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第10話 ランソールの町


 ランソールも、エイベンと同じく大きな町だ。当然ギルドもあるし、色々な店もある事だろう。モンスターのランクもここより1ランク上程度なので問題ない。


 早速手続きを済ませ、出発時間まで待機する。


「こんにちは」


 すると、後ろから声を掛けられた。

 声の主はラダマンだった。


依頼(クエスト)ですか?」

「ええ。ちょっとランソール方面で」

「ご苦労様です。ランソールというと、それなりに遠方ですな」

「馬車で片道二日ですね。どうもトロールというモンスターが巨大化して被害が出ているらしく、Dランクのメンバと共に退治しに行くんですよ。で、オレはちょうどランソールの町に拠点を移そうかと思ってたんで」

「そうでございますか。ランソールは私もときどき立ち寄りますので、その折にはよろしくお願いします。ああそうだ。もし、質の良いドロップ品などが手に入りましたら、私のほうにも是非お声がけください。お値段のほうは頑張らせていただきますので」


 そう言ってラダマンは『フランベルド商会連合』の事を話してくれた。

 彼の所属する商会は、国を超えた組織になっており世界中に加盟店が広がっているらしい。


「加盟店にて『コンラート支部のラダマン』とおっしゃっていただければ、私への伝言や取次ぎが可能でございます」


 それだけ大きな組織なのに支部と名前だけで通じるというからには、彼は商会の中ではかなり上位の役職に就いているのだろう。


 ラダマンと世間話しをしている間に集合時間となったため、彼と別れていよいよランソールに向けて出発した。

 

 海斗は馬車の後方から小さくなっていく町をいつまでも眺めていた。

 

          ◆

          

 ランソールとエイベンの2つのギルドからメンバーを募ったためか、総勢35人も集まり、巨大化したトロールを含むモンスターの群れはあっと言う間に鎮圧出来た。

 

 海斗は依頼を終えてそのままランソールの町へと入った。

 町並みはエイベンと殆ど変わらない。

 

 とりあえずはギルドを見つけて依頼達成の報告を行う。


「ちなみにこれからは拠点をこの町に移そうと思うんですが、何か手続きが必要ですか?」

「称号がエイベンのままで特に気になさらないのであれば、必要ありません。書き換えますか?」

「いえ、特に問題ないのであればこのままで良いです。オレも気にならないので」


 ついでに受付の人に冒険者が良く使う宿の情報をいくつかもらい、ギルドを出た。

 物価はエイベンとほとんど変わらないようで、一泊するのに銀貨4枚~10枚が相場だった。だが、おそらく銀貨5枚程度支払っても食事は満足行くものではないだろう。


 コボルトソードを売り払った金貨2枚に加え、ドロップ品をこつこつと売っでできた今現在の海斗の手持ち財産は、銀貨にするとおよそ280枚程度だ。

 

 それもあって、少々高いが食事が評判で浴室もあるという宿に泊まる事にした。

 一泊銀貨15枚だ。

 これはもう、必死に稼がないといけない。明日から早速ギルドの依頼を受けまくるのだ。だがその前に合成だ。少しでも装備を整えておく必要がある。


 海斗は部屋に入るとすぐにアイテムボックスからドロップ品を全て取り出し、床に並べる。

 

 できれば回復手段をもっと増やしたいところだ。

 現状はコボルトソードで回復は足りているのだが、ダメージを受けた後、モンスターを攻撃しなければ回復しないというのは使いづらい。ロベルトが持っているような純粋な回復スキルが欲しいところだ。


 だが、色々と組み合わせを試してみるが有効なものが中々出来ない。

 最後に、前から試そうと思って怖くてやっていなかった合成に手を付ける事にした。


 一歩間違えば命の危険がある合成である。

 グリーンクレイを自分自身に合成するのだ。グリーンクレイはコボルトソードに回復スキルを付ける事の出来るアイテムだ。試してみる価値はある。この身が変にならなければ良いのだが。

 

 まずは、ドキドキしながら自分を選択する。間違っても先にアイテムを選択するような馬鹿な真似はしない。


「ん?」


 すると、自分を鑑定した時のようにステータスウインドが出て来る。そして、ちょうど照準が『衝撃波』の場所にセットされており、青く光っている。これが選択できるようだ。

 

===============

Name:海斗

Caption:

 - 職業:剣士

 - 所属:ギルド・エイベン

 - ギルドランクE

基本スキル:

 - 衝撃波

特殊スキル

 - 合成

===============


 何処に合成するか指定しろという事かもしれない。

 試しにそのまま『衝撃波』を選択する。すると『衝撃波』の文字が赤くなった。


 そして、次にグリーンクレイを選択しようとして照準を移動したとき、『合成』スキルの場所でまた照準が青くなった。こちらも試しに選択してみると、『合成』スキルが赤く光る。

 

 こ、これは……。

 もしやスキル同士も合成できると言うことか。

 

