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リボン隠れ鬼  作者: 作空うむき
8/20

4-前

「勝ってさー、なんでそんなに馬鹿なの? パターンって言葉知ってる?」

「でも結人いっつもそこ狙って倒してんじゃん」

「俺には技術があるからねー」

「俺だってあるし」

「ないし」

「ぐっ……」

「いつも言ってるけど勝は目の前の事だけに集中し過ぎー。時間掛けても掛けなくても、結果は“ボスを倒す”って事なんだからもっと落ち着いてやんなよー」

「んなの気にしてたら時間ばっか掛かるじゃねぇか」

「これだから短気はー。まだ小助の方が上手いよー」

「んなわけねぇだろ。昨日今日始めた奴に俺が負けるかよ」

「なら今度対戦しよー。負けたらアイスねー」

「ふん! ぜってぇ負けねぇ!」

「小助、応援してるからねー」

「うん。結人ならともかく勝なら大丈夫だと思う」

「おいコラそれどういう意味だ」

 と口元をひくつかせ小助に手を伸ばした勝だが、その途中で結人に阻まれあれよあれよという間に腕相撲が始まった。突然の事に動揺した勝が見事に敗北すると悔しそうに結人の机に突っ伏す。流石結人だと拍手を送れば結人が白い歯を見せてブイサインをした。

 こうして楽しげな雰囲気を作ってくれる二人に改めて感謝する。

 幹也と夢の一方的な乱闘が終わった後、先に探してくれていた京香達と合流して遅くまで探したが見つからず、仕舞いには延期を決めたリボン隠れ鬼が一週間後の今日になってしまった。

 再び訪れる魔の月曜日。今月に入ってから月曜日は碌な事がない。

 だがそれ以上に小助をやきもきさせたのは夢の機嫌だ。最高潮に重い空気に何度窒息しかけた事か。結局は京香に説得されて渋々小助の事は許してくれたのだが、

 ーーもう一つの方もなくしてみなさい。ただじゃ済まないからーー

 と背後に般若を背負いながら言われたので、残りの一つは何が何でも死守する事を決めた。

 とりあえずその対策としてリボンは先週からずっと結人に預かってもらっている。

 その後も二人と話をしていると結人の隣りから椅子を引く音が聞こえた。つられて顔を上げればそこには随分と懐かしい顔をした莉々亜がいて、思わず顔を反らしてしまう。“懐かしい顔”というのは、小助を見るこの心底嫌そうな顔だ。

「吉田はよっ」

「おはよ」

 くるっと裏返した様に表情を明るくした莉々亜は頬にえくぼを作った。そして下ろされた長い髪を耳にかけるとランドセルから丁寧に教材を取り出していく。片付けの合間にさらさらと零る髪からは、人一人分離れた小助の位置からでも分かるくらいに甘いシャンプーの匂いを漂わせている。そして全ての片付けが終わると髪を靡かせ教室から出て行った。

