第26話 新たな敵?
新たに出て来た、変な顔した翼のあるモンスターを鑑定してみる。
===============
Name:キメラ
Caption:モンスター
基本スキル:
- 浮遊
- フレイム
- トルネード
===============
何やら良く分からないスキルだ。
いちいち尋ねているヒマはないので、海斗は自分の仕事をするしかない。
ファイヤアローによる攻撃をやめて、稲妻を発動した。稲妻は範囲指定での発動も出来るため、今のように密集している場合は都合がよい。威力もそれなりにあるし。
「おおっ。派手だな」
「わたしも見るのは初めてよ。なかなか迫力あるじゃない」
珍しい武器だとは聞いていたが、Cランクの冒険者が見た事がない程だとは。
いい気になって攻撃していると、いきなり目の前が真っ赤になった。
と同時に焼けるような痛みが全身を襲う。
フレイムと言うスキルらしい。単に口から火を噴いただけのように見えたが。これもダメージ吸収によりある程度軽減されているのだろう。深刻な程ではなかった。
稲妻を放ちながら、少し近づいてきたキメラに対してダブル衝撃波をお見舞いする。すると見事に決まり、モンスターはそのまま力尽きる。キメラは『白い羽』というドロップを残して消えていった。
「ほらな、早速出たぜ!」
これが期待できるドロップらしい。
その後も彼らと共にモンスターを次々と攻撃し、特に危なげなく殲滅完了となった。
結局白い羽は1個しか出なかったが、海斗が倒したモンスターだからそのまま取っとけと言われた。遠慮すると「俺らに恥かかせんなよな」と怒られたし。白い羽はエリクサーの材料になるらしく、ショップに売ると結構な高値で買い取ってくれるとのことだ。
新たな素材もかなり溜まったところで日没が近くなり、共闘はお開きとなった。
彼らはエイベンに戻ると言うのでその場で別れ、海斗は一人、ランソールに戻る振りをして『空間回帰』を使った。
翌日こそは、早く起きて割のいい依頼を受けようと頑張ってみたのだが、目が覚めると既に昼前だった。そもそも、一体何を頑張ったんだという話しだな。目覚まし時計のような魔道具も購入していないし、良く考えると気合だけで早起きが出来る訳がない。
あきらめモードでギルドに行くと、やはりミカ達の姿はなかった。
今日も一人で依頼を探してみたものの、昨日と同じく、あまり良い内容のものは見当たらない。
それならば、と海斗は今日もユングスタットの森に行く事にした。
依頼は受けずとも、素材を売ればそれなりに稼ぐ事が出来そうだ。しかし昨日のように上位版のオークが複数体でてくれば海斗には勝てないだろう。できるだけ森の入り口付近をうろつき、最悪は森の外に逃げるか空間回帰で脱出することにした。
昨日と同じようにシリの森を抜け、ユングスタットの森に入る。あまり深くは立ち入らないようにすれば、おそらく大丈夫だろう。
海斗の作戦は功を奏し、強いモンスターに囲まれる事なく狩りをすることができた。この森は、素材の宝庫である。さすがCランクモンスターだけの事はあるようで、たった1日で四元魔法の魔石が合計で5個も生成できてしまった。もともと保持していた分も合わせると、合計13個も手元にある。
だがここからが問題である。
魔石を全て売却すれば、おそらく金貨3~4枚程度にはなるだろう。借金返済するには、コツコツと通って換金していくのが良いと思われる。単純に計算すれば1ヶ月半で金貨150枚溜まり、返済可能と思われる。
しかし海斗は、レイチェルの『いつでも良い』という言葉に甘えることにした。彼女も返済よりは珍しいアイテムを望んでいる事だろう。
そう考えて、全ての魔石を手あたり次第合成していく事にした。
経験上、アイテムを合成するよりかはスキルを合成した方が良い物に辿り着く可能性が高い。まずは魔石を全てスキルに変換するのだ。
===============
基本スキル:
- ファイアボルト
- ファイアボルト
- ファイアボルト
- アイスストーム
- コールドブレス
- コールドブレス
- コールドブレス
- コールドブレス
:
:
:
自分自身を鑑定してみると、明らかに変な人だ。
こんなに沢山、同じ魔法を付けている人は見た事ない。このまま町を歩けばきっと奇異の目でみられることだろう。
もう辺りは暗くなりかけているが、町に戻る前に合成を済ませなければいけない。
ってか、宿に戻ってからスキル付けろって事だよな。
とりあえず、惜しげもなく次々と合成していく。
そして――
===============
基本スキル:
- テンペスト
- 黒炎
===============
とりあえず目ぼしい感じの物が2つになったのだが、使ってみると正直微妙だった。
テンペストは稲妻と完全に被っている。属性の違いはあるかもしれないが、威力は同じようなものだ。
やはり宿に戻ってからではなく、ここで合成しておいて良かった。生成して直ぐに試せるのだから。
黒炎も試してみた。通常のファイヤアローに比べると高い威力を発しているので使えそうではあるが、もうちょっと『がつん』としたものが欲しい。
という事で、この二つも合成してしまおう。
===============
基本スキル:
- 火球
===============
うぐぐ。
何か弱くなってないか?
