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第49話 作戦どおり


 一通り話し終わったあと、沈黙を破ったのはグレンだった。


「まぁなんだ……、そのぅ。あれだな。お前の家族は此処に居ないかもしれない。だがな、俺は少なくとも家族みたいなものと思ってくれて良いんだ。だからもし、帰る方法がなかなか見つからなかったとしても絶対に焦んじゃねぇぞ」


 一生かけて一緒に探してやるから、と言ってくれた。

 いやいや、そんなに時間掛けたくないんだけどねと返しておいたが。


「ありがとうグレンさん。でもアンジー達は危険だから戻ってもらった方が良いと思うんだ」

「そうだな、帝国の目もあることだしユーグリに戻るんだ」

「ちょっと何勝手に決めてんのよ。私も一緒に行くからね」


 相変わらずの頑固娘だ。既に目的は達成されたはずなのに。

 

 決して望んだ形ではなかったせによ。


 それからしばらくの間は家族喧嘩が続いたので海斗は一人、その場所を離れた。まぁこれからの事は家族で決めてもらうしかない。


          ◆


「しかし例の海斗という男は、本当に信用できるのでしょうか?」


 マークライルは、楽しそうに魔石を分類しているラーシャを見ながら咎めるような口調で言った。


「娘の元パーティメンバよ。問題ないわ」

「しかし……」

「それより出発の準備は出来ているの? 急がないと帝国の奴らに先を越されてしまうわ」


 かなわないな……。

 マークライルは思った。


 生き別れになった自分の子供に再開できたと言うのに、全く私情を挟むことなくレジスタンスのリーダーとしての務めを果たそうとしている。側近の自分くらいになら、もう少し喜ぶ感情を出してくれても良いと思うのだが。


 しかし先日聞いた言葉が少し心に残るのも事実だ。

 旦那や娘に用は無い。

 彼女は確かにそう言った。思い返せば、その節はあった。帝国に潜伏しているメンバーから面会の話しが来た際の事だ。

 

 彼女は当初、断ろうとしていた。

 娘は大事だが、今は大変な時期だから会う訳には行かないと。


 そんな話の流れだったはずだ。

 しかし伝令の男が海斗だと分かったとたん、態度が豹変した。もしかして本当に海斗に会うために面会を承諾したのかもしれない。


 組織第一に考えてくれるのは嬉しいが、もう少し人間味があっても良いのではと疑問を持ったのは事実である。


「ご要望どおり、なんとか無名ながらも実力のある連中を5名揃える事ができました。2日後には出発可能でしょう」

「わかったわ。悪いけど海斗にも伝えてくれる?」

「承知しました」


 彼女からの指示は最低でも10名集めて欲しいとの内容だった。

 単に実力のある人間だけを集めるなら簡単だが、ここからは帝国に発見されないように内密に動かねばならない。冒険者として名を上げている人間はダメだ。そんな難しい指示だったためか、5名しか集まら無かったことに対して特に怒られはしなかった。


