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第12話 コンラート


「よろしく」


 もう一人のEランクメンバが来たので挨拶してみた。

 黒髪の平凡な顔立ちをした女子である。珍しく、海斗と同じ日本人っぽい感じだ。


===============

Name:ミカ

Caption:

 - 職業:魔術師

 - 所属:ギルド・ランソール

 - ギルドランクE

基本スキル:

 - ファイアボルト

 - アイスシールド

 - ライトニングフラッシュ

===============


 職業『魔術師』らしい。

 あまり見ない称号だ。なんとなく初心者はみんな『剣士』で登録するのが一般的なのかと勝手に思っていたが、こんな人もいるようだ。

 

「何故か私がパーティリーダーと言われてしまったので、申し訳ありませんがよろしくお願いします」


 ミカが頭を下げる。

 全員Eランクなので、今までの功績を見てギルドから指定されたようだ。本人も背伸びして受けた依頼でまさかリーダーに指名されるとは思っていなかったのだろう。

 ということは、彼女はEランクとして随分と長く経験を積んでいるのだと思われる。更に安心材料が増えた。


「ではカタリナさん、出発しますね」

「はい、よろしくお願いします」


 今回の護衛対象であるカタリナという商人に声を掛け、出発する。ミカが馬車も操れると言うので、手綱を握るのもお願いした。


 前回ライアン達と依頼(クエスト)をこなした際は下ネタ爆発の会話ばっかりだったのだが、今回はミカとカタリナ2名の女性がいるため、なんだかやり難い。二人とも大人しい感じだし。


 ライアン達も同じようで、なかなか誰も口を開かないでいる。


「コンラートには、仕事で行くのでしょうか?」


 とりあえず軽く質問を投げてみる。


「はい。ちょっと仕入れの関係で色々と移動していたのですが、明日からまたコンラートに戻って仕事をすることになりましたので」


===============

Name:カタリナ

Caption:

 - 職業:商人

 - 所属:コンラート

基本スキル:

