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モノクロの蝶  作者: Riviy
プロローグ
2/153

第一ノ世界:『御告げ』



明るい日差しが差し込む部屋。その部屋にある机では、日光によって煌めく美しい白銀の髪を持つ人物がなにかをしていた。顔は中性的で女性か男性か判断が難しい。その人物は椅子に寄りかかり、背筋を伸ばす。伸びと一緒に欠伸もしたせいで目尻に涙が溜まる。その涙を指先で拭った、ちょうどその時、


「だから、入るなって言ってるでしょう?!」

「頼むって!!代表者の条件に当てはまってるのが君の友人だけなんだ!」

「それでも、此処に入る事は断じて許しませんから!」


廊下から言い争う声が聞こえてきた。人物はなんだ、と立ち上がり、扉の取っ手に手をかけ、引いた。途端に雪崩れ込んで来たのはスーツに身を包んだ男性だった。オールバックにされた髪は先程の言い争いでか、少々乱れていた。その男性の背後、部屋の前には妖艶な雰囲気を持つ青年が立っていた。彼は人物に申し訳なさそうに頭を下げた。


「すみません、今すぐ連れ出します」

「ちょっ!?待てって、おい!」


青年は転がっている男性の首根っこを掴んで部屋から引き摺り出そうとすると彼は慌てたように部屋の中へと逃げ込む。読めてる、と言わんばかりに青年は部屋へと逃げ込もうとする男性の前に素早い動きで回り込む。その動きは、目で追ないほど、速かった。それを見た男性は「嘘、だろ…」と唖然して呟いた。青年は彼の目の前で両手を両腰に当てて呆れたように首を傾ける。青年が手を伸ばした、その時、人物が声を発した。


「待って。話しくらい聞こうじゃないか」


凜と響く、聞く者の耳に心地好い声が青年の手を遮る。青年は人物の言葉に、少し不機嫌そうに顔をしかめながらも了解したようで彼の前から動き、バタンと乱暴に扉を閉めた。唖然とする男性の前を通って人物は、部屋の中央に置かれた、向き合う二つの二人掛けのソファーとテーブルへと向かい、片方のソファーに腰かけた。男性はゆっくりと起き上がりながら、人物に「え?」と云うように視線を向ける。


「……早く、席に着きなさい。でなければ……」

「は、はいっ!」


背後から漂う凄まじい殺気に男性は慌てて立ち上がると人物の反対側のソファーに滑り込むように座った。オールバックの髪が追加された凄まじい動きによって余計に乱れたが、彼にはそんな事を気にする余裕がなかった。男性は人物の傍らに立つ青年と人物を深呼吸をして、落ち着きながら横目に見やる。何も話さないところを見るとこちらが話し始めるのを待ってくれているようだ。男性はそれをありがたく思いながら深呼吸を繰り返す。目の前の二人は対照的な色合いの髪を持ち、対照的な雰囲気を持ち合わせていた。彼らに、頭の先から靴の爪先まで舐めるように視線を走らせた。が、青年に鋭い殺気を向けられ、男性は「ゲフンゲフン」と視線をあからさまに外して咳払いをすると、ポンと膝に手を置いて叩く。と、男性は話し始めた。


「私は異世界通訳株式会社から派遣された『異世界案内人』と申します。先週の『御告げ』は、ご存知ですね?」


業務用の口調になって、男性が言う。人物は「知っている」と言うように頷いた。


「『御告げ』により伝えられた条件に当てはまるのが君なんです」


『御告げ』、それは創造神が11つにわかれた世界全てに送ったある意味、滅亡へのカウントダウンだった。創造神、神様は11つにわかれた世界の『異世界案内人』ーわかれた世界同士を繋げる会社より派遣された、とある能力保持者の事だーを通じ、全ての人々に『御告げ』の内容を伝えた。


「最後の一つになるまで戦え。異論は認めない。自分達が得た能力で殺し合え」


遥か昔、世界は、一つから11つにわかれた。わかれた11の各世界は、新しく産み出されていく命に魔法などの能力を与えた。そのため、現在、11つの世界の全ての人口を合わせて、約数千億人があらゆる能力を持つ保持者となっている。それが神様には我慢ならなかったらしく、各世界から条件が合う代表者を集い、神様が創った専用の世界、通称〈闘技場〉で戦わせると云う。代表者が死ねば、その世界は神様により消滅させられる。そうやって最後の一つになるまで減らしていく。『御告げ』を聞き、人々は恐怖にかられた。もし、その条件に当てはまる代表者が死んでしまえば、自分も死ぬ。自分の命を代表者に預けるのだ。神様は、代表者の誘導、及び発表は『異世界案内人』に一任すると云う。


そして、その条件だが、それを聞いた全ての人々が絶望し、希望を見いだした。


条件その一・「能力を二つ保持、または身体能力がずば抜けている者」

条件その二・「その世界で最弱ではない事、最強または最強に近しい者」

条件その三・「少なからず戦闘経験、または殺傷経験がある者」

追加項目・「能力により誕生し、代表者に付き従う者は代表者としてカウントせず」


条件その三を抜かせば、神様は、そんなに早く世界を消滅する気はないと云うことが読み取れ、希望が湧いたのだ。だが、逆に、それだけの者がいるのか、と云う不安やそれだけの者が集まったらすぐに終わってしまうのではないか、と云う不安もあった。


「全ての条件が合う人を探したところ、この世界では君のみが当てはまりました。お願いです!代表者として、戦闘に参加してくれませんかっ!?」


男性がテーブルに額をぶつける勢いで頭を下げる。その様子に青年は煩わしそうに、視線を送った。が、当の本人である人物はうむ、と考え込むと「頭を上げて貰ってもいいかな?」と頭をあげるよう促した。男性は青年が放つ殺気にびくつきながらも、頭を上げた。オールバックで体格も良いのに、それほどまでに青年の殺気は恐ろしいらしい。青ざめた顔で二人を見る男性に、人物は問う。


「私しか、当てはまる人がいなかったのは理解出来た。引き受けよう」

「本当かい?!」

「は!?」


人物の言葉に喜ぶ男性と驚愕の声を上げながらも呆れたように天井を仰ぐ青年。だが、その青年の表情は、「こうなると分かっていた」と言わんばかりの笑みだった。


「ただし」


人物が喜ぶ男性の声を遮る。人物自身、条件があるらしい。男性は喜びながらも背筋を正し、その言葉を聞く姿勢を取る。人物は青年を顎で示しながら言う。


「彼も、連れていく」

「え?!え、えぇえと……」


人物の条件に男性が驚愕し、狼狽えながら視線をあちらこちらに動かす。男性が驚愕するのも無理はない。追加項目には「能力により誕生した者は代表者としてカウントしない」とあるが、見る限り……いや、能力で鑑定した限り、青年は人物の能力で誕生した者ではない。「友人」と云うカテゴリーに入っている。つまり、その条件は、飲めない。


「申し訳ないんですが…彼は君の友人ですよね?でしたら、追加項目の範囲外です……」


青年の殺気が凄まじく、男性はオドオドしながらそう言った。人物は、うむと考えて込むと青年を呼んだ。そして二人は、男性に聞こえないほどの小声で何か言い合う。その会話が、なにやら恐ろしい事を言っているように男性は感じてならなかった。青年が曲げていた腰を戻し、再び、姿勢を正して立つ。人物が男性を見る。その瞳に全てを見透かされているように、感じる。これが、神様が出した条件に当てはまる人物か。

人物は男性の答えにクスリと妖艶に笑った。首を傾げる男性に人物は言い放つ。


「それなら、問題ない」

「は?」


すっとんきょうな声が男性の口から出た。この人は何を言っているんだ?男性の頭の中で、高速で思考が回り出す。この人は、神様にでも逆らう気か?どういう事だ?男性は、人物と青年の考えが読み取れず、思わず、能力を使った。


「(『鑑定』・対象:人物、開始)」


キュィイインと云う起動音が男性の耳にだけ響く。男性の視界が緑色に染まり、視界に入っている二人から情報が書かれた吹き出しが現れる。しかし、そこには


「っっ」


何も書かれていなかった。驚いて、反射的に上体を反らした。青年がその動きを見て、クスリと口元を押さえて妖艶に笑う。それに何故か、悪寒が走った男性は能力を解除しながら、人物と青年を見た。人物はコテンと首を傾げながら、言った。


「何か情報は手に入った?」

「!?」


能力を使った事を分かっていた?!いや、あの音は男性にしか聞こえていない。男性は凄まじい勢いで考えを巡らせる。が、諦めたかのように肩を落とした。


「何で、分かったんです?」


素直に疑問を問うと人物はクスリと笑って、その問いに答えた。


「能力、と云えば……貴方は納得出来るのかい?」

「ええ、まぁ」


人物の問いに男性は即答した。その速さに人物は驚いたようで目を丸くした。その後、小さく笑った。その笑みがとても柔らかく、男性には肯定したように思えた。


「まぁ、能力、と言ってもいいだろうね。それで、条件が飲めない、だったね。大丈夫、誰にも情報が漏れないようになっている。情報が読み取れないのは大体が能力により誕生した者。これならば、目眩ましは完璧だ」


クスクスと愉しそうに笑う人物と青年。男性は納得よりも不安の方が勝っていた。もし、それが創造神である神様にでもバレたりしたら……この世界は、どうなる?

男性の不安を感じ取ったのか、青年がクスリと口元を押さえて笑った。その動作の後、青年は自信満々に答えた。



物語の性質上、世界=異世界で書いていたようです(笑)設定と云うことで覚えておいてくださいな。

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