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モノクロの蝶  作者: Riviy
第二章:血で償われた戦場
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第二十二ノ世界:XYがない者


時間不明の何処か。そもそも、此処は神様が創った〈闘技場〉。『異世界案内人』か、それか神様がいなければ外には出られないある意味牢獄に近い場所。閑話休題まぁいいとして。その〈闘技場〉の何処かである二人が対峙していた。一人は手元に持つ試験管を弄んでいる。もう一人はその試験管に疑いの視線を向けていた。


試験管それを使えば、妾は勝てるのか?」


もう一人、朱雀は腕を組み、怪訝そうに言い放つ。朱雀の表情は自分の行いに納得がいっていないようにも読み取れ、また勝利を渇望している表情でもあった。一人はふふっと笑うと試験管を自分の顔の横に掲げた。


「ええ。これは一種のドーピング剤。きっとアナタの望みを叶えると思う…よ」


中性的な声がそう答える。朱雀は眉のしわを深くした。自分は、こんな事をしてまであやつらに勝ちたいのか?いや、勝つことが正義。自分の世界でも、此処でもそれは同じ事だ。そのためならば…

目の前の一人が挑発的に朱雀に笑いかける。ムッとその笑みに不機嫌そうに反応しながら、朱雀はその手元から試験管を奪い取った。突然の事に驚く一人の表情が滑稽で、思わず朱雀は鼻で嗤った。


「妾は武人、最強の女武人である。妾は勝たなければならん。能力以外にも最強を保つのは、当然であろう?」


朱雀の言葉に一人はキョトン、としたが軽く腹を抱えて笑い出す。暫く笑った後、滲み出た涙を指の腹で拭いながら頷いた。


「そう……そう、そうだね。けれど、試験管それはアナタがどう使うかで効果が変わる代物…それ、をよく覚えておいて…」


最後の方はほとんど小声になっていたが朱雀には聞き取れ、どうってことなかった。小声になったのは多分、朱雀の女らしからぬ屈強な体格や彼女から放たれるオーラに臆したからだろう。代表者であるのに、なんとも…そう考えた朱雀は再び鼻で嗤った。そして、無意識のうちに目の前の一人を嘲笑っていたことに後悔の念と謝罪の気持ちが浮かび上がった。だが、それは本当に朱雀じぶんの思いか?目の前の一人にそう促されているのでは?自分しか味方がいない状況で疑心暗鬼に陥る。高速で回転し出した思考で朱雀が辿り着いた答えは、「関係ない」。

朱雀は手元にある試験管の封がきちんとされていることを確認すると、それを一度放り、またキャッチして弄ぶ。


「嗚呼、承知しておる。次は、とことん殺し合おうぞ」


ビシッと一人を試験管を持った手で示しながら朱雀は口元を歪めて言う。嗚呼、愉快。体中の血液が逆流する、体が熱い、嗚呼、興奮する!朱雀は軽い足取りで帰路についた。そんな彼女を見送り、一人は口元を三日月のように歪め、それを片手で隠しながら呟く。


「それは、人ではなく、自分を見てから言って欲しいなぁ」


クルリと方向転換をし、朱雀とは反対方向に歩いて行く。見えなくなってしまった彼女に一人の言葉は聞こえない。


「此処では誰もが敵。簡単に心を許すと、殺されちゃう」


暗闇に全て、溶けて消えた。


…*…*…


神様は眼下で繰り広げられる殺し合いを見ながら首を傾げた。「予定よりも遅い」と。神様の予定では一日に二人死ぬ予定だった。代表者以外にもいるのだから出来ない事ではない。けれど、実際は二日に一人のペースである。まだ始まったばかりの戦闘であるし、日数が経っていないので仕方ないのかもしれない。眼下で繰り広げられている殺し合いも今日が初戦同士。「最強または最強に近しい者」、つまりそれは、すぐには終わらないということ。もし終わらない闘いとすぐに決着がつく闘い、どちらが面白いと問われれば、神様は終わらない闘いと即答するだろう。だって、すぐに終わってしまっては面白くなし、愉しくないでしょう?


「(消滅させるなら、ボクが望んだやり方が良い。そう、これはボクのための、ボクのためだけの消滅シナリオ。君達になんか)勝たせてあげない」


クスクスと、神様は足を組んで嗤う。ぶかぶかの袖口の中で指をパチンと鳴らす。すると、神様の姿はだんだんと薄れて行く。殺し合いをしている代表者達は気づいていない。

世界の反対を恐れて、条件を簡単にした。けれど、それはあちらにとっても有利でこちらにとっても有利な状況なのだ。それを世界は、代表者達は知っているのだろうか?まぁ、知っていたとしてもなんだと云う話だが。

暗闇に包まれた視界。四方八方、真っ暗闇である。そんな何処かわからない空間で神様は腹を抱えて笑い出す。何が可笑しいのか?自分でもきっと理解していない。けれど、可笑しいのだ。


「さあ、自分達が得た能力で殺し合え」


暗闇で神様は、誰に云う訳でもなく、抑揚を付けずに言い放つ。感情はこもっていない。けれど、言葉のはしはしから不気味な負の感情らしき摩訶不思議なものが漂っている。神様は口元をぶかぶかの袖口で覆い隠すと目を細めた。目は、言葉と同じように笑っていない。此処に代表者が一人でもいたら、きっとこう言うのだろう。「恐ろしい」、と。けれど、神様は違った。神様は自分自身でそれを「愉快」と表現する。だって、人間である君達で言ったら、この感情はそうなんだろう?

神様はそういえば、とある事を思い出した。そして、軽く目を閉じ、集中する。神様の脳内を様々な映像と言葉、〈闘技場〉で起きた出来事が巡る。一通り考え終え、神様は目を開きながら苦々しげに顔を歪めた。思考の結果、代表者の中にルールを破りそうな奴がいる。それは神様をとても苛つかせる。破ったらその世界は消滅するのにそれを理解してかしていないのか動く愚かな人間がいることがとても、苛つく。


「まっ、まだ本当に、微妙に破ってないから大丈夫か…でも、用心はしておかなくちゃなぁ。駄目だぜ?」


神様がいた真っ暗闇が晴れ、何処かの部屋となる。突然現れたように見える神様をその部屋の主が驚いた表情で見上げていた。口の端がピクピクと痙攣している。なにをそんなに驚いて…もしかして、恐れているの?神様はにっこりと笑っていない目でその人物に笑いかける。そんな狂気的な笑みが人物を貫いた。


「ルールを破るなよ?君の世界が消えるよ?」


そう言ってやれば、その人物はニィと何故か笑った。神様が不思議そうに顔を歪めるとその人物は言う。


「まだ、大丈夫だから。それは神様がよくわかってる事でしょ?……自分は…自分の目的で、動く」


愚か。

神様は人物を鼻で嗤った。がそれは人物も同じだった。神様になんか邪魔されるもんか。自分自身も、世界も救う。その手立てを見つける。例え、他の命を犠牲にしても。


二人の不気味な笑みと恐れない、真剣な視線が交差した。遠くから、戦闘の音が聞こえた。


今日は二つ!此処で謎(?)を入れてみる…

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