 - 薬草採取

===============


 鑑定してみると、確かに拠点がコンラートのようだ。

 採取スキルがあるので、何らかの素材を集めていたのだろうか。特に大きな荷物を持っていないところをみると、アイテムボックス持ちなのかもしれない。


「やっぱ、アイテムボックスって高価なものしか無いんでしょうか」


 かなり唐突感があったのだが、気になって聞いてみた。


「え? ええ……。そうですね。小さい容量のものでも金貨数枚レベルになりますね。わ、私は持ってないのですが……」

「やっぱそうですよねぇ」


 カタリナは何故か少し焦った様子で答えている。もしかしてスキルと同じで持ち物を色々と聞くのもマナー違反なのだろうか。


「海斗は持ってるの?」

「ん? いやぁ無いんだけどね。前から欲しいなぁと思ってて」


 突然ライアンに聞かれ、思わず口から嘘が出た。


「もしご所望でしたら、コンラートにある私のお店でいくつかご準備がありますが」


 すかさずカタリナが商売してきたので、両手を振って買う気はない事を示した。


「一番小さな容量のものですと金貨15枚からございますので、ぜひご検討くださいね」

「ふぇ~高けーな。金貨15枚出すんだったら、オレなら、せんぞ――」


 サスケが言いかけて口をつぐんだ。

 たぶん専属従者を雇うとかいう感じの言葉を飲み込んだに違いない。

 でもカタリナにはばっちり伝わってしまったようで、苦笑いしている。


「そういえばカタリナさんって『フランベルド商会連合』ってご存知でしょうか?」


 海斗がサスケのために話題を変えてあげた。

 が、直後にモンスターが出現したため戦闘モードに突入してしまった。


 クレイワームとシルバーウルフが数体、群れをなして襲い掛かって来る。

 事前に取り決めておいたとおり、海斗達3人が前衛を受け持ち、後方からミカが魔法にて殲滅していく戦法だ。


 一人当たり2~3体を同時に相手しなければいけないが、シリの森で戦っていた状況と比べるとヌルい。


 海斗は余裕をもって担当を受け持ち、その合間に他のメンバが苦戦していないか、依頼人にモンスターが迫ってないか、なども随時チェックしていた。


 しかしミカの殲滅速度は中々のもので、全く危なげなく殲滅に成功した。


「お疲れさまでした」


 馬車に戻るとカタリナが労をねぎらってくれる。

 言われるほど大した事はしていないのだが。


「そういえば、フランベルド商会連合ですよね。私の店も加入しておりますよ」

「本当ですか? ならもしかしてラダマンさんってご存知でしょうか?」

「もちろんです。支部長代理ですから。もしかして海斗さんもご存じなのですか?」


 すごい。ある程度の役職があるとは思っていたが、支部長代理とは。


「はい。前に護衛したり、素材を買い取ってもらったりしたんですよ」

「そうでしたか!」


 ラダマンのお陰でその後の旅は非常に会話も弾み、良い雰囲気のままコンラートまで移動する事ができた。


 カタリナとの別れ際には、時間があったら是非店に寄ってくれとお願いされたので、買いたいものが出来たら是非行きますと答えておいた。


「じゃあ、この後どうする?」


 コンラートのギルドへ依頼達成の報告を終えた後、ライアンが聞いてくる。

 このまますぐにランソール向けて発てば戻れない事もないが、夜になっての移動は危険を伴う。


「朝になってから移動のほうが良いんじゃねぇか?」

 サスケも同様の意見だ。


「じゃあ私が宿をとるね。もったいないから四人一部屋でいいよね。安いところを知ってるんだ」


 意外にもミカが四人部屋を提案してくる。

 前にアンジーが野宿すると言ったときも驚いたのだが、もしかしてこの世界では野宿や男女混合で一部屋に泊まる事はそうそう非常識ではないのだろうか?


 そう考えたが、ライアンとサスケの表情がそうではない事を物語っていた。

 二人とも生唾を飲み込んでいる。


 そんな男性陣の事は全くお構いなしにミカはどんどんと先に進んでチェックインを済ませてしまった。部屋に着いて、各自荷物を降ろす。ここは、あれだ。元の世界で言うところのドミトリーだ。だから安いのだろう。一人当たり銅貨40枚である。六人まで部屋に入るれるので、更に二人、誰かが来る可能性があるとの事だ。


 その後、四人で近くの店で食事をとる事にした。これも安い店をミカが知っているとのこと。彼女はコンラート付近の依頼も沢山こなしてきたのだろう。


 大体銅貨20枚くらいの店だが良いか?と聞かれ、ライアン達が頷く。

 が、ここで海斗に危険信号が灯った。

 

 宿泊施設はボロくても我慢できるが、食事は別なのである。

 銅貨20枚程度であれば、村で食べていた食事とあまり変わらないだろう。また、あのような料理を食べると思うとぞっとする。

 

「あ、あのさぁ。ここは一つ、四人の出会いを祝してちょっと豪勢に行かない?」

「なんだよそりゃ。海斗と俺らって前にも一緒に依頼(クエスト)やったじゃん」

「いいからいいから。ミカも居るしさ。もちろんオレが奢るから」

「変なやつ。でもまぁ奢りってんなら何の問題もねぇよ」


 銀貨5枚出すと言うと、ミカが良い店を探してくれる事になった。


「やっぱ海斗って絶対に金持ちじゃね?」

「だな。スキルも色々持ってるし」

「いやいや、ミカだってスキル持ちじゃん?」

「私はコツコツ貯めて買ったの。それにあんたみたいな高級なものじゃないしね」

「うっ……」


 海斗は、ただメシにだけ金を掛けているだけなのである。

 それが分からないとは。


「でもホント、海斗さんの家って豪商か何かじゃないの?」


 ミカまでもが勘ぐってくる。この世界では銀貨5枚だせば4人でも相当な高級料理になるのだろう。そんなものを食べれば、この疑問は無理もない。

 

 でもおかしい。人のスキルや装備を色々と詮索するのはマナー違反では無かったのか。


「んでさ、帰りだけど明日またギルドに行って、ランソール付近の依頼を探さねえか?」

「賛成!」

「だね。ただ移動するだけなんてもったいないからね」


 勝手に話しがまとまったが、これには海斗も特に反対意見はない。


「帰りもDランクのものを受けない? 海斗さんが居れば大丈夫そうだしね」

「おおっ。達成報酬が楽しみだな! そうだ!前祝いを兼ねてメシ終わったら娼館にでも……ああっと。わりぃ」

「ホント、男ってば……」


 ミカがあきれたような顔をしているが、それほど否定はしておらず、どちらかというと仕方がないなという表情だ。


「私は先に帰ってるから、ごゆっくりね~」


 ミカは食事が終わると冷たく手をひらひらと動かしながら、宿の方へと帰って行った。


「冗談だったんだけどな……」

「いや、ここまで来て行かないとか男がすたるってもんだろ」

「おいおい、何言ってんだ」


 ライアンとサスケがもじもじしている。

 どうやら二人とも実際に店に行った経験はないらしい。もちろん海斗も無いが。それに、海斗は『フランベルド商会連合』に顔を出してみたかったのである。

 

 もしかしたらラダマンに会えるかもしれない。

 まあ別にこれといって用事は無いのだが。

 コンラート支部がどんな所か見てみたいだけである。


 そう話して一人で行こうとしたが、ライアン達もついてきた。やはり本当に娼館に入る勇気は無いらしい。


 支部の場所はカタリナから教えてもらった通り、分かりやすい場所にあった。コンラート城下町の一番大きな商店街のど真ん中にそびえ立っていたのだから。


「ふえぇ。本当にココ入るの?海斗」


 若干二人は緊張気味だ。そういう海斗も少しばかり圧倒されている。自分のようなちっぽけな冒険者が入っていいのだろうか、と。

 

 恐る恐る入ってみると、これまた立派な受付があって更に緊張度合いが増す。

 が、ここまで来て引き返すのは変だ。

 つかつかと前に進み、受付嬢に向かってどもりながら用件を伝える。


「あのう。支部長代理のラダマンさんは居ますか?」

「お約束でしょうか。失礼ですが、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」

「海斗といいます。特に約束はしていないです」


 鑑定で分かるだろ?

 というツッコミはもちろんしない。

 もしかしたらお客様を勝手に鑑定しない、という表明の現れなのかもしれない。


 受付嬢はしばらく何らかの魔道具を操作していたが、やがて顔を上げて言った。

 

「あいにくラダマンが戻るのは二週間後になります。ただ、海斗さまがいらっしゃった場合は是非お通しするようにと承っておりますので、もし代理のものでも宜しければご用件をお伺いいたしますが」

「い、いえ。それなら良いんです。たまたま近くに来たので挨拶に寄っただけですので。それではこれで」


 本当に用件は無いので、というか挨拶がてら、何か金策に良いアイテムでも売買できないか相談してみようと顔を出しただけなのである。


「ふぃ~緊張したぜ。でも海斗ってすごいんだな。こんな大物と知り合いなんて」

「いやいや、単に何回か会っただけだよ」


 そう言ってから、何回か会っただけで顔パスになるという方がすごいと自慢になってしまうような気もして、少し複雑だった。


 それから少し街中をぶらぶらしてから宿に帰り、ミカから『楽しんで来たようね』みたいな無言のプレッシャーを受けつつも何とか就寝し、翌朝を迎えた。

 

 ギルドにてランソール付近の依頼を探していると、早速ミカが見つけたようで「これにしようよ」と言ってきた。

 

「ちょっと遠回りにはなるが、確かに良いんじゃね?」

「シリ山麓かぁ。このモンスターって俺らにはちょっと荷が重くないか?」

「大丈夫大丈夫。海斗がいるからな」

「あ、そうだな。確かに問題ないな」


 あっと言う間に話しがまとまってしまった。

 海斗にとってはシリ山麓にどんなモンスターが出るのか分からないので反対意見を言う訳にもいかず、そのまま流されてしまった。

 

 依頼内容をみると、Dランク向けの討伐依頼(クエスト)である。しかも『相談可』ではないため、難易度は高そうだ。


 護衛依頼(クエスト)であればギルドの審査は厳しくなるのだが、緊急性のない討伐依頼(クエスト)の場合はよほどの事がない限り、許可されるらしい。自己責任という事だ。また、このように上位ランクの依頼(クエスト)を数多くこなせば、それだけ早くランクアップが出来る。

 

 海斗にとっても望むところであった。


 四人は馬車に乗り込み、シリ山麓に向かってモンスターを退けながら進んで行く。

 護衛対象も居ないし、モンスターのランクも低いため、気軽な旅である。二時間程で、目的の場所に到着した。目の前には大きな山がそびえている。シリの山は、比較的低レベルのモンスターしか住んでいないにも関わらず、鉱物系の素材が多く採取できるため、商人がEランクのギルドメンバを伴って採取に訪れる事が多いらしい。

 

 しかし、ここ最近はサーベルウルフのボスが住み着いてしまったために護衛の依頼(クエスト)がDランクに変わってしまい、そのせいで商人たちが依頼する際の料金が跳ね上がってしまったのだ。


 そのために商人達から討伐依頼(クエスト)が出されたとのこと。


「サーベルウルフのボスって、強いんだろうか」

「私は戦った事あるよ。基本的には今までと同じ戦法で良いと思う。特に魔法を撃ってくる事もないし」


 大丈夫との事なので、ボスが住み着いたと言われているエリアに足を踏み入れる。

 すぐにサーベルウルフが集まって来た。


「近いぞ。気をつけろ」


 ライアンが剣を振るいながら叫ぶ。

 時間が経つとともに、わらわらと数が増えて来る。

 といっても雑魚のほうは大した事は無い。魔術師であるミカでさえ、鈍器で直接攻撃している。


「居た!」


===============

Name:サーベルウルフ

Caption:ボスモンスター

基本スキル:

 - 状態異常耐性

 - 招集

===============


 海斗も同時に見つけ、鑑定を行う。

 前のボスと違って『計略』は無いようだ。



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