そんな不安を抱きながら、すっかり暗くなってしまった森の中をモンスターを探して歩く。月の明かりだけが頼りだ。
元の世界よりも空気が澄んでいるためなのか、ことのほか、月明かりが明るく感じる。歩くだけではなく、索敵についても大きな問題はなさそうではある。
しばらく歩くと、茂みからガサガサという音が聞こえて来た。
モンスターか?と思い、身構えたがなかなか姿を現さない。
この森では海斗の姿をみると直ぐに襲い掛かって来るモンスターばかりだったので、新手かもしれない。
慎重に剣を構えつつ、茂みに向かって鑑定と念じる。
===============
Name:ユリエス
Caption:
基本スキル:
===============
なんだ?
人間なのか。
「ユリエス?」
海斗は茂みに向かって呼びかけてみる。
すると、またガサッと音がした。
そこに居るのは間違いなさそうだ。しかし、称号が無いのが気になる。しばらくの間、敵対する意志が無い事を話して聞かせると、ようやく顔を出してくれた。
――10歳くらいの女の子だ。
こんな危険な場所で一体何をしているのだろうか。
それを尋ねようとしたとき、遠くから誰かが走ってくる足音が聞こえて来た。その方角をみると、明かりをもっているらしく光が徐々に近くなってくるのが分かる。
明かりに気をとられていると、今度は女の子が逃げ出した。
「え? ちょっ、ちょっと待ってよ」
海斗は慌てて追いかける。ここにはCランクのモンスターが出現するのだ。まさか、この女の子が海斗よりも強いとは思えない。
「居やがった! 待ちやがれっ」
明かりを持って追いかけて来る男が叫ぶ。どうやら女の子は追われているようだ。だから逃げ出したのか。
状況がよく分からないが、海斗もとりあえず女の子を追う。所詮は子供の足だ。簡単に追い付くことが出来た。と同時に後ろから追って来た男も姿を現した。
男を鑑定して、海斗は目が飛び出そうになる。
===============
Name:ケーレ(罪人)
Caption:
- 職業:剣士
- 所属:ギルド・青龍
- ギルドランクC
基本スキル:
- 一閃
- 五月雨
===============
ヤバい。こいつは危険だ。
ランクはCだが、果たしてどこまで参考になるのか。
罪人となってからは、おそらくギルドランクは上がらないのだろう。当時Cランクだったとして、もしかして現在はもっと上の実力があるかもしれない。
「誰だお前は。こんな所で何をしているんだ」
ケーレが詰問してくる。女の子はというと、海斗の後ろに隠れている。これではまるで、海斗が女の子を庇っているようだ。
でも海斗は無関係を装うつもりは無い。乗りかかった船だ。何とか、女の子を助けたい。
「狩りをしてたら、たまたまこの子に会って」
「こんな時間に一人で狩りだと? しかもお前、Dランクじゃねぇか」
うむ、確かに怪しいな。我ながら、そう思った。
海斗は小声で「オレのパーティに入りなよ。助けるから」と女の子に囁いた。
パーティに入りさえすれば、空間回帰で飛べるのだ。
だがしかし、女の子は何のことか理解できていないようだ。海斗からパーティの要請を出したから、彼女の目には承認ウインドが開いて見えるはずなのだが……。
全く戦闘経験が無くて、何の事か分からないのかもしれない。
仕方が無い。やるだけやってみるか。