 その様子をこっそり見ていた小助の腕を結人が指先でつつく。

「あれれー、吉田さんの事熱心に見つめちゃってどーしたのー」

「吉田さん元気になって良かったなと思って」

「あははっ、やっぱり普通に返されたー。でも確かに吉田さん火曜日からずっと休んでたもんねー」

「うん。多分漸くゲームが終わったんだと思う」

「ゲーム? 吉田ってなんかゲームしてたっけ」

「リボン隠れ鬼だよ。だからほら、今日はリボンしてなかったでしょ」

「あー……………そうだっけ?」

「言われてみればそうかも? でもよく気付いたね小助ー」

「うん。ずっと気になってたから」

 ずっと、気になっていた。だから夢の髪型の変化にも気付けない小助が一発で莉々亜の頭にリボンがない事に気が付けた。

 先週少しだけ見た脂で光る頭と酷い顔色。そして大きな赤いリボン。

 もし夢の言った通りならば、莉々亜は一週間近くゲームをし続けていた事になる。それはつまり逃げる側が容赦しなかったという事で、正直幹也達以上に意地悪だなと思った。

 あんな状態の莉々亜を見ても捕まえさせてあげないのだから当然だ。普通遅くても3日くらいで許してあげてもいいのに。

 ーーでも、もう吉田さんのゲームは終わったんだーー

 予鈴が鳴り自分の席に戻ろうとすると、その途中で足が反対方向に行こうとする。いつもの如く先に座っていた夢が不機嫌そうな顔で腕を組み、小助の事を睨んでいたからだ。自然とひくつく口元を抑えつつ座ると、開口一番に夢が言った。

「小松君のせいだからね」

 小助はちらりと結人を見る。まさか預けたリボンをなくしてしまったのだろうか。だが結人がそんなヘマをするとは思えない。絶対に。勝ならばともかく。

 なら別の何かだ。小助は冷や汗を流しながら夢の顔色を伺った。

「あのー……また何かやっちゃっ……」

 ギロリ。眼光が強くなった。

 これは自分で自覚し、尚且つ本気で反省しないと許して貰えないやつだ。だというのに、そうだと分かっているのに、

 ーーヤバい……なんにも覚えがないーー

 小助の頭に先週の夢が思い起こされる。サッと血の気が引いた。

「莉々亜ちゃんが……」

「はい」

「リボン外してみたけど何にも起こらなかったんだって」

「すみま………え?」

「後ユッコも。呪いっぽいのはなーーーーーんにも! 起こらなかったって」

「えっ、でも、それじゃあ……」

「もうどうしてくれるの! 絶対にあたしが一番最初にルール破ろうと思ってたのに!」

「……」

 ぷりぷりと怒る夢を見ながら首を傾げる。

 ユッコという生徒がどういう状況でリボンを外したのかは知らないが、莉々亜の場合無事にゲームを終える事が出来たから外したのではないだろうか。でなければあんなに明るい顔が出来るわけがない。

 もし小助が莉々亜と同じ立場であったなら、あそこまで容赦しない相手を決して許したりしない。

「吉田さんゲームが終わったから外したんでしょ?」

「だから自分で外したって言ってんじゃん」

「おっ怒らないで。……じゃあさ」

「何よ」

「白い側の人達も、もう外しちゃってるよね。吉田さんって結局誰とゲームしてたの?」

 その生徒達はリボンを外した今、何事もなかった様な顔で次のゲームをしているのだろう。だとしたら人ごとではあるが、なんだか許せない。今後の為にも一度顔を見ておきたかった。

 だが小助の思いとは裏腹に、夢は困った様に首を傾げる。

「それは………聞いてないな。あたしとしたことがルール違反に気をとられて聞くの忘れてた。……でも莉々亜ちゃんが外してるってことはその子達も外してると思うよ。だって着けてても意味ないし」

 自分の情報収集の甘さに夢が悔しそうな顔をする。

 夢ならばなんでも知っているのだと勝手に思っていたからあんな風な聞き方をしてしまった。なんだか追求したみたいで申し訳ない。

「そっか。ごめん、何となく気になって」

「ううん。でもそうだよね。誰と遊んだかも聞けば色々な話しきけるよね。もしかしたらユッコと莉々亜ちゃんが呪いを受けてないだけで、他の子は受けたかもしれないし。ーーーーーよし!」

 ファイティングポーズをとった夢から思わず身を引く。

「もうこうなったらルールを破った後にどうなったのかを聞いて回ろ。それで自分で検証するの。そうすれば皆が知らない情報を手に入れられるかもしれないじゃん」

 キランと目を光らせた夢が早く一時間目終われと念を飛ばし始めた。その横で小助はホッと胸を撫で下ろす。

 ーー三発くらいは来ると思ったーー

 腕を組んでる夢を見てからずっと、小助は腹に力を込めていた。

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