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モノクロの蝶  作者: Riviy
第一章:毒入りお菓子のハッピーエンド
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第十三ノ世界:二回戦~魔法に踊る二輪の華~


その翌日。食事を終えた匡華達は広間を出た。


「村正」

「はい、分かっています……鳳嶺、次、右です」

「了解。千早」

「ええ、分かったわ」


背後から漂う殺気。後ろを見なくてもヘレーナと双子だと分かる。何故だろう。一度、闘ったからだろうか。村正が千早の手を引いている鳳嶺に小声で指示を出す。右に曲がった一行を後ろからついてくるヘレーナ達が追う。視線だけで匡華と村正が会話する。青白い壁と床の廊下、壁には蝋燭が取り付けられ、仄かに彼らの行く末を明るく照らす。この廊下の先には昨日、確認した闘技場がある。神様が自分がいない時に勝手に出来るようにと至るところに設置したらしい。だが、こちらは、そちらに着く前に攻撃しても良かった。何故なら、ヘレーナから漂う殺気は、昨日よりも凄まじかったからだ。


ジリ。誰の音か。そんな音が廊下に異様に大きく、反響した。途端、鳳嶺が千早の手を離し、懐から拳銃を取り出しながら背後を振り返った。千早の足元から『闇』の靄が立ち昇る。振り返った鳳嶺が放った銃弾はヘンゼルの大盾に防がれて、ガキィンと甲高い音を上げて起動が逸れた。振り下ろされる大盾を武器を抜き放った匡華と村正が刃同士を交差させて防ぐと、力いっぱい押し返した。ヘンゼルは大盾を持ったまま、クルンと空中で一回転しながらヘレーナとグレーテルの元へと舞い戻る。ヘレーナはあの魔女姿、グレーテルの背後には炎の球体が所狭しと並んでいた。少々広い廊下で向かい合う両者。シーンと静まり返った空間に、遠くから、殺し合い開始時間を告げる鐘の音が響き渡り、続いて、殺し合いを始めた代表者達の音が響く。


「じゃあ、あたしたちも始めよっか~今度こそ……うんん、絶対に殺してあげるよ千早おねえちゃん!」


ヘレーナが、にっこりと笑って微笑んだ。その笑みは、可愛らしい。その言葉に、今回の対戦相手ターゲットである千早は、口元を隠して優雅に笑った。『闇』を司る靄が羽衣ものように彼女にまとわる。


「それでは、二回戦と行きましょう?私も、手加減はしないで行くわよ」


スゥと、白濁した目を細めて千早が言う。それが、合図だった。両者、武器を構え、相手に向かって跳躍した。


…*…*…


匡華は千早とすれ違いながら、ヘレーナに向かって素早くかける。壁を右左と蹴って飛びながらヘレーナに向かって小太刀を振り下ろした。それをヘレーナは何処からともなく取り出した包丁を平行にして防ぐ。と、そんな二人の背後に音もなく回り込んだ千早が『闇』を操る。彼女にまとっていた靄が無数の刃物のようになり、千早の右腕付近に漂う。右腕をバッと振りながら千早が後退する。匡華がその無数の刃物に横目で察し、ヘレーナの包丁を弾きながら後ろに向かって跳躍。突然、防いでいたものがなくなり、前のめりになりヘレーナに『闇』の刃が襲う。が、ヘレーナは包丁を持っていない手をスゥと横に引きながら、後退する。すると手を引いたところにクッキーの壁が作られ、刃はそこにグサグサッと音を立てて突き刺さり、消えていく。千早は悔しそうに唇を噛み締める。匡華が後退し、壁際に追い詰められたヘレーナに向かって跳躍し、上段から小太刀を振り下ろした。それを右肩を犠牲にしてまでヘレーナは防ぐ。それに驚く匡華に向かって、ヘレーナが放つ。


「行っくよ~!」


左の人差し指を匡華に向けるヘレーナ。匡華は何か来ると感じ取り、小太刀を引いて後退しようとするが、右肩に食い込んだ刃をヘレーナが掴んだ。そのため、匡華は、ヘレーナの左の人差し指から放たれた、黄色の熱い攻撃を真に受けた。体の中から、焦げていくような痛みに匡華は身を捩らせる。


「匡華さん!」


ズバッと、二人の間に『闇』の刃物が突き刺さった。ヘレーナがその刃物から逃れながら、こちらに『闇』の鎖を放つ千早に向かって、壁を蹴って跳躍した。


「っ、千早!そっちに行ったぞ!」

「分かってるわ!」


壁に手を付きながら、態勢を立て直す匡華が悲痛な声で叫ぶ。その体からは、黒い煙が微かに上がっている。千早は聴覚でヘレーナの武器が包丁と、片手に魔法で作ったであろう棒付きキャンディーがモチーフの大きな剣を持っている事に気づく。両腕を前に突き出し、クロスさせてこちらに迫るヘレーナに向かって鎖を放つ。ジャララ、と鎖同士が擦れる音が響く。ヘレーナは自分を襲う鎖を包丁と剣で防ぐ。右肩に負担をかけぬよう、鎖が巻き付いた包丁と剣を思いっきり、自分の方へ引いた。途端、鎖が手首に巻き付いているような状態だった千早の体が引っ張られて前のめりになった。自分の服装は、動くには大変で、だから、支援を今していた。けれど。