太刀打ちできなかったら空間回帰で逃げるだけだ。女の子は見捨てる事になってしまうが……。
いざ、逃げようとした時に罪悪感が出てスキルを使えないような気がしてならないが……。
どっちにしても、今逃げるか後で逃げるかだけの違いだ。
海斗は心を決めて、男と対峙する。
人間と闘うのは初めてだ。手が僅かに震えているのが分かる。
まぁ以前、白装束の男と闘った事はあるのだが、あれは戦いというより一方的にやられただけだったから。
確か、罪人であれば殺してしまっても罪に問われる事は無かったはずだ。思いっきり戦っても問題ない。
「何の真似だ? 用があるのは後ろのガキだけだ。引っ込んでろ」
ケーレがすごんでくるが、怯まず稲妻の剣を構える。
「うぜぇ!」
男が持っていた剣を振り下ろしてくる。それを空間障壁で防御するとともに、女の子にウインドバリアを掛けた。
「なんだと?」
今度は海斗の反撃だ。稲妻の剣を真横から薙ぎ払う。しかしそれは、簡単に避けられてしまった。返す刀で何度か切り付けるも、全て余裕で躱されてしまっている。
「俺の攻撃をどうやって止めたか知らねぇが、剣捌きは素人だな」
そう言うとケーレは手を振りかざして火矢の様なものを放ってくる。ファイヤアローに似ているが威力はそれよりも高そうだ。火矢が空間障壁に当たって爆発したときの衝撃が段違いなのである。まともに当たればヤバかったかもしれない。
「ちぃっ。これも防ぐのかよ」
ケーレが言うように、海斗の剣捌きは素人だ。今まで武器やスキルに頼りすぎていた事があだになってしまった。
ではどうするか。スキルだ。
まずは稲妻の剣を振りかざす。剣よりまばゆい光が発生し、ケーレを襲う。
「舐めるなっ」
どんなスキルか分からないが、男は障壁を造りだして海斗の攻撃を防いでしまった。やはり、Cランク以上の実力がありそうだ。そうなると、あと出来る事といえば空間障壁で男を閉じ込めてしまい、その隙に逃げる事か。
だがもう一つ、攻撃手段があった。
さっき出来たばっかりの火球である。まさか試し打ちが人間相手になるとは思ってもみなかったが。
スキル『火球』と念じる。すると海斗の手のひらに強烈な熱が感じられた。火傷をしそうな熱さである。一瞬戸惑ったが、ファイヤアローと同じようなものらしい。野球のボールを投げるような感じで、振りかぶって男に投げつける。
すると掌から隕石のような火の塊が発生し、ケーレに向かって行く。男はさっきと同様に障壁を出したが、それをぶち破って直撃した。
「ぐおおおぉぉ」
「今だ!逃げるぞ」
男が炎に包まれている隙に海斗は女の子の手を掴み、走り出した。彼女からの信頼も得れたみたいで、素直について来てくれている。
ある程度の距離まで離れたところで、女の子に説明してパーティに入ってもらった。これでいざとなったら空間回帰で町まで飛ぶことができる。ただ、今はさしあたって危険が無い状態のため、このまま二人で歩いて帰る事にした。
この子の素性が分からない以上、見せなくても良いものまで見せる必要は無いからだ。だが、さすがに町に戻った時には日もどっぷりと暮れ、店は軒並み閉まっていた。
できればどこかの店で食事でも摂りながら落ち着いて話しを聞きたいところだったのだが。女の子もさすがに疲れた顔をしており、今日はこのまま休ませた方がよさそうだ。




