第九十三ノ世界:出現したのは、新たな
翌日。匡華は村正と共に朝食を摂りに来ていた。昨日、祢々切丸と蜘蛛切丸、そして伽爛に会い、話した事ーあの後、数時間話し込んだーで二人の心は幾分か軽くなり、真剣になった。他の代表者達は分からないが、少なからず、外部の情報は手に入った。やはり、代表者がいなくなった世界は消滅されていた。それは、敗北したから。殺されたから。何処か現実味を持っていなかったものが一気に現実味を帯びた気がした。
「?ねぇ匡華。一人、足りません」
「え?」
朝食を摂っている最中、村正が周りを見渡し、そう言った。匡華は怪訝そうに首を傾げると手に持っていた箸とお椀を置いた。そして、指で周りを軽く見ろと促す村正に示されて、周りを勘づかれないように見渡す。本日の朝食である和食を摂っている二人組の青年達に、畏れを放ちながらも優雅にお茶を飲んでいる女性。嗚呼、本当だ。一人足りない。匡華は何故か、と考えた。殺し合いに負けて死んでしまったと考えるのが妥当だが、亡くなる際に鳳嶺が二人に向かって言ったあの話が事実だとするとその可能性は低くなる。
「……いないのって、」
「ええ、恐らく。鳳嶺が言っていた少年です」
「どうしたんだろうねぇ」
「さあ…」
二人は声をひそめて話し合う。今は休息時間だが、この会話は大声でするようなものではない。しかし、考えていても答えは見つからない。もしかすると、寝坊しただけかもしれないし。そういうことってあるよね多分。そう思った二人はとりあえず、朝食を食べ終わってしまおうと箸を手に取った。そして、少なくなったこの殺伐とした空間から逃れるように戯いもない話をした。
だが、どうやら彼は寝坊と云うわけではなかったらしい。朝食を食べ終わったちょうどその時。突然、神様が空間の歪みから姿を現した。神様が現れた事で少年・アーギストが殺し合いによって死亡した可能性が大きくなった。いや、神様が告げるのは世界を消した事実のみ。よってアーギストは死んだのだろう。匡華と村正はそう思い、少し肩を落とした。落胆と云うよりは、軽く後悔が混じっていた。鳳嶺が言っていたあの話を直接聞きに行きたかったのだ。多分、相手は自分達が復讐心を燃やしているとでも思っているのだろうが、昨日何も行動を起こさなかった時点でその可能性はないと判断してくれたはずなのだ。あの聡明な少年の事だ。そこまで考えつかないほど馬鹿ではないはず。仕方なく、匡華も村正も自分達なりにあの話の真相を探るはめになってしまった。
だが、本当にあの話が事実だとして、彼は何をしたかったんだ?神様を騙す?自分の世界を救う?どれだけ考えてもその答えは出てこない。匡華は軽くため息をついて肩を落とした。神様は依然として立ったまま、何かを待っているように口を開かない。二人も怪訝そうに眉をひそめ、生き残っている代表者達もどうしたと怪訝そうにしている。
「どうしたんですかね」
「分からん……何か考えがあtt「お知らせがある」」
村正が匡華に聞いたその瞬間を狙ったように神様が口を開いた。何処かの世界を消滅した宣言ではないことに彼らに動揺と驚愕が走る。村正は万一に備えてか、殺気を放つ。が、それを匡華が腕で制止した。村正が驚いたように彼女を振り返った。
「(匡華?!何故ですか?!)」
「(村正、よく考えてみろ。今日の神様、昨日とは何かが違う。消滅宣言のみを言いに来た昨日とは大違いじゃないか…そこから考えられる事は)」
「(何かが変更になったか変化した、か……用心に用心を越した事はないと思いますが)」
「(貴方の殺気があの神様にあまり効果を示さない以上、何か非常事態が起こった場合も考えて、納めていた方が良い)」
「(……はぁ、分かりました。でも、危ないと感じた時は)」
「(嗚呼、思いっきり、腰を抜かせる勢いでやれ)」
「(ええ)」
そう二人は視線で会話した。そして、何かを話し始める神様に鋭い視線を向けた。神様はこの空間に緊迫した空気が孕んでいる事に気づいていないのか否や、代表者達の視線、不安などお構い無しに続ける。
「〈夜の京〉代表者・アーギストが諸事情により殺し合いから離脱した」
「……離脱?ってことは、〈夜の京〉は消滅されるのか?」
神様の言葉に驚愕した様子で青年が問う。離脱、そんな事できるのか?答えは恐らく、否。匡華は神様から視線を逸らさずに、視線のみを軽く伏せた。殺し合いから離脱できるのならば、条件を満たし、代表者として此処に来た時にでもルールで云えば良い。それを言わなかった事から、離脱と云うルールは存在しない。いや、もしかすると本当にできるのかもしれないが世界を一つにしたい神様の事だ。許す可能性の方が低い。だって『御告げ』によって記された条件に当てはまるのは、代表者だけなのだ。そんな容易に二人も三人もいる方が可笑しい。
「(よって…アーギスト…は既にいないと思った方が良いな)」
匡華はそこまで静かに思考させると、再び神様を見た。動揺と驚愕に支配される空間。緊迫した空間で神様は、つい口が出てしまったような青年の問いに答えつつ、続ける。フードに隠れて見えない神様の表情は、酷く無表情だった。その無表情さを目の当たりにし、一瞬、村正の背筋に悪寒が走った気がした。
「消滅しはまだしないよ。〈夜の京〉には代役を出させたからね」
まだ、その無意識に強調されたように感じたその言葉。神様は気づいていないようだったが、匡華と村正は気付き、視線を交差させた。代役、それは恐らく代表者であり代表者ではない未知の人物だ。警戒するに越した事はない。神様が片腕を軽く挙げた。すると、広間の扉が開き、誰かが中に入って来た。恐らく、代役だろう。その代役を目にした途端、村正は咄嗟に殺気を放っていた。
「村正?大丈夫かい?」
「……はい、大丈夫です」
殺気に気づいた匡華に声をかけられ、村正は我に返った。入って来た代役から何故か、「あの時」に出会った『創命』の気配を感じたのだ。そんなの、可笑しいのに。既にあいつはいないのだから。村正は深呼吸を繰り返して、殺気と少し放ってしまっていたオーラを静める。匡華が心配そうに村正を見ているのに気付き、彼は大丈夫だと安心させるように微笑んだ。その時、二人は全員の視線が代役に集まる中、神様の表情が動いたのを視界の隅に捉えた。代役であろうその人は顔を仮面で覆っており、素顔は確認できない。その人、代役は神様の隣に歩み寄ると軽く頭を下げた。神様は代役にいつもと違う眼差しを向けると、スッと驚く代表者達を見据える。神様特有の威厳のある、威圧感が凄まじい気配とオーラが動揺と驚愕が支配していた空間を書き換える。
「〈夜の京〉の代表者代役だ。こn……こいつも入れて、残り五つで最期の一つになるまで殺し合え」
この空間を支配して、両腕を広げて神様が言った。
残り、五
百超えたー(棒)そういえば、次回作考えてるんですが悩んでまして。内容は違うはずなのに構成とか過去作(上げてる上げてない含めて)に似てる気がしてならんのです何処か(気のせいかもしんないけど)。なんでや…んで別書くとスランプだし……いや、書きたいから多少似てても書きますよ!?自分のだしな!(ドヤァ)あ、繋がってても面白いか?!
ていう、はい、すいません。まだこれ終わるまでわかんねぇもんな!!なんかすっきりしましたありがとうございます!




