。


「(見せておくれ、村正)」


そして、絶対的な信頼。


…*…*…


村正はこちらに背を向け、鳳嶺の方へ駆ける朱雀を確認し、足を止めた。鳳嶺は驚いたようにマシンガンの引き金から指を外している。村正は観客席にいる匡華を横目で見やる。と匡華は小さく笑っていた。嗚呼、なるほど。その笑みで全て悟った村正は、刀を納め、片膝を付き、右手の指をボロボロの床に当てた。そして、意識を集中させる。


「!?おい村正っ!」

「ふふ、負けかのぉ?仲間に見放されたかのぉ?」


鳳嶺が距離的に間に合わないと思ったのかマシンガンを横に構えながら村正に文句を放つ。一方、朱雀は村正が背後に斬りかかってくると云う賭けにある意味勝った事で有頂天になっていた。大太刀を持っていない方の手を横に突き出すと床に突き刺さっていた刃物が命を吹き返し、再び動き始めた。そして刃物の群れは鳳嶺の退路を防ぎ、袋の鼠とする。鳳嶺は唇を噛みしめるともう片手にもマシンガンを出現させ、二丁とすると右を背後の群れに向かって、左を迫る朱雀に向かって構えた。が、どちらも速度は速い。鳳嶺は引き金を引いた。回りながら朱雀と刃物の群れを攻撃する。辺りが閃光に包まれ、目がチカチカする。カランカラン、と何かが落ちる音に鳳嶺は息を吐いて乱射を止めた。が、次の瞬間、自分の行動を恥じた。朱雀の大太刀が煙の中から、鳳嶺の首筋目掛けて突き出された。カチッ、慌ててマシンガンを突き付け、引き金を引いても銃弾がこめられていなければ意味はない。鳳嶺は背後を横目で確認する。背後は武器なしの壁。前方は朱雀。


「(絶体絶命…ッ)」

「さあ、初めての首をもらおうではないか!!負け犬よっ!!」


妾は、戦場を制する先祖返り。そなたらのような、格下には負けぬ!

朱雀の大太刀が鳳嶺の首筋に突き刺さる。


「ええ、全くの同感です」


ゾワッ!先程よりも凄まじい悪寒と殺気。触れればたちまち指の先から凍ってしまいそうなほどの悪寒。ある一定を除き、視線を合わせただけで死を与えそうなほどの殺気。朱雀の額から、いや全身の血が凍る。なんだ、なんじゃ。妾はこんな「奴」と闘った事などない。これは、いわゆる規格外。

ユラリ、とそのオーラを纏った者が動きを止めた朱雀の首筋に刃物を当てる。その正体は一人しかいない。


「………村正」


ガッと朱雀に回し蹴りを放ち、吹き飛ばすと村正は彼女に追い付き、回転を利用して大太刀を持つ手ごと、右腕を切り落とした。大量の血が吹き出し、朱雀は何が起こったか理解出来ていない。村正はそのまま、片手で朱雀の頭を鷲掴みにすると明るくなった空に投げた。空中で朱雀が体勢を立て直す前に素早く跳躍し、懐に潜り込む。懐に手を入れかけていた朱雀は村正と目が合い、全てを悟った。じぶんは、村正かれが微笑んだあの瞬間から負けが決まっていた。いまだかつて闘った事もないほどの速度と圧倒的、力。嗚呼。朱雀は目の前に迫った村正に向かって微笑みかける。その笑みは自分自身を嘲笑っていた。血が滾る。こんな興奮を待っていた!


「ふ、ははははは!!妾は、お主の、いや、"お主ら"を見くびっていたようじゃのぉ!!」


村正は朱雀の言葉ににっこりと笑っていない笑みで答えるとその腹に刀を突き刺した。朱雀の口から血が出る。村正は刀を勢いよく、容赦なく抜き放ちながら彼女を床に叩きつけた。叩きつけられて大きなクレーターのようなものが出来上がり、土埃が舞う。薬莢を入れ終えた鳳嶺が咳き込みながら落ちた朱雀に近寄る。


「やめておきなさい。そんな事も分からないんですか?」

「ッ!」


と、突然の気配に驚いて動きを止めた。がすぐにその気配の正体を確認し、安心したように息を吐いた。隣にいたのはいつの間にか着地した村正で、村正は鳳嶺の反応を見てクスクスと愉快そうに笑っている。

先程の村正は恐ろしいなんてもんじゃない。いや、もしかして此処まで予想通りだとでも?……村正…いや、匡華と村正。二人は、「何者」?


そう、思ってしまった鳳嶺は自分を恥じ、打ち消すように軽く頭を振る。そして、村正と頷き合い、土埃が晴れた場所にゆっくりと近づく。ガラッ、何かが立ち上がったような気配がした。言わなくても分かる。朱雀だ。土埃が晴れるとやはりそこにいたのは朱雀で、頭から大量出血、腹には小さな穴があき大量出血、右腕はなくなり白い骨さえ見えており大量出血。顔は先程の狂気的な笑みもなければ、見下すような女武人の顔もない。ただただ、青白く、二人を愉快だと云いたげに睨み付けているだけである。あんな高さから落ちて大量出血しているにも関わらず、生きているし立っている。さすが代表者と言ったところか。朱雀の左手には一振りの短刀が握られていた。あれで自分達に反撃する気か。鳳嶺はそう思った。が、村正は違ったのか朱雀の様子を見て言った。


「負け犬はどちらでしょうね?」

「ふふ、嗚呼、そうじゃな。負け犬だと見下しておった者に負ける……なんとも愉快で不愉快な結末じゃ!!今までに体験したことがないっ!」


短刀を持った手で顔を覆いながら朱雀は笑う。村正は殺し合いで懐に迫っても物怖じしなかった理由が分かった。懐刀。危なくなったら懐刀である短刀で蹴りをつけようと考えていたのだろう。手入れされた短刀。あの鋭さだ、切られたらひとたまりもないだろう。そんな事を考えてしまい、鳳嶺は自分が余裕綽々としている事に自身を嘲笑った。まだ、決着はついていないのに。

朱雀は短刀を村正と鳳嶺に向け、一瞬年相応な表情をした。悲しそうな表情。その表情は死ぬと云うことに対しての感情ではないようだった。闘えない事への悲しみのように村正と鳳嶺は感じた。


「嗚呼、しかしのぉ、妾は敗北を知らん。お主らによって敗北を知る事は喜びにて不快……妾のご先祖様を知っておるか」


突然、朱雀は二人にそう聞いてきた。なんとなくだが分かっていたのでその名を口にしようとする鳳嶺。その隣で村正は首を傾げていた。チラリと横目で匡華達を見た。神様はフードの中で驚いているようだった。身を乗り出している。何が神様を驚かせている?匡華は村正に視線を向け、なにかを訴えかけている。その意図に、朱雀の意図に気づいた村正は軽く目を伏せた。


村正が半分本気でーす…ワロエない…

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