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月の民の伝説

作者: 暗倉

まず、ほぼ確実に初めまして。

この作品は、一応竹取物語の二次創作となります。

また、童話を今回いろいろと作ってみたいなと思います。

早く長編を作りたいと思っている作者ですが、なかなか捗らず。

と、あまり関係ない話は置いといて。

読んでいただいた方には、楽しいというより、そんな展開もありそうだな、という程度で、自分は充分です。


月には都があります。そして、月には二つの伝説が残っています。

昔、女が月から降りました。女は、赤ん坊まで若返ってから降りました。月には飲むと若返られる薬があるのです。不死の薬がある程ですから。

本来、月から出ることは許されないのが月の民なのです。

しかし、「地上の善い行いをした者の助けをせよ」というのと、いずれ帰るという制限付きで降りることが出来ました。

女は降りたら竹に入り、ただただ見つかるのを待っていました。

その彼女は、優しいお爺さんに見つけられ、お爺さん、お婆さんにかぐや姫と名付けられ、すくすくと成長しました。

彼女に帰る時が来て、天人が迎えに来ました。かぐや姫は、悲しみながらも帰りました。

そして、彼女は月の都でその話をしました。地上で起きた物語を。

彼女は、本にも記しました。そして物語は月の民の中で伝説となりました。そして、彼女は自分をかぐや姫と名乗りました。月の民には名前はありません。名前を持った最初の民でした。

何故彼女がそれらのことをしたかといえば、自分の経験した過去を忘れない為でした。

例え忘れても、誰かに思い出させて貰う為です。月の民には、時間というものが地上の人々の何百倍もの速さに感じられるので、忘れたくなくても、忘れてしまうのです。

彼女にとっては、短くても大切な大切な時間だったのです。

彼女の物語はここで終わり。これが二つのうちの一つの伝説です。



次から始まるのは別の月の民の話。

月の都にある女がいました。

その女は、かぐや姫が記した本を読みました。かぐや姫は、相当有名になっていました。

そこで、彼女はその有名なかぐや姫が記した本を読んだのです。

そして、彼女は対抗心を持ちました。

自分の方がもっと凄い話になってやる、と思ったのです。

彼女は、地上に降りようとしました。しかし、それを許す者はいません。

彼女はどうしたか。彼女は、勝手に月を降りたのです。

若返った彼女は竹では退屈だと考え、雪山の雪に埋まりました。

彼女は、かぐや姫と同じことをしていては駄目だと思い、彼女とは違う生活をしようとしたのです。

なにしろ、かぐや姫の伝説を超えようとしているのですから。

しかし、彼女は誰にも見つかりません。なぜなら、雪山なんて場所に誰も来ることはないからです。

彼女は寒さに耐え切れず、山を降りて田んぼに隠れました。

やがて、彼女は見つかりました。

お米を作っているお爺さん、お婆さんに。彼女は、泥の中にいたため汚れていましたが、輝いていたので、お爺さん達は田んぼの神様と思いました。

お爺さんとお婆さんは、田んぼで見つけた彼女を稲神様と呼びました。彼女は、姫より神の方が偉そうだと大喜びしました。

やがて、彼女は美しく育ちます。月の民とは、誰しもが輝き美しいのです。

かぐや姫と同じように、彼女の元へたくさんの男達が求婚しに来ました。彼女は、それを全て受けました。ここでも、かぐや姫とは違うことをしようと思ったのです。

しかし男達はやがて怒り始めました。あまりにも相手が増えて彼女は疲れていたので、全員に等しく振る舞うことが出来なかったからです。

また、彼女はそのことに必死で、お爺さん、お婆さんに何もしてあげませんでした。むしろ、お爺さん達の生活は苦しくなりました。

嘘もたくさんつきました。なんでもかんでもかぐや姫とは違うことをしようとしました。

彼女は全ての男に嫌われ、お爺さん、お婆さんにも疎まれました。

なにがいけなかったのか。彼女は考えました。かぐや姫のような退屈なものではなく、自分なりの、凄い話を作ろうとしただけなのに。

何故、皆から嫌われないといけないのか。自分の場所は地上には無かった。

彼女は、自分が悪いとは全く考えませんでした。彼女は、地上が悪いと考えました。

彼女は、やがて帰りたいと思うようになりました。

しかし、誰にも言わずに勝手に来た身。迎えなど来る訳もありません。

そう思っていましたが、突然、彼女のもとへ天人が来ました。

「お前を迎えに来た。帰りたいのだろう?」

彼女は、その言葉にとても喜びました。

そして、彼女はまだかぐや姫とは違う者でいようとしました。

「お爺様、お婆様、私は翌日、太陽から迎えが来ます。名残惜しいですが、お別れです」

彼女は最後の嘘をつきました。月の民ではなく、太陽の民と。

お爺さんも、お婆さんも、二人とも悲しそうにしました。でも、それは彼女が神様では無かったからでした。最初は、優しいお爺さんとお婆さんだったはずなのに、彼女のせいで彼らの優しさは薄れていってました。

善良な彼らは、善良ではいれなくなりました。彼らは、彼女と別れられることが少し嬉しかったのですが、なんとかそれをおくびにも出しませんでした。

そして、翌日迎えが来ました。

見送りに来た者はいませんでした。

お爺さんとお婆さんでさえも。

「それでは連れて行く」

彼女は手紙も何も残さずに、天人に連れられていきました。彼女には、地上に対する未練など何もありませんでしたから。

地上から離れていって、そのまま天人に連れられている内に彼女は気づきました。

「私は何処へいくのですか?」

天人達が向かっているのは、どう見ても月の方向ではありませんでした。

「知りたいか?」

天人は、少し意地悪そうな、皮肉げな顔をして彼女に尋ねました。

「ええ」

彼女は、早く教えてと急かしました。急に心配になったからです。

「我らは太陽の民。お前はこれから太陽へ向かうのだ。そして、灼熱に焼かれるがいい」

彼女はそれを聞いて驚きました。そして怒りました。

「どうして一体私がそこへ?私が一体何をした?」

天人は無慈悲な声で答えました。

「お前が一体何をしたか。地上へ勝手に降りて行き、好き勝手に行動し、更には善良な老人に苦労させ、嘘を散々ついた。これ程あるのに思い当たらないか。それにお前が言ったのではないか。太陽から迎えが来ると」

彼女は初めて後悔しました。しかし、後悔は怒りに、そして憎悪に変わりました。全てはかぐや姫が悪い。私が本を読まなければこうはならなかったと。

太陽はだんだんと近づいてきます。

熱い熱い熱い熱い熱い。彼女はそれしか考えられなくなりました。

そうして、彼女は燃え始めました。

「お前の心は悪だ。月の民ではいられない。聖なる太陽によって灼かれるがよい」

太陽の天人のその声も、彼女には聞こえませんでした。

彼女は、恨みの心と共に炭になっていきました。そして、その炭さえも消えました。残ったのは静けさだけです。

この事件を聞いたかぐや姫は悲しみました。自分のせいでこうなってしまったと。

彼女は、嘆いて太陽の天人に頼みました。

「どうか、私も太陽で灼いてください。私の罪は彼女よりも深いです」

太陽の天人は困りました。月の天人とも相談しましたが、結局かぐや姫は太陽に連れていかれませんでした。

罪悪感で押し潰れそうな彼女は、一人で太陽へと向かっていきました。

そして思いました。会ったこともない彼女は、私のせいでこれ程の熱さに灼かれたのだと。

彼女は、静かに燃えていきました。彼女の体も、記憶も、心も、灼かれていきます。

彼女はただひたすらに祈っていました。既に灼かれてしまった彼女の冥福を。地上にいる人々の無事を。

そして、彼女は燃え尽きました。

彼女が燃えたあとに残ったのは、同じく静けさ。

けれども、そこにはたくさんの感情が渦を巻いていました。

かぐや姫は、誰にも言わずに来たので、誰もかぐや姫の行方を知りませんでした。

しかし、誰もが気づいたのです。かぐや姫は、太陽に灼かれに行ったのだと。

こうして、千年程経った現在でも、月の民には二人の月の民の女性の、二つの伝説が語り継がれています。

片方は、地上にも伝わっているかぐや姫の話。

もう一つは、月の民だけに伝わる、女性の物語。

彼女らが燃えたあとに残ったのは、静けさだけではなく、語り継がれる伝説でした。







最後まで読んでいただきありがとうございました。

童話が、どういう風にしたらいいのかよくわからず、まず既存の作品から作ってみたわけですが、オリジナルも作りたいと思います。

冬なので、やはり冬物が書きたいです。

それでは、改めましてご愛読ありがとうございました。

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