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モノクロの蝶  作者: Riviy
第二章:血で償われた戦場
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第二十ノ世界:不穏な音と不穏な平和


ギリギリ、ギリギリと床に刻まれる不穏な音。廊下に響く、耳障りな音。その正体は廊下を歩く朱雀の足元からしていた。朱雀は両手をダラリと脱力したように垂らし、その手中にある大太刀が廊下の床を削って音を奏でていたようだ。朱雀は重い面持ちで廊下を歩く。自らが引き起こしている耳障りな音さえ、入って来ない。それもそうだ。彼女は今、後悔の念にさらされているからだ。


「(あやつの言葉通り、妾は馬鹿じゃ。時間稼ぎにも気づかぬとは!!それに、情報を与えてしもうた……これだから妾は、いつまでたっても隊長にさえなれんのじゃ……)」


バンッ!と大太刀を持ったまま壁に拳を打ち付ける。


「嗚呼!苛つく!!妾にも、あやつらにも!!今度こそ、妾のこの大太刀で葬ってくれよう!!」


怒りに任せて朱雀は叫ぶと、ようやっと大太刀をそのままにしていたことに気付き、鞘に納めた。その時、


「!?」


背後から自分に向けられた殺気に朱雀は素早く振り返り、能力を発動させ、その殺気の原因を刃物で囲んだ。だが、そこには誰もいなかった。戦場で培った勘が外れた…?朱雀は首を傾げながら能力を解除。だが、今はまだ殺し合いの時間帯。誰かが朱雀を狙っていても可笑しくはない。朱雀は周囲に鋭い視線を走らせ、警戒しながら自室へと急いだ。


朱雀の後ろの廊下の角。壁に背をつけたその一人は、口角を上げて、不気味に嗤った。片手に持っていた試験管を指でキィンと弾く。すると試験管の中を満たしていた液体がほのかに明るく輝いた。それを掲げて下から見る。そして、再び嗤った。


…*…*…


場所は変わり、匡華と村正が住んでいた世界〈シャドウ・エデン〉。時はいつか、分からない。だがこちらでも、『異世界案内人』を通じて世界が一つ消滅したと云う情報が入っていた。どの世界かは不明だが、人々は次は自分の世界ではないかと恐れている。最強に相応しい代表者を送ったにも関わらず、恐怖が心を支配する。それは例にも紛れず、伽爛もだった。だが、彼の場合、異なる事があった。それは代表者あのふたりを信じている事だった。


そんな伽爛は仕事をほったらかして、匡華から聞いていた場所にいた。仕事をほったらかした事に内心びくついているが、そうも言ってられない。彼らの味方きょうはんしゃとして、彼らの事を知っておかなくてはならない。

目の前に建つ普通の家。森の奥にポツンと静かに建っている家が匡華から聞いた「仲間」の居場所。

伽爛は深呼吸をして、心を落ち着かせると扉をノックした。暫くして扉が開かれた。中から出てきたのは伽爛よりも背が低く、顔の左半分を布で隠した少年だった。少年は伽爛を見上げ、納得したかのように中にいる誰かに向かって、彼を見上げたまま叫んだ。逃げないようにか、はたまた警戒か。片目しか合わない視線に伽爛は一瞬、恐怖を感じた。


「兄貴、来たぜ」

「嗚呼、分かった。入れてあげて」

「応」


少年にしては低い声と、中から響く柔らかい中性的な声。伽爛は少年に連れられて家の中に入った。


「っ?!これは?!」

「驚いた?」


中に入るとそこは、天井も床も壁も満天の星空だった。自分が星空の中に立っているのか…いや、そもそも此処は何処なのか、錯覚に陥る。伽爛はアワアワと慌てていたが、職業病で能力を使ってしまった。途端、目を通して入ってくる情報に逆に冷静さを取り戻し、再び目を丸くした。


「……能力での…星空?」

「正解。正確には、ただの暇潰しの星空だけどね」


シュゥウウ…気の抜けるような音と共に星空が消えていく。そして現れたのは普通の家の天井、壁、床。だが、暗く、暗闇のようだ。伽爛が声をした方を見ると先程の少年と青年が立っていた。青年の手には先程の星空が球体となって浮いている。伽爛は能力を使って彼らを見ようとし……やめた。能力を解除して彼らに向き直る。


「きみが、匡華と村正を選び、味方きょうはんしゃとなった『異世界案内人』?」

「ええ。伊達 伽爛と申します…失礼ですが、業務用は外させてもらうよ」


青年の問いに答えながら伽爛の脳内は急転回していた。既に、伽爛じぶんが味方となっていると知っている。代表者を選んだ『異世界案内人』の名前は公表されないし、ましてやあの会話は秘密。どうやって知ったのか。もしや、村正くん?……そこまで考えて、伽爛は納得した。嗚呼、違う。彼らは柔い繋がりじゃない。強い繋がりで結ばれた仲間だから。だから、加護夜くんと村正くんは伝えたんだ。私を試すかのように。


「で、何の用かな?」

「……教えて欲しいんだ」

「何を?」


にっこりと、相手に親しみを与えるような笑みを浮かべる青年。だが、その笑みは仮面だ。伽爛を見定めているのを悟られまいとする仮面ニセモノである。その隣で顔の左半分を布で隠した少年は無表情でその成り行きを窺っている。伽爛は滲み出る汗をそのままに、決意を固めた。


「君達の仲間について。味方きょうはんしゃとして、彼らを知っておかなくてはいけない。それが、私が此処に来た理由だ」


静まり返った空間。伽爛は真剣な表情で二人を見ている。すると、少年が顎に手を当て、小さくクスクスと笑いだした。顎に当てた指の爪が黒く塗られているためか、その姿は妖艶である。伽爛が少々不安げに彼を見やると、彼の片目と合った。途端、村正から殺気を放たれた時と同じ恐怖が伽爛を襲った。嗚呼、彼らは、同類だ。


「教えて欲しい?何を無責任な。アンタに、村正にいさんの何がわかんだよ。アンタに、匡華の何がわかんだよ。味方きょうはんしゃになったってくらいで、こっちに干渉してくんなっっ!!」


怒りと、憎悪に満ちた表情と声色で少年は叫び、伽爛を睨み付けた。そんな事、伽爛自身も分かっていた。けれど


「君達がそう思うのはごもっとも。けれど、私は知りたいんだよ。代表者となって戦闘に身を投じた二人を。光と影のように支え合うあの二人が持つその意味を。私は知りたいんだよ、仲間として」


その言葉に少年は面食らったように目をぱちくりさせていた。すると、その少年の肩を掴み、青年が前に歩み出た。その顔に仮面はついていない。その事実が、伽爛を別の恐怖に陥れる。冷たい瞳が、伽爛を貫く。青年は言う。


「……良いよ。教えてあげる。けれど、もし、きみが裏切るような真似をした場合」

「っ?!」


伽爛の首筋にいつの間にか当てられた刃物。暗い家の中、外から入ってくる光によって不気味に光る。


「きみを殺す」


ゴクリと伽爛は唾を飲み込んだ。その表情は、「覚悟はできている」と言わんばかりのものであった。その表情に青年は納得したのか刃物を納める。そして、にっこりと再び仮面をつけた。


「宜しい」


暗闇の中で、何かが蠢いた気がした。

久しぶりの伽爛さん。伽爛さんと一緒にいる二人も村正と同じように刀の名前(というよりも通称)ですが(持ってるのも村正と同じように同じ名前の刀。ややこしくなった(笑))、まだ秘密です。(キーワードに入れたらただのネタバレなんだ…)

長文失礼しました

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