第5話 強化
「親父さん、ちょっと狩に行ってくる」
「お、おう。一人でか?」
「うん、遅くなるかもしれないから、晩ご飯は適当にその辺に置いといてください」
狩るモンスターはもちろんコボルトだ。
まずは強化8を試す。
「おおっ。強い。いけるぞ」
わずか2発で沈める事ができた。これはもう、狩って狩って狩りまくるしかない。
「ふっふっふ」
翌日からも3人での狩が終わった後に一人で黙々とコボルトを狩り続け、ドロップが出れば合成する、というのを繰り返した。
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Name:コボルトソード
Caption:生成武器
基本スキル:
特殊スキル:
- 体力回復
- 強化11
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そしていつの間にか称号が『生成武器』になっている。強化8の時は『ドロップアイテム』だったので、おそらく強化10の段階で変わったようだ。強くなったのは良いが、鑑定されるとばれてしまうのが残念だ。上手い言い訳はあるのだろうか。
翌朝、またコボルトソードを装備した海斗をみて二人が何か言おうとしたが、先手を打った。
「二人とも、これを鑑定してみてくれ」
強化11の武器を差し出す。強化11は見えないが、生成武器というのは分かるはずだ。
怪訝な顔をした二人だが、すぐに鑑定してほぉ、と言葉を漏らした。
「そっか、海斗って融合スキル持ちだったんだ」
「のようだな。コボルトソードを武器化したって話しは聞いた事がないが、強いんか、それ?」
「うん、も一回コボルトと闘って証明するよ。でもスキルの話しは内緒にしてくれないか」
「融合スキルなんて隠す意味ねぇっつうの。まぁ良いけど」
「だね」
それから海斗はコボルトに圧勝し、二人に認めてもらえた。
新武器を持ってのゴブリンとの再戦である。
もちろん、ゴブリンに対しても威力は問題無かった。
ナッシュが少しだけ、魔法で体力を奪ってから海斗が新しい剣で攻撃したところ、僅か一撃で葬り去る事ができた。
「ほぉ、思ったより強いじゃねぇか、その武器」
「だろ? 苦労したもん」
「それなら全く問題なさそうだな。どうだ? 俺が削らずにやってみるか?」
「任せてくれ」
「わかった。アイスウォール!」
ナッシュが使う魔法を変えた。攻撃魔法ではなく、防御魔法だろう。固まっていたゴブリンが氷の壁に遮られて丁度良いくらいに分散されている。
それを、海斗とアンジーにて各個撃破していく。
アンジーの使っている武器は、心配性の親父さんの計らいで鋼鉄製の結構高い武器だと聞いている。みたところ、海斗が造った武器はそれと同程度の威力だった。
「これならもう一段上の狩場に行けそうだな」
ナッシュから合格点が出た。
が、その直後に事態は急変した。
「待て、隠れろっ」
ナッシュが声を落として二人を制する。
その先にはゴブリンの集団が居た。
一見、今までの集団と何の違いもない。しいて言えば少し数が多いくらいかなと言ったところだ。
「ボスゴブリンだ」
「そのようね」
ナッシュとアンジーが集団をみて呟いている。
ゴブリンの強化版といったところだろうか。
「俺達じゃあちょっと荷が重いな。ランクEなら4、5人くらい必要だ」
「なんでこんな場所に居るのかしら?」
「わからねぇ。これは親父に報告して置いたほうがいいな。こんな町の近くにボスクラスのモンスターが居るなんて、大規模襲撃の予兆でなければ良いんだが」
二人が話している間に、ようやく海斗もボスゴブリンを発見する事ができた。
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Name:ゴブリン
Caption:ボスモンスター
基本スキル:
- 状態異常耐性
- 招集
- 計略
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「計略ってなんだろう?」
海斗が思わずつぶやいた言葉に二人は顔を青ざめた。
「まさか……。本当だ。計略を持ってやがる。ありえねぇ」
「ナッシュ、逃げた方が良いんじゃ?」
「ああその通りなんだが既にやられている可能性もあるぞ。慎重に逃げよう」
逃げながら小声で聞いたところによると、知能の高いモンスターであれば人間を欺くような罠を仕掛けたりするらしい。ゴブリン程度の頭であれば、せいぜい、人間を発見してもすぐに襲い掛からず仲間を呼んで囲ってから襲撃するパターンが多いとのこと。
今回もすでに囲まれている可能性があるらしい。
「いいか、もし囲まれた場合は俺とアンジーでボス側をやる。後ろ側は海斗一人に任せる事になるから、グリーンポーションを常備しておけ。俺らの分も渡そう」
「えっ?そうするとナッシュ達が困るんじゃ?」
「大丈夫だ。ボス側は俺の魔法で雑魚を一蹴できる。対ボス戦に集中すれば良いんだ。だが海斗のほうまで範囲魔法が届かないからな。そっちまで余裕がない。なんとかポーションだけで凌いでくれ」
スキル『招集』があるから際限なくゴブリンが集まってくるらしい。ナッシュとアンジーがボスを倒すまでの間、範囲魔法が届かない後ろ側を海斗が受け持つしかないとのことだった。
そしてやはりナッシュが懸念した通り、既にゴブリン達に囲まれてしまっていた。
「アイスストーム!」
範囲魔法の詠唱が開戦の合図となった。ボス周りのゴブリンは確かに一蹴されたが、後ろ側は残っている。それを、海斗が各個撃破していく。
「ライトニングボルトッ!」
ナッシュの詠唱とアンジーの掛け声を背にして、海斗も新武器で必死にゴブリンと応戦する。一度に数体を相手にするため、どうしても横からや後ろから攻撃を受けてしまう。
だがここで嬉しい事を発見した。
剣に付与された回復スキルがかなり良い感じで効いているのだ。おそらく、相手に与えたダメージに比例して回復量が大きくなるのだろう。
さらにいつしか、ゴブリンをも一撃で葬り去る事ができるようになっていた。
特に武器の追加合成は行っていないので、海斗自身が強くなったのであろう。まぁこれだけモンスターを倒せば当然とも言える。
モンスターを一撃で倒す事ができるようになったため、次第に海斗のほうは余裕が出て来た。であれば、ボス戦のサポートをするのが良いのだが、ここを離れてしまうと背後から襲撃を受けてしまう。
「何か飛び道具があれば……そうだ!」
大量のモンスターを葬ったため、ドロップアイテムが散乱している。
海斗は手あたり次第、合成をしていった。ダメもとで何か飛び道具になるようなものができれば、というアバウトな作戦ではあるのだが。
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Name:するどい爪
Caption:ドロップアイテム
基本スキル:
- 遠距離攻撃
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できた。するどい爪×ゴブリンの爪だ。試しにこれで目の前のゴブリンに攻撃してみる。
何かが飛んでいくのではないかと思われたが、不発に終わった。
「どわっ」
反対に攻撃を受けてしまったため、あきらめてコボルトソードで応戦する。だがこんな事で挫けはしない。更に追加合成だ。
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Name:するどい爪
Caption:ドロップアイテム
基本スキル:
- 遠距離攻撃2
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またこのパターンか。こうなったらヤケクソである。落ちている爪を全て合成してみた。
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Name:魔石
Caption:スキル『衝撃波』
基本スキル:
- スキル付与
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「むおっ。何か変なものになったぞ」
名前が『するどい爪』から『魔石』に変わった。
スキル付与と出ているのは、文字通りの意味だろう。問題はどうやって使うか、だ。『スキル付与』とか念じてみたが変化はなかった。
「おおーい、スキル付与の魔石ってどうやって使うんだぁ~?」
仕方がないので後ろで戦っている二人に大声で投げかけてみる。
「はぁ? こんな時になんだよ!」
「スキル付与の魔石が出たんだよ。『衝撃波』ってスキルらしい」
「本当かよ! ゴブリンからそんなものが出るって聞いたことないぜ」
「使い方が分からないんだよ」
「ま、まて。それが本当ならアンジーに渡してやってくれないか。アンジーが使えるようになれば、ボスゴブリンも何とかなりそうだ。お前にも後で同じものをあげるからよ」
確かに今はドロップ品を律儀に分け合っている状態ではない。使えるものは使うべきだろう。海斗は素早くアンジーに魔石を渡すと、元いたポジションに戻った。
ちらっと戦いの合間に後ろをみると、ナッシュが広範囲魔法で配下ゴブリンの一蹴と、防御魔法でボスの足止めをしている間にアンジーがスキルを使った攻撃を叩き込んでいるようだった。
なんだかんだで攻防バランスがとれた状態だったようだ。それから10分後、無事ボスゴブリン討伐に成功した。
「うぇぇ。やばかったぜ。もう魔力が殆ど残ってないっつうの」
「はぁはぁ……。お疲れさま。ナッシュが居なければほんと、あぶなかったね」
「いやぁ、魔石が出てくれたおかげだよ。あれ無かったら倒す前に魔力が枯渇していたぜ。そういう意味では海斗の功績が高いな」




