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下手ですみませーん〃OTL〃
私は何時も、いや、毎日同じ夢を見る。
私は、薄暗い夜道を一人で歩いている。
目の前には何かに怯えた様な女性が踞っている。
心配して近寄ると、脚に怪我をしているようだ。
幸いな事に、私の鞄には消毒薬と絆創膏が入っていた。
手当てをしようと手を伸ばすと、凄い力で手を振り払われる。
この女性は酷く怯えているからと、自分にできる限りの笑顔で安心するように優しく話しかける。
それでも女性は私から逃げる様に後ずさる。
私は不思議に思い、立ち上がって一歩、また一歩と女性に近づいた。
あと少しというところで、女性は恐ろしい物を視ているかのように眼を剥き身体を硬直させ、ガバッと立ち上がった。
その瞬間、女性の細くて白い首に切れ目が入り、沢山の血が呆然と立ち尽くす私に向かって吹き出してきた。
沢山の血は私の身体に触れると、吸い込まれるように膚に入りこんでくる。
余りの気持ち悪さに気絶してしまう。
そこで、目が覚める。
布団を弾き飛ばし、自分の身体を触り、問題がない事を確認してから、ようやく安堵する。
「イヤァァァァ!!!
ハァッ!?いやっ!?何、????
………夢?………ふぅ…」
部屋の中はいつもと同じで、差し込んだ朝日に輝いて、雀の呑気な囀ずりがベランダからする。
階下では、母の食事の作る音が聞こえ、束の間まったりと過ごす。
ゆっくりと着替えて下に降りて、両親と朝の挨拶を交わす。
「おはようございます、お父さん。」
「おはよう。今日もいい天気だな。」
「おはようございます、お母さん。」
「はい、おはよう。」
テーブルに腰掛け、朝ごはんをゆっくりと食べ始めた。
すると母が困った顔をして、私に近寄ってきた。
「ねぇ、また酷く魘されてたわよ。大丈夫なの?」
両親の部屋は私の部屋の隣で、母は私と父のお弁当を作る為、いつも早く起きるからだ。
いつも自分の事の様に心配をしてくれる。
そんな母に余計な心配をかけたくなく、わざと元気に振る舞う。
「大丈夫よ♪お母さん。いつも心配してくれてありがとう。大好きよ♪」
私の空元気なんて、お見通しだと思うけど、それ以上は追及しては来なかった。
父が読んでいた新聞をテーブルに置き、テレビをつけた。
ニュース速報で、私の家の近所で殺人事件が起きたことを告げている。
それを見た父が、こちらを向いて私に話しかけた。
「おい、これはお前の通学路じゃないか?世の中物騒だから、お前も帰るときは友達と一緒に帰ってくるんだぞ。」
そんな父の言葉に、私はテレビに目を向ける。
…平和な住宅街に突如として現れた、謎の殺人鬼。
これで死者は三人目。
いずれも若くて健康的な女性が被害に会っている。
手口は恐ろしいぐらいに残忍かつ大胆不敵。
細い首めがけて鋭利な刃物で一直線に掻ききられている。
しかし不思議なことに、すべての現場に血の跡が一切も残っていないという。
もちろん、死体にも一滴の血はなく、まるで干からびたミイラのようだ。と専門家は喋る。
そのニュースを見た途端、私の背にゾッとする悪寒が走った。
今朝みた夢が甦ったからだった。
気持ち悪い程に繋がる二つの出来事に、暫し瞑目して気持ちを落ち着かせる。
(大丈夫、大丈夫。私の夢とは、なんの関係もない。たまたま、前に見たニュースをみて、それに触発されて、今日は変な夢をみちゃったんだ。大丈夫、関係ない。)
ふぅっ。と、息を短く吐き出し、完璧に気持ちを落ち着かせ、父と母に挨拶をする。
「では、行ってきます。」
「あぁ。気を付けるんだよ。」
「…いってらっしゃい。気を付けて、ね‥。」
母はまだ私の態度に不安を感じているらしく、心配そうに見送ってくれた。