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モノクロの蝶  作者: Riviy
第一章:毒入りお菓子のハッピーエンド
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第十一ノ世界:傀儡になった人形


匡華達は、ヘレーナが退散したのを良いことに神様によって元の広間に戻された。広間では、毒で苦しんでいた代表者達の姿がなく、神様が意気揚々と抑揚のない鼻歌を歌いながらいなくなったところを見るに殺し合いを始めたのだろう。

匡華達はそのまま、千早が云う情報を求めて、彼女達の部屋へと行くことにした。


「こちらでいいのかい?」

「ええ。私が使った洗面所よ」


彼女達の部屋に入り、二つある扉のうち右の扉を指差せば、鳳嶺に「右」と教えられた千早が答えた。匡華と村正がその扉を開け放ち、中に入る。鳳嶺に連れられた千早がゆっくりとした足取りで続く。風呂場はユニットバスのようで千早の云う通り、洗面所の鏡にうねうねとしたミミズ文字が浮かんでいる。村正がそれに近づく。


「なんて書いてあるんだ?」

「嗚呼、千早のためにも声に出さなくてはなりませんねぇ鳳嶺」


悪戯っ子のように笑いながら鳳嶺を振り返る村正。それに鳳嶺が「分かってるなら早く」と千早の手を取っていない方の手で促す。村正はそれにまた笑い、同じく小さく笑っていた匡華に軽く頭を下げて、その情報を読み始める。


「世界:〈戦国乱闘せんごくらんとう〉 異名:『雪に埋もれた四姉弟の愛』 代表者:沙雪さゆき 能力:『粉雪』、『六道・六の獄』……誰の事でしょう?」


読み終わり、村正が首を傾げて云う。千早と鳳嶺も首を傾げている。匡華はなんとなく、誰だが分かっていた。ので、軽く手を挙げた。それに気づいた鳳嶺が訝しげな顔で問った。


「どうしたんだ?」

「その鏡にあった情報の彼女、多分だがあの女性じゃないかい?」

「あの?誰のこと?匡華さん」

「嗚呼、あの女性ですか」

「「???」」


匡華の言葉に村正は分かったのか、両腕を組んで近くの壁に寄りかかって妖艶に笑う。だが、千早と鳳嶺は分かっていないのか二人で顔を見合わせている。それに気づいた匡華が千早の頭を優しく撫で、村正が愉快そうに笑った。とりあえず、撫でてもらったことが恥ずかしくて嬉しいのか、千早は頬をピンク色に染めた。それを見た鳳嶺が軽く息を吐き、あきれたように肩を竦めた。


「で、結局誰なんだ?」

「初日に凄まじい畏れを放っていた女性ですよ。ほら、あの」

「嗚呼!あの人ね!私、あの人ともお友達になりたかったんだけど、鳳嶺に止められちゃって」


ジィーと千早が鳳嶺に「なんで?」と云う視線を送ったが、彼は知らん顔でそっぽを向いている。それに少し呆れながらも村正が言う。


「とりあえず、あの女性は情報があっても後回しの方が良いでしょう。予想ですが、彼女は強い。今、闘いを挑んだら、最悪死にます」

「村正に、私も同意だ。二人は……ってまだやっていたのか」


情報の内容すらも無造作なのだから、能力名が分かっただけでもどちらかと云うと幸福だと思った方が良い。

匡華が千早と鳳嶺に確認をあおぐといまだに二人は視線を逸らす大会をしていた。匡華の「おーい」と云う小さな声を拾った千早がハッと二人を振り返りながら、「ごめんなさい」と恥ずかしそうに頭を下げた。鳳嶺は取っている千早の手を軽く握りながら、軽く頭を下げた。


「そうね、私も同意よ」

「同じく俺も。決まったら、掠り傷の手当てでもしない?怪我してないとは限らないだろ?」

「って、えええええ。鳳嶺?!」


この話は終わり!と言わんばかりに鳳嶺が千早の手を引いてお風呂場を出ていく。それに千早が慌てたように連れられて行く。鳳嶺の耳の先っぽが少し赤い事に気づいた村正は、匡華の肩をツンツン、と突っついた。匡華も村正のように出ていく二人を見やり、二人は顔を見合わせて小さく笑った。なんだかんだ、互いを思いやっている二人だ。本当に、一緒にいて飽きないし、楽しい。


「匡華さーん!」

「村正も早く来いよ!」


部屋の方からガタガタと、特効薬を探す音と二人を呼ぶ声がした。村正が鳳嶺の真似か、匡華に向かって片手を出した。匡華が驚いて彼を見上げると悪戯っ子のように片目を閉じた村正が笑っていた。クスリ、と匡華は笑い、ありがたくその手に自分の手を重ねた。村正が匡華が本当にやるとは思っていなかったらしく、ビクッとした。が、小さく笑って匡華をエスコートした。部屋に現れた千早と鳳嶺の真似をした匡華と村正に、千早は「可愛らしい!」と叫び、鳳嶺が「おい」と呆れとも照れとも取れるような叫びと表情をしたのは数秒後の話。