『闇』の鎖を引きちぎり、ニィと口角を上げて迫るヘレーナ。千早の腹に剣が突き刺さった。血が千早の口から落ちる。ヘレーナがぐるりと剣を回す、が


「……え?」


そこに、千早はいなかった。いたのは、靄だけ。ヘレーナがまさかと思い、振り返ろうとしたその時、首筋に煌めく刃が当てられた。背後から肩で息をする音と血が滴る音がする。ヘレーナは目でその刃を見やった。それは、間違いなく『闇』であった。


「……ふふ、ごめんなさい。そろそろ本気、出そうと思って」

「それは~嬉しいな♪千早おねえちゃん!」


バッと包丁を振りながら千早を振り返る。包丁を仰け反って避ける千早とそのまま追撃を包丁で行おうとするヘレーナとの間に、壁を走って跳躍した匡華の小太刀が襲う。ヘレーナが剣で防ぐと共に、匡華の態勢を崩そうと包丁も振るが、匡華は着地するとしゃがんだ。そこに後退していた千早が紫と黒い色をした薙刀をヘレーナに向かって振る。それは左の脇腹に掠り、ヘレーナは悔しそうに唇を噛み締めながら後ろに向かって跳躍する。立ち上がった匡華が小太刀を手首で弄ぶと、パシッと取った。千早を見ると額から流れ出る血を拭いながら、薙刀を構えていた。


「平気?匡華さん」

「嗚呼、私はね。少し油断してしまったようだ」

「えぇ~?油断だったのあれぇ~?」


包丁を持った手の人差し指を口元に当てながら、ヘレーナが挑発気味に言う。それに匡華は軽く肩を竦めた。ムッとするヘレーナの背筋に悪寒が走った。隣にいた千早も驚いたように白濁した瞳を向ける。その悪寒を発した張本人である匡華は小太刀を構え、態勢を低くしていた。男か女か、声だけでも分からない匡華から美しくも、禍々しい陽炎が漂う。その陽炎は、殺気であって殺気ではない。では、なんだ?能力か?


「は、は……おもしろくなってきたんじゃな~い?」


ヘレーナがそう嗤って言った、次の瞬間。匡華がヘレーナの懐に迫っていた。まばたきする暇もないほどに、一瞬の出来事だった。ヘレーナが驚きながら、片足を引く。匡華が小太刀を振り上げ、彼女の手から包丁を弾いた。ビィンと鈍い音がして、包丁が天井に突き刺さった。


「え」


驚いたのは、ヘレーナのみならず千早みだった。突然の匡華の瞬発力に驚き、身動きが取れなかった。が、すぐさま匡華のように薙刀を持って駆けた。ヘレーナは驚いたように匡華を見やった。そして、薄い桃色が一瞬、別の色に染まったように見えて思わず身震いした。匡華が包丁を弾いた態勢のまま、ヘレーナに向かって上段斬りを放つ。ヘレーナは残った剣を平行にして防ぐ。が、重い一撃に、思わず息が出、犠牲にした右肩が傷んだ。匡華が能力を発動させたにしろ、こちらにも『魔女のうりょく』がある。ヘレーナがダランと垂れる右手に、魔法を籠める。炎の球体に気配と微かな音で気づいた千早はそれ目掛けて薙刀を振った。突然、匡華が足を捻り、一回転しながらヘレーナの剣を弾く。ヘレーナは驚きながらも少し大きい炎の球体をこちらに向かって来る千早に、思いかけず、投げた。千早はそれを急停止して、薙刀で一刀両断。ヘレーナが千早に目を移した一瞬、匡華が消えた。


「?!何処?!」

「ふふ、こちらだ」

「!?」


いつの間にか、匡華は彼女の背後にいた。背後から漂う凄まじい恐れに、ヘレーナは剣を振りながら後退し、壁に片足をつけると力を入れ、跳躍。目と鼻の先にまで迫っていた闘技場の扉へ向かって飛んだ。バタンッ!と扉が開き、そこにヘレーナがゴロゴロと転がり込む。こちらにやってくる千早の薙刀に向かって色とりどりの飴玉を放つ。それは千早の体に当たるたびに毒を与える。千早は器用にかわしつつ、薙刀を振った。少しは当たったようで、所々の服が溶け、妖艶さが増している。服が溶けた箇所には傷がついているものもあり、毒攻撃は効いているようだ。千早の薙刀をゴロリと転がって避け、ヘレーナは立ち上がる。ガキン、と薙刀の刃が硬い床に当たり、異様に大きく音が響いた。ちょうどそこへ、少し遅れて匡華もやって来た。三人が入った闘技場は観客席の上の辺りに大きな王冠とティアラが向かい合うように四方向に設置されていた。ヘレーナはキャンディーの剣を持ったまま、肩で息を吐きつつ、


「魔方陣・展開」


両腕を広げる。その足元に紫色の魔方陣が広がり、その陣は匡華と千早の足元付近にまで迫った。ヘレーナの足元に展開された魔方陣は、紫色の光となり、ヘレーナの背後に漂う。光が大きな包丁や泡立て器などの調理器具に変貌し、ヘレーナの背後に浮かぶ。それを見て、匡華と千早は武器を構えた。


「さあ、あっそびましょ~♪」


愉快そうに、キャンディーの剣を可愛らしく頬に当てて言った。匡華が千早に片手を出すと、彼女は匡華の手をキョトンと見たが、恐る恐るその手を叩いた。匡華はそんな千早の行動がこんな時なのに和んでしまい、クスリと笑ってしまった。匡華は小太刀を構えて、言う。


「行こう、千早」

「ええ、行きましょう?匡華さん」


両者、睨み合い、敵に向かって大きく跳躍した。

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