 と思ったら、単に海斗やグレン達のことも頭数に入れていただけのようだった。

 どうも彼らも一緒に来るらしい。


「リーダー、ご存知だったのですか?」


 2日後、ラスタ遺跡に向けて走っている馬車の中で聞いてみた。


「家族も一緒に来る事? そうね、なんとなくそんな気がしてたわ」

「しかし彼らは既に帝国に面が割れている人間では?」

「うん。だから基本はあなたが集めてくれた人たちに前に出てもらうしか無いわね。ちょっと人数が少ないけど、何とかなるでしょう」


 Aランク実力者のグレンならともかく、他のメンバーはまだCとかDあたりのはずだ。危険ではないのかと思いつつもマークライルは特に意見を言う事はしなかった。


 言ったところで何かが変わる訳でもないのだ。

 リーダーであるラーシャに任せるしかない。


 カサノバからラスタ遺跡までは、国境を超えるものの馬車で1日だ。ルマリア国内でありながらも、現在は帝国領となっている。先般の戦争でルマリアが負けたからだ。


 聞くところによると戦後処理がまだ終わっておらず、統治状況は混沌としているらしい。

 だから、今のウチなら遺跡調査も簡単だと思うのは早計だ。帝国は、まるでこの場所のために戦争したのではないかと思えるほど、ラスタ遺跡の周りは整備されていた。


「見えて来ました。やはり、えらい騒ぎになっているようです」

「予想通りね」

「はい。では早速探してまいります」


 マークライルは馬車から降りると、海斗達が乗っているもう一台の馬車へと向かった。


「海斗君、良いかな?」

「はい」


 呼びかけると少しだけ扉を開けて海斗が顔を出した。

 念のために彼らは余り馬車から出ないようにお願いしてある。


「すごい騒ぎになってますね」

「ああ、計画どおりだ」

「そうなんですか?」

「うむ。あらかじめ各地の商人たちに噂を流しておいたからね。ラスタ遺跡で質の良い魔石が採取できる事がわかったと」


 レジスタンスの人脈を持ってすれば、こんな噂を流すのは容易い。遺跡が帝国によって既に囲い込まれている事がわかっていたので、現場に混乱を招くために流したのだ。この混乱に紛れて遺跡内に入り込む計画だ。


 噂を聞き付けた商人たちが、我先にと此処に駆けつけた。

 ルマリア国内でも、他国動揺に素材の採れる場所を国が締め出すような事はしていない。だから商人たちの怒りは、それはもう凄まじいものだ。


「暴動でも起きそうな感じですよ」

「それが狙いだからな。で、僕たちはこれから潜入ルートを探しに行く。しばらく時間が掛かるだろうから、馬車の中で待っていてくれないか」


 引き続き外に出ないようにお願いしつつ、マークライルはカサノバで集めたメンバーと共に手分けして捜索を開始した。


 遺跡への侵入自体はそれほど難しくは無い。城のように周りが壁で囲まれている訳ではないからだ。重要なのは、ブツ(・・)が何処にあるのか、だ。


 既に帝国の奴らがおおよそのアタリは付けているはずだから、警備の厳重な所を探すのが良いと思われる。きっとその先に、禁呪の手がかりがあるのだろう。


「あの辺りが怪しいな」

「ですね。どうしますか? 見つからないように通り抜けるのは無理のようですが」

「上から行こう。運頼みになるがな」


 メンバーを一人だけ残して内部へと進んで行くことにする。万一、自分たちが全滅すれば、この場所だけでもリーダーに伝えてもらうためだ。


 警備員の頭上を進む形で、物音を立てないように慎重に進む。

 入り口付近では暴動寸前の状態になっているため、この場所でもそれほど静まり返っているという感じではない。少しくらいなら大丈夫だろう。


 その先は、比較的容易に進む事ができた。警備員もおらず、道なりに進むだけだ。


 マークライルはその先で異様な物を見た。

 顔はライオンのようであり、しかし背中には大きな翼が生えている。するどく大きな牙と爪は、間違いなく強力な攻撃力を持っている事を示している。そして大きさはおよそ人間の10倍と言ったところか。


===============

Name:ラハゼル

Caption:守護神

基本スキル:

 - 高密度結晶化

 - 電子融解

===============


 まるで異色なモンスターに身が強張る。

 世の中にこんな生き物が存在するのか。そもそも守護神とは何だろうか。見たことも聞いた事もない。


「マークさん、あれは一体?」

「分からない。だがどうして動かないのだろう」


 守護神は自分たちの目の先、およそ50メートル先に佇んでいる。

 その周りでは帝国の人間達が各々の仕事をしている。何かを測定する者、魔法で壁を掘削する者、大きな装置を組み立てる者。


 間違いなく、ここが要所であろう。

 この先に禁呪があるのか、それとも禁呪につながる手がかりか。


 まずは皆を此処へ呼び寄せるのだ。

 幸い、身を潜むためのスペースは沢山ある。全員呼んでも問題ないだろう。


 マークライルは此処にもメンバを一人残し、リーダーの元へと戻った。やはり暴動寸前の状態が効いているらしく、仲間を引き連れて守護神の居る場所へ往復するのに大した問題は無かった。作戦は大成功のようである。


「ふぇ……。これが守護神?」

「確かにこれは只者じゃないな」


 皆、守護神を見て驚いている。まぁ当然だ。

 何故動かないのかも疑問だ。もしかすると帝国の仕業かもしれない。というか、そう見るのが妥当か。守護神というからには、禁呪を守っているのだろう。それを奪い取るというのだから。


 まともに戦っても勝てないと見て、動きを封じる事にしたのかもしれない。


「あの奥に何かありそうね」

「恐らくは」

「なら、間に合ったと言うことよ」

「しかしこれから、どうやって?」


 マークライルは、此処から先の計画については聞かされてなかった。リーダーは、また時が来たら言うと。


「これを使う予定だったんだけどね」


 そう言ってリーダーが取りだしたのは、魔石だった。


「まさか……」

「何も言わないで」


 スキル『異世界の風』を持つ魔石。

 伝説では千人の騎士を毒殺したと伝えられているのものだ。以前、リーダーが存在を匂わせた事があった。伝説でしか聞いた事のない魔石が手に入るかも、と。


「いけません、味方にも被害が出てしまいます」

「大丈夫よ。効果範囲は特定できるはず」

「でも言い伝えでは本人も毒にやられてしまったと。範囲を特定しても、風の流れによって広がっていくのではありませんか?」


 そこまで言ってから、マークライルはリーダーの言葉が過去形だった事を思い出した。


「そうよ。使いたかったんだけど、今は難しいわね。あれを見て」


 リーダーが指さす先には、狩人が数名で結界を形成している。

 マークライルも存在は認識していたが何をやっているのかさっぱり分からなかった。


 狩人といえば帝国の切り札的存在の裏部隊である。それが複数人で造りだすとすれば、かなり強固な結界であろう。


「あれはきっと、守護神の動きを封じているのね。だから動かないんだわ」


 異世界の風を使えば、狩人と言えど唯では済まないかもしれない。少なくとも彼らが作っている結界は消えてしまうだろう。すると守護神が動き出すという訳か。守護神も毒にやられるなら問題ないが、あまり楽観視は出来ないだろう。


「ま、とにかく待つしかないわね。奴らが壁の先に進み、禁呪を持ちだしたらコレを使うわ」


 やはり使うのか……。

 リーダーは、魔石を使った際の混乱に乗じて禁呪を奪い、素早く逃走すると言った。

 果たしてそう上手くいくだろうか。

 

 マークライルの頭には不安しか残らなかった。


          ◆


 海斗は帝国の人間が壁を掘削する様子を、期待と不安の入り混じる気持ちで眺めていた。


 壁の掘削にはなかなか手こずっているようで、一週間経過してもあまり大きく進んだ形跡は無かった。見た感じ、1メートルすら進んでいない。開通まであとどれくらいかかるのか。大量の食料を持って来ているものの、果たして間に合うのか。


 色々な不安があるものの、一番の不安は何といっても守護神である。

 マークライルに連れられて此処に着いたとき、皆と同じように真っ先に守護神を鑑定し、皆と同じように驚いた。


 神獣、破壊神に続いて守護神という者にも出会ってしまった。

 しかし一番驚くべきポイントは、そこではなかった。守護神のスキルである。


===============

Name:ラハゼル

Caption:守護神

基本スキル:

 - 高密度結晶化

 - 電子融解

特殊スキル

 - 特殊スキル無効化フィールド作成

===============


 特殊スキル無効化……。


 一体、何てスキルを保持してくれているのか。

 海斗から特殊スキルを取れば、何も残るまい。


 まぁ通常スキルは残るし、決してヘボなスキルばかりではない。

 しかし元の世界に戻る唯一の手がかりだと信じているのだ。これが無くなるという事は、死と同列なのだ。


 もしかすると恒久的な物では無いかもしれない。

 スキル名の通りであれば、スキル自体を無効化させる訳では無く、一定のエリアの中では特殊スキルが発動できないようにする物だろう。


 以前、白蛇王(ホワイト・バジリスク)のエリアで飛ぶ事が出来なかったのは、もしかすると無効化されたフィールドだったからかもしれない。蛇は特殊スキルを持って無かったので違うかも知れないが。別の誰かがフィールド作成したとか。


 違うか。空間回帰は利用できなかったが合成スキルは利用出来た。

 特殊スキルが全て無効にされるなら合成も発動しないはずだ。


 空間を跳躍するタイプのものだけ無効化するフィールドだったのかもしれない。


 とにかく、あまり近づかない方が良いだろう。

 その後も掘削業を眺めていると、新たに一人メンバが追加となった。


 海斗は目を見張る。

 ジェイコブだ。奴がまた姿を現した。しかもこんな場所で。


 ラーシャを見ると、やはり彼女も驚いていた。

 あの爺さんは帝国から追われているのではなかったか。なのに何故?


 その疑問は一瞬で解決した。

 彼は乗り込んで来たのだ。この場所に。



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