…*…*…


ある一室。本のページのようなものが部屋の中央で展開される。ページのようなものは天井に消えていくとそこにいたのは両腕を怪我したヘレーナ。ヘレーナは痛みで息を荒くしながら、キングサイズのベッドに近づく。痛む右腕を懸命に動かし、枕を掴み、後方に投げ飛ばす。枕の下には小瓶が一つ。それがあることにヘレーナは、ホッと胸を撫で下ろす。小瓶の中身は黄緑色で、豪華な飾りは一切ない。一見すればただの小瓶。だが、違う。この小瓶は神様が用意した特効薬であった。ヘレーナはこの部屋で過ごすことを決めた時からこの特効薬を探しまくった。そして、見つけたのがこの一つである。もう数個は見つからない場所に隠している。ヘレーナがベッドに勢い良く座り込む。ベッドが大きくバウンドし、ボフンと悲鳴をあげる。両腕を動かすと、鋭い痛みがヘレーナを襲うため、特効薬を飲むのは難しい。ヘレーナは「気絶したために戻った」双子に優しく声をかけた。


「ヘンゼル、グレーテル」


その声に反応したようで、ヘレーナの前に先程と同じページのようなものが何処からともなく現れ、渦を巻いた。ページが赤い、ふわふわな絨毯が敷かれた床に全て落ちた。ページはゆっくりと透明になって行き、消える。そんなページの渦の中央にいるのはヘレーナの能力、『ヘンゼルとグレーテル』。双子は片手を仲良く繋いでおり、指と指とを絡ませている。先程負ったような、ヘレーナのような大怪我はすでになかった。双子はヘレーナに向かって無邪気に、にっこりと笑いかけながら交互に言う。


「"久しぶり"、愛し子」

「"今回"は、なんのご用~?」


双子の言った言葉に、ヘレーナの顔が歪む。それに双子は気づかない。いや、「気づいていながらも、彼女のためと蓋をする」。能力『ヘンゼルとグレーテル』はヘレーナの力不足か、はたまた双子の力不足か否や、双子が「気絶し、戻った」際、記憶がリセットされるようになっている。ヘレーナ自身が望んで戻した時は記憶がリセットされないのだが、「気絶し、戻った」際は負った怪我を治すためか記憶がリセットされる。それに双子も気づいている。だが、いくら思い出そうとしても靄がかかって無駄なのだ。それは、ヘレーナもよくわかっている。けれど、それでも自分のせいではないかと、心の隅で年相応に思ってしまうのだ。

ヘレーナは歪んだ笑みを繕いながら、痛む両腕を双子に見せる。双子は、ワッと慌てたようにヘレーナに近寄ると「大丈夫?」「痛い?」と彼女を労る。例え、記憶をリセットされても、双子は双子だと云うことをヘレーナは理解している。


「ごめんねぇ~いまあたし、こんなんだから~紅茶に特効薬混ぜて飲ませて?」

「りょうか~い!飲ませるって口移し?」

「んなわけないでしょグレーテル。スプーン」

「あ~そっかぁ~」


双子の無邪気な会話にヘレーナはクスクスと笑った。枕元にある特効薬の小瓶をヘンゼルが持つと部屋に設置されたキッチンへと向かう。片割れが準備中の間、もう片割れがヘレーナの相手をするようだ。言わなくても通じる双子に、ヘレーナは笑う。グレーテルがヘレーナの両腕を応急措置しようとベッドの下にあるタンスを引き出して「応急措置ボックス~♪」と鼻歌を歌いながら探し出す。その鼻歌に合わせて、キッチンにいるヘンゼルも鼻歌を歌っている。なんともよくハモる双子だ。ヘレーナは腕が痛いにも関わらず、双子のいつもの様子に笑ってしまった。負けて、二回戦に自分が持ち込んだのに。代表者なのに、弱いと思ってしまった自分に自信が戻ってくるようだった。

ヘレーナは今度こそは手に入れた情報を元に『盲目の一輪華』千早を倒そうと思った。毒を彼女に向けてやったのに、食べなかったのは驚いたし、彼女にお友達がいたことも驚いた。けれど、能力名は分かっている。『闇』と『ドリーム・シンドローム』だ。能力の内容はだいたい予想できている。ほとんどの攻撃、防御は『闇』で、盲目である彼女を支えているのが『ドリーム・シンドローム』、能力で誕生うまれた鳳嶺だろう。神様が用意した情報には、能力名までしか記載がなかった。神様にも、能力の内容まではわからなかったのだろうか。内容も無造作だが、だが教えてくれたって良いではないか。まぁ、先程の殺し合いでほぼ確定済みとなったが。そう神様へ文句を心中で言うと、ヘレーナは「匡華と村正が最大の壁」だと考え、両方を打倒するために傷が治るまで対策を練ることにした。その時。休息時間でもないのに部屋でゆっくりとしていたので、油断していた。ヘレーナと双子がいる部屋に素早い動きで侵入し、ヘレーナを攻撃してきた代表者がいた。



イエーイ、今スランプです(棒)

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