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超短編

お姫様の苦悩。

作者: しおん

私は一国のお姫様。

名前をマリーという。


お姫様だからなんだ!

そんな失礼な事、考えてはいないでしょうね?


この国の姫であるということを私は誇りに思っているし、この国の姫である為に様々なことを経験してきたわ。

それは花嫁修行と呼ばれるものであったり、護身術と呼ばれるものであったり、礼儀作法や教養などの王族としての嗜みであったり、本当に様々よ。

その一つ一つは些細な事でしかないのだけれど、それの積み重ねによって得た膨大な知識と(もたら)された結果は、私が私である為の糧となっているのだから、無駄な努力などではなくってよ。


そんな無駄話をする為に私はこんな時間を設けているのではないの、実は悩み事というのか、心配事というのか……とにもかくにも相談したい事があるのよ。


それは私の世話係をしているレインハルトという騎士についての事なのだけれど、彼は私より五つほど年が上で私の父である国王に忠誠を誓っている。もちろん母にもよ?

私が姫という立場である以上、彼は私の命令に従い続けてしまう。彼は私のどんな些細な要求も聞き漏らさず叶えてしまうものだから、私は不用意な発言が出来ないの。

例えばだけど、私があなたを殺してほしいと口にしたとすれば、彼は何も言わずに姿を消してあなたを始末しにいくでしょうね。そして何食わぬ顔をしていうのよ、少々遠くへと旅立っていただきましたと。


そんな彼だから、私は自らの人生において最大の悩み事を抱えてしまった。

私は王の娘という立場でありながら、一介の騎士に恋をしてしまった。こういう事が許されない国というわけではないのだけど、彼がどんな命にも嫌な顔一つせずに従ってしまうような人間だから、私を好き好んでいなくても「喜んで」と了承をしてしまうのではないかと不安でたまらない。彼の意思を無視してまで婚約したいと思えるほど、私は身勝手にはなれないしそんなに強欲な人間でもないわ。


過去、王家には自分の欲を満たす為に本人の意思を無視して側室をもうけた人間もいる。その側室の生涯が幸福であったのかなんて私には分かり得ないことではあるけれど、少なくとも私がそれをされたのなら不愉快極まりないわ。


私が言いたいこと、何となくわかってきたでしょう?


私の相談事というのは、私が愛する騎士レインハルトにどのようにこの思いを告白すれば、彼の本音を耳にすることができるのかというものよ。


こればっかりは今まで培ってきた知識を寄せ集めても、名案どころか案の一つも思い浮かばない。


私は人間の少女と呼ばれる部類の存在であり役職はお姫様なんていう大層なものだけれど、恋する乙女としてはどこにでもいる子とさほど変わらないのよ。


ーー恋愛経験なんて、積んだことないんだから。




読んでくださりありがとうございます。

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