 と思い、海斗は慌ててキャンセルする。

 もし実行してしまったら合成スキルが消えて大変な事になる。危なかった。間一髪だ。不用意に選択してしまうなんて、どうかしていた。


 今のところはスキルが衝撃波しかないので、もう少し増えてから試すしかない。


 翌朝海斗はランソールの町を探索した。主な目的は防具の購入だ。高い宿代に加えて更に大金が出て行くのは痛手なのだが、命あっての物だ。


 ふらふらと町並みを眺めながら歩いていると『専属従者』と書かれた店が目に着いた。気になって覗いてみると、中にはテーブルと椅子が等間隔で並べられており、所々、人と人が頭を突き合わせて打ち合わせをしている。

 

 様子をうかがっていると店の人が海斗の方に歩み寄って来た。


「いらっしゃいませ。募集でよろしかったでしょうか?」

「はい?」


 よく分からなかったので、変な声で返事をしてしまった。

 それを聞いて海斗が初めての客だと分かったのか、とにかく話しだけでも、と言われて近くのテーブルへ案内される。


「当店は初めてでしょうか」

「はい」

「既に何名か、専属従者を持たれてたりしますでしょうか」

「……えっと。その、専属従者というのが分からないのですが」

「さようでございましたか。専属従者とは、主に冒険者の方が雇う傭兵のようなものです。通常は数カ月とか一年とかの期間限定で契約し、身の回りの世話をお願いしたり、パーティでギルドの依頼を受けたりするのです」


 固定のパーティメンバを持たない冒険者は、依頼を受ける際に人数が足りなかった場合はギルド内で暫定パーティメンバを募るか、もしくは最初から専属従者としてパーティメンバを用意して行くらしい。


「逆に、応募も可能です。その場合はギルドランクやお持ちのスキル、主な実績などの情報を登録いただき、募集されている方と条件が合えばご契約いただけます」


 専属従者はエイベンの町でもあるらしく、海斗が知らなかっただけのようだ。おそらく、自分の力で生活費を稼げない人が『応募』として登録するのかなと思ったのだが、そんな使えない人間を雇う冒険者が居るのかという疑問もある。


 絶対におカネが足りないとは思いつつ、情報だけでも入手しておこうと一番安い価格帯の候補者を出してもらった。


 店員は一旦カウンターの奥に入り、何やら棚からいくつかの書類を集めると、また席に戻って来た。


「こちらが、お客様にお勧めの従者となります」


 そう言ってテーブルの上に並べられた紙には、似顔絵が描かれてあった。

 見ると、女の子ばっかりだ。


「一カ月の料金ですと、こちらの方が金貨15枚。こちらは金貨13枚。一番のお勧めは、こちらの方です。ここだけの話しにしていただきたいのですが、何でも貴族のお嬢様だったとの事です。罪を犯して身分をはく奪されたのではないかと。料金は、金貨28枚でございます」


 海斗は目の前で何が繰り広げられているのかさっぱり分からなかった。


「……あのう。この人たちのギルドランクはどれくらいなのでしょう?」

「えっと。ギルドには登録されていないですね。でもご安心ください。たとえ彼女たちが実力者だったとしても、契約の際に行動の制限が可能ですので、お客様に牙を剥く事は決してございません。夜のお供のほうも大丈夫となっております」

「よ、夜のお供って……。いや、その。うーん。オレはパーティを組んでギルドの依頼をしたいんだけど」

「さようでございましたか。これは大変失礼いたしました」


 そう言って店員は深く頭を下げる。


「お客様はどういったメンバをお求めでしょうか。日常的な家事などの労働作業から、ギルドの依頼達成のためのお手伝い、素材集めなど幅広うございます」

「そうなんですか」

「はい。あとはパーティメンバの募集もございますが、ギルド内でも集める事ができますので、こちらでは少のうございます」


 だがやはり、どんなメンバを募集するにしても非常に高額だと言うことが分かった。今後何かの理由で使う事もあるかもしれないが、今のところは必要ないだろう。

 それが分かったので、今回はやめておくと伝えてそのまま店を出る。


「またのご利用をお待ちしております」


 後ろから飛んで来る言葉を聞きながら、やや冷静になった頭で考えてみると、ここはいわゆる奴隷商なのだと理解した。


 一部、本当のパーティメンバ募集もやっているみたいだが、あの女の子たちは間違いなく戦闘経験がなさそうだった。それに、ギルドでの依頼の手伝いや素材集めなどのメンバ募集という名目だが、その実は使い捨てのメンバーという雰囲気がありありと伝わって来た。

 

 きっと、海斗がギルドランクEにも関わらず強力なスキルを付けていたため、おカネ持ちの坊ちゃんが手ごろな人間を探しに入店したのだと思われたのではないか。


 しかし海斗は今さらながらにドキドキしてきた。

 金貨15枚ほど出せば、先ほど見せられた似顔絵の女の子と一カ月、あんな事やこんな事が出来るのだ。


 これはもう、おカネを貯めるしかない。

 

 いや違くて。

 そんな寄り道をしていたら、時空魔法の入手が遠のいてしまう。

 

 ……果たして本当にそうなのか?

 時空魔法の入手におカネが掛かるのか? もちろん世界中を旅して探し回る必要があるため、それなりの費用は必要だろう。だが、食べ物と眠るところだけの確保であれば、一日あたり銀貨10枚あれば大丈夫だ。


 なら余ったおカネで専属従者を……。

 

 先ほどの店で受けた衝撃があまりに強すぎで、海斗はその後、うわの空で街中を彷徨っていた。


 ふと気が付くと、アイテムショップの前に来ていた。

 もともと防具を買おうと思っていたので、ちょうど良かった。


 その店でレザーアーマーを購入し、更に色々と散策する。

 ほぼ一日じゅう歩いて大体の店を把握したところで日も暮れて来たので宿に帰った。

 その頃にはもう、何とか専属従者の事を頭の片隅に追いやる事に成功していた。


 今日はお風呂に入り、明日からの戦闘に備える事にする。

 グレンの店とは異なり、浴槽の中に水が直接流れるタイプのようだ。どうやって使うのか分からなかったので、カウンターに行って聞いてみた。


「入浴は別料金となってますがよろしいでしょうか?」

「え、ええ。いくらでしょう」

「銀貨2枚となります」

「わかりました」


 そう言って海斗は銀貨2枚を支払う。


「ではこれから注水いたしますが、浴槽の栓は閉めていただいておりますでしょうか?」


 もちろん閉めてないので、海斗は一旦部屋にもどり、栓を閉めてからカウンターに戻った。


「閉めてきました」

「20分ほどで終わると思いますので、水が溜まりましたらコレを浴槽にお入れください」


 そう言って黒い小さな石のようなものを渡される。


===============

Name:魔石

Caption:

基本スキル:

 - 熱付与

===============


「少量で結構ですので魔力を注入してください」


 使い方の説明を受け、部屋に戻って実際にやってみる。

 浴槽に水が溜まってから魔石を投入し、魔力を注ぎ込む。すると確かに水の温度がぐんぐんと上がっていった。ちょうど良い所で魔力注入をストップすると、完璧な風呂に仕上がった。これは大変便利である。銀貨2枚もするが、稼ぎが増えたなら毎日でも入りたいくらいだ。


 翌日から早速、ギルドで依頼を探す。

 宿の費用や食事、風呂、武器防具、そして専属従者――は置いといて――と本当に色々とおカネが掛かる世界だ。まぁ元の世界も同じようなものだが。


 Eランクで受ける事の出来る依頼の中から、報酬の良さそうなものを選びギルドカウンターで手続きを行う。

 

 Eランク3名以上のパーティという条件だったので、パーティメンバ待ちが必要ではあるが、達成報酬が銀貨70枚。馬車の利用料を差し引いても一人あたり、20枚にはなりそうだ。

 

 とは言っても、宿に泊まってお風呂に入り、おいしい料理……ではなくマシな料理を食べれば殆ど飛んで言ってしまうのだが。


 しばらくは風呂と食事は我慢が必要かもしれない。

 

 手続きを済ますと、直ぐに出発となった。

 既に2名が揃っており、パーティメンバ待ちだったようだ。


 依頼は近くのバハムート村周辺に青トロールが住み着き、村人に被害が出ているため退治するというものだった。

 

「よろしく」


 海斗は自分から挨拶した。他の2名も若い男だったので、そんなに年は離れてないのではと思われる。


「こちらこそ」

 そう返してくれた男を鑑定すると、何の変哲もないステータスだった。


===============

Name:サスケ

Caption:

 - 職業:剣士

 - 所属:ギルド・ランソール

 - ギルドランクE

基本スキル:

===============


 ついでに馬を操っているほうのメンバーも鑑定してみる。


===============

Name:ライアン

Caption:

 - 職業:剣士

 - 所属:ギルド・ランソール

 - ギルドランクE

基本スキル:

===============

 こちらも平凡だ。


「これから行く村の名前って何かすごいな。バハムートって。まるで神獣みたいだ」

「何だ知らないのかよ。村のそばにある山のてっぺんにバハムートが居るんだぜ」

「マジ?」

「まぁ出身がエイベンなら知らないのかもな。ランソールの人間なら誰だって知ってるが」

「危険じゃないのか?」

「全然大丈夫だ。たまにBランクの人が戦いを挑んで返り討ちに遭ってるけどな。こちらから手をださなければ襲って来ないので有名だ」


 神獣を倒してギルドランクAに上げようと無謀な戦いを挑む人が年間数名いるのだそうだ。まぁ海斗には関係のない話なので、手を出さなければ安全だと言うのであれば、問題ないだろう。


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