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モノクロの蝶  作者: Riviy
第一章:毒入りお菓子のハッピーエンド
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第十二ノ世界:渦巻く毒の色


ある闘技場の観客席。その観客席にいるのはある二人の代表者。彼らが見ているのは殺し合いである。殺し合いは女性二人の闘いであった。モチーフにされた世界はよく分からないが、空が真っ黒で夜らしいと云うことは分かった。だが、その空は数分毎に明るくなっており、昼と夜を繰り返している。よく見ると観客席には旗が掲げられていた。


ガキン、と闘技場の真ん中で刃同士が交差する。女性同士であるにも関わらず、その太刀裁きは重いの一言だった。片方の女性が相手に何か叫んでいるが、相手にされていないようだ。神様はいない。別の殺し合いの審判に行っているようだ。一人が言う。


「もう少し、か」


と。その言葉を聞いただけではどういう意味か理解は出来ない。だが、もう一人は理解出来たらしく、共謀する相手に向かって口角を上げて嗤ってみせた。そして、二人はそこから、忽然と消えた。殺し合いをしていた女性達は、二人がいたことも、消えたことも気づかずに、殺気を漂わせながら殺し合いを続けていた。


…*…*…


突然の事に、ヘレーナも双子も動きを止めた。侵入者は一直線にヘレーナに向かうと、その首を掴み上げ、キングサイズのベッド付近の壁に叩きつけた。


「っっ」

「「愛し子!!」」


双子が驚愕し、憎しみがこもった瞳で侵入者に襲いかかろうとする。が、侵入者はその双子を一瞥した。「した」だけだったのだが。


「え、ええええええ!!??」

「どうなって……!?」


双子は、ヘンゼルとグレーテルの足はヘレーナと侵入者ではなく、片割れへと向かう。能力なのか。足に力をいれてもびくともせずに、片割れへと足は双子の意思に反して動く。そして、双子の指がいつものように絡まった。途端、バチバチッ!と双子の間に火花が散った。ヘレーナからは見えなかったが、双子の体には電気が流れたようでビクッと体が震え、目が白目を向いた。双子から黒い煙が小さく上がる。双子は片割れに寄りかかるように座り込んだ。


「ヘンゼル!グレーテル!」


双子を心配し、首を絞められた状態のまま、悲痛な声をあげるヘレーナ。だが、そこで気づく。双子は「気を失っていない」。気絶したならば、すでに戻っているはず。なのに戻らないのは気絶しておらず、振りをしているということ。侵入者は、それに気づいていない。キッと侵入者を憎々しげに睨み付けるヘレーナ。それに侵入者も憎々しげに彼女を睨み返した。


「よくもこの茉亞羅まあら様に毒を盛ったわね?例え違う相手を狙っていたにしろ、この茉亞羅様に毒を盛った事は事実。アンタの死を持って償いなさいっっ!!」

「っうあ!?」


侵入者の首を絞める力が強くなる。片手だった力は、ヘレーナに向けた憎悪と怒りで両手となる。ヘレーナはその手を退けたくても退けれないし、外せない。両腕が使えない以上、ヘレーナにはなにも出来ない。絞められていく首に、意識が薄れていく。

こんな死に方はしたくなかった…せめて、千早おねえちゃんと闘って、勝って……


「…………」


手をどかさない彼女を不審に思ったのか、侵入者は訝しげな表情でヘレーナを見た。そして、怪我をし、動かない両腕を見つけた。


「……はぁ、やーめたっ」

「ゲホ、ゲホゲホッッ!」


壊れた玩具を投げ出すように侵入者は少々乱暴にヘレーナの首から手を離した。途端、ヘレーナは床に座り込み、流れ込んで来た空気に咳き込む。ゲホゲホと、苦しそうに咳き込みながらも、動かない腕。ヘレーナが動かそうとするたびに激痛が走る。と、そんな彼女の背を擦る手があった。ビクリ、と体が跳ねた。双子はまだ振りをしている。それは気配でわかる。なら今、あたしの背中を撫でてるのって……

バッとヘレーナが顔を勢い良くあげるとそこにいたのは先程までの憎悪に埋もれた侵入者ではない。美しくも、可愛らしい少女だった。ヘレーナと同じ高さになってしゃがんでいる少女は、ヘレーナに向かって笑いかけながら、痛むであろう両腕の傷も優しく撫でる。ヘレーナは先程の侵入者と本当に同一人物なのだろうかと、驚愕していた。そんなヘレーナの疑問に気づいたのか、少女は笑って言う。


「怪我してる代表者を殺すなんて茉亞羅様らしくないわ。すぐに終わってしまうじゃないの。それに、絞殺なんて、茉亞羅様の方法じゃない……対戦相手もいるようだし……ふふふ、悪かったわね」


そう言って少女は服のポケットに手を入れると緑の小さな袋を取り出した。そしてその袋を破ると、黄緑色の飴が姿を表した。それをヘレーナの口に無理やり押し込む。ヘレーナがくぐもった声をあげる。が、口の中で転がる飴が害なしと分かったのか、コロコロと舐める。飴を舐めていると内側から両腕の傷が癒えていく感覚に襲われる。少し痛いが、癒されていくのは確かだ。なんで、敵である代表者に、毒を盛った代表者に


「こんなことを…?」


思わず出た問いに少女はキョトンとしたようだったが、「さっきも言ったわ」と理由は先程と同じだと主張した。今度はヘレーナが訝しげな表情で少女を見上げた。首を絞められはしたが、甘いこの飴を持っていた彼女は悪い人ではない。培われた勘がヘレーナにそう叫んでいる。疑問は山ほどある。なのに、癒えていく傷の痛みに、声が出ない。少女の、前から知っているような笑みに、声が出ない。

少女は、キョトンと考えるヘレーナの頬を愛おしげに撫でると、小さく笑う。


「理由ねぇ……アンタが欲しくなったから、よ。この茉亞羅様にそう思わせたのよ?喜びなさい!」

「え、ええと…」

「本当、トロい子ね。まぁ良いわ、特別に細かく教えてあげる」


少女はいまだに訝しげな表情のヘレーナが気に食わなかったのか、その美しくも可愛らしい顔を歪めて愉快そうに喋り出す。少女はチラリと、横目でジリジリと動きつつある双子も見ていた。


「両腕の怪我は誰かと対戦中と云うことの証。茉亞羅様がアンタを助けた理由は欲しいから……友人として、ね」

「!!」


見開かれるヘレーナの瞳。少女はクスクスとその表情を見て笑う。ヘレーナは嬉しさと驚きで表情と感情がごちゃごちゃになっていた。お友達は欲しい。けれど、標的違いとはいえ、毒を盛ったし、その反対に殺されそうにもなった。どうすれば良いの?双子をチラッと見ると双子も驚いた様子で顔を見合わせていた。少女は「ま、さっさとして欲しいところだけど」と立ち上がり、可愛らしくヘレーナに笑いかける。


「アンタの対戦が終わったら、友人になりに来るわ。アンタに拒否権はないわよ?」

「………ふふふ、ふふふ、ふふふ、アハハハハハハッッッッ!!!」


突然、笑い出したヘレーナに少女は驚いたように目をぱちくりさせた。少女にソロリソロリと近づいて来ていた双子が、ヘレーナが満面の笑みで顔を上げた途端に少女に飛び付いた。突然の笑いと双子の抱擁に少女はビクリと体を固くした。ヘンゼルは少女の右腕を、グレーテルは少女の腰に手を回して抱きついている。少女は驚きつつも、嫌がってはいなさそうだった。それよりも満足げに微笑んでいる。それは、ヘレーナの心情が手に取るように分かったから、かもしれない。

少女の言葉が本当とは限らない。けれど、ヘレーナは、あたしは、


「いいよ~お姉ちゃん。あたしもきみがいいな~ねぇ、ヘンゼル、グレーテル」

「ぼくも!」

「わたしも!」


双子が少女を見上げながら言う。三人の答えに、少女は嬉しそうに口角を上げた。


今、ヘレーナ達と少女は小さい絆で結ばれた。


少女は、抱きついているヘンゼルとグレーテルの頭を優しく撫でると、ヘレーナに向かって言い放った。


「なら、さっさと勝って来なさいっ!」

「アハッ♪お菓子詰め込んじゃうぞ♪」



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