表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロの蝶  作者: Riviy
第二章:血で償われた戦場
23/153

第二十一ノ世界:闇夜の酒宴


ゴーン、ゴーン、ゴーン、と遠くから鐘の音が暗闇に響き渡る。24時、殺し合い終了の合図だ。それを部屋の中から聞いた千早は片手に持っていた酒瓶の酒をもう片方の手に持つ盃に注いだ。そしてそれを自分の隣に座っている匡華に渡した。


「はい、匡華さん」

「ありがとう、千早。まさか、こんな時間に酒盛りをすることになるなんてね」


クスリと笑って匡華は千早から盃を受け取りながらそう言った。その反対側では鳳嶺が村正の持つ盃に酒を注いでいる。そう、今彼らは酒盛りをしていた。早い時間に始めれば、殺し合いに遭遇する可能は高く、この後に酒盛りが出来ると云う保証はない。ならば、終了時間と共に始めれば良い。それならば、確実だ。千早の作戦を聞き、それについて語った後、彼らは酒盛りに移った訳である。


千早はテーブルに置いてあった自分の盃にも酒を注ぐと盃を持った。そして、匡華と盃をぶつけて


「「乾杯(♪)」」


乾杯した。両者、楽しそうに笑いながら盃に口をつける。村正と鳳嶺も二人と同じように盃同士をぶつけ合い、酒を飲む。ふと、匡華は「仲間」と共に酒盛りをしていた時を思い出した。あの時は飲みすぎて伯父に怒られてしまった。ふふっと思い出し笑いをするとそれに気づいた鳳嶺が不思議そうに問う。


「どうしたんだ?」

「ふふ、いや?こうして酒盛りをするのも良いなと思ってね」

「なら何か余興でもしましょう!」


パンと手を叩いて、千早が愉快そうに笑って言う。千早の頬は少し赤みを帯びており、花魁と云うだけあってその姿は色っぽい。村正に至っては盃に入った酒を案の定、チビチビと飲んでいる。そんな彼の背を鳳嶺が可笑しそうに叩くと村正は一瞬、不機嫌そうに鳳嶺を見上げた。


「…鳳嶺?」

「ハハッ、悪い悪い。村正があんまりゆっくりと飲んでるから」

「そう云うあんたもさっきから減っていないように見えますが?」

「「…………ハ」」


二人は笑っていない視線を合わせて、互いの盃に酒を入れ合った。なんだかんだ、息が合っているように見えてならない。匡華が千早の「余興しましょうよ~」と云う視線に気付き、酒を飲みながら彼女に問った。


「千早、余興と言っても何をするんだい?その範囲によっては私達も参加出来るが」


千早は左手の人差し指を口元に当てて悩み出す。その悩んでいる仕草がどうも嘘っぽい。悩んでいるふりをしていた千早はにっこりと笑ってズイッと匡華の方へ身を乗り出した。匡華が驚いて後ろに身を引くとギィとソファーが変な音を出した。ちなみに匡華と千早、村正と鳳嶺のペアで座っており、彼らの間にはローテーブルが置かれている。


「余興、と言っても色々あるわよねぇ…歌でも良いし、踊りでも良い、なんでも良い事にしましょう!その方が楽しいわ!」

「なんでも良い、とは後で後悔しても遅い言い訳ですよ?」


村正が千早をからかうように言い放つと彼女は村正に酒を薦めながら言った。


「私、これでも余興はたくさんやって来たし、見てきたのよ?後悔なんてないわぁ」


赤くなった頬に酒瓶を当てながら妖艶に微笑む千早。村正は小さく笑い、注いでもらった酒を飲んだ。鳳嶺が勢い良く酒を呷り、盃をローテーブルの上に置くとニィと笑った。何かやるらしい。匡華も千早も村正も彼に注目した。


「んじゃあ、俺から行くかな」

「おや、鳳嶺からかい?楽しみだね」

「ふふふ、なら私、あれ用意しなくちゃ」


千早が突然、盃を置いて立ち上がるとベッドの近くにある小さな机に近寄った。何がなんだかわかっていない匡華と村正は顔を見合わせている。すると、千早が戻ってきた。その手の中には畳まれた扇が二つあった。それを見て匡華も村正もなんとなく察しがついた。


「なるほど、舞ですか。どんなものを見せてくれるのでしょうねぇ」


村正がそう挑発的に言うと千早も鳳嶺もクスクスと笑った。それに村正はムッとして隣で笑う鳳嶺を睨み付けた。鳳嶺は

千早から扇を受け取りながらその鋭い視線をかわし言う。


「違う違う。千早は関係ねぇよ。俺が舞うか歌うの。俺、両方出来るから相方が欲しいんだ」

「え?」

「それでは…誰が相方を?」


呆けた表情で匡華が問えば、鳳嶺はあからさまに視線を村正に向けた。自分となにやら親近感があるため、行けると思ったらしい。その意図に気づいた村正ははぁと大きくため息を吐いた。ちらりと前方を見やるといつの間にか席についた千早がキラキラとした視線を送っていた。村正は千早の目に写っている世界はどうなっているのかと気になった。千早は気配で世界を見ている。視覚以外の四感で世界を見ている。そこまで考えて、村正は自分はこんなにも心を許したのか、と

自嘲気味に小さく笑った。よく見れば、匡華も期待に満ちた目をこちらに向けている。村正はクスリと愉快げに笑い、盃をテーブルに置くと鳳嶺を振り返った。鳳嶺は村正の方を振り返りながら、左の肘をソファーの背もたれに置いた。


「村正、どっち出来る?」

「出来る前提ですか。どちらも出来ますが」

「ハハ、上等。舞え」


一つ、扇を村正に差し出す鳳嶺。村正は一瞬、命令口調にキョトンとしていたがその扇を受け取り、鳳嶺の手を引っ張った。鳳嶺が片割れの扇を持ち直し、村正に引っ張られるままに立ち上がった。


「ふふふ、村正、変わったね貴方は」


匡華の意味深な言葉に千早は酒を飲みながら首を傾げる。匡華の声には嬉しさが満ちていた。立ち上がった村正は匡華を振り返り、人差し指を口元に当て妖艶に微笑んだ。そしてそのまま、受け取った扇を開き、口元を隠した。その行動の意図を読み取った匡華は嬉しそうに笑い、酒を呷った。鳳嶺も扇を開いて村正と背中合わせになる。千早は楽しみなのか全身から「早く早く!」と云うオーラが出ている。鳳嶺が村正を横目に合図する。村正は彼を見上げ、頷いた。


「~♪」


途端、鳳嶺の口から低くもよく響く歌声が流れ出す。その歌声と共に二人が扇片手に舞う。その姿は美しくも、儚げ。そして、妖艶。舞う二人の空間だけが幻かのような錯覚。それを千早は四感で見て、ほぉ…と恋する乙女のように頬を染め。匡華は楽しく舞う村正を見て微笑ましい気持ちになっていた。

嗚呼、あの時が嘘のようだね、村正。


「……美しいーーーー」


ポツリと匡華が言った言葉は鳳嶺の歌声で掻き消された。と、千早が真剣な表情で舞う二人を見ている。匡華がどうしたと訊く前に、コトリと盃を置いた千早が真面目そうな声色で言った。


「あの二人、なんであんなに色っぽいのかしら?……本当に、男の人、よね?」

「…ん?」


あ、酔ってる。言わなくても分かった匡華は立ち上がりかける千早の両肩を押さえ込み、無理矢理座らせると何事かとこちらを向いた二人に言う。


「どうしました?匡華」

「千早が酔ってる!」

「はぁ!?酔い回るの早いな?!……千早」


驚いた鳳嶺がまさか…と云うように彼女に問う。千早は赤くなった顔を上げて「なぁーに?」と問う。


「一人で、何本飲んだ?」

「んー三かしら?」


シーン…千早の答えに三人は黙った。黙ったままローテーブルの上を見るといつの間にか空らしき酒瓶が三本、横倒しになっていた。いつの間に一人で飲んだのだろう。鳳嶺が呆れたように顔に手を当てて俯いた。


「……千早、上限じゃないか!止めろもう!」

「まだ、飲めるわよ!それより二人共、本当に男の人なの~?」

「匡華!彼女を止めてください!」

「分かってる!」


その後、酔った勢いで暴れ出す千早を静めるためその場はある意味、賑わった。楽しそうな声と雰囲気が部屋から漏れ、彼らは午前三時頃まで酒盛りをしていたと云う。


ウチは物語の中に酒盛りシーンを入れないと生きていけないのか(困惑)いつからか、入れないと気が済まなくてですねぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