表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さらっと読む短編集

作者: 麦ちよこ

バベルの塔とは旧約聖書に出てくる塔の事を指す。

人々が高い高い塔を建て、神はこれが建てられた原因は言語が統一されているからだろうと人類の言語を分散した。

言語の分かれた人々は意思疎通が取れなくなり混乱をもって世界各地に散っていく。

神への挑戦として建てられた塔に怒り神罰を下したのであろうというものが一般化された通説である。

 人類が持つ科学という力は時を重ねれば重ねるほど進化をしていった。それはあらゆる動植物の生態が長きをかけて変化する様よりも速く、多岐に亘った。誰かは言った、「まるで『神』を目指しているようだ」と。そして古典を知る民話学者はこう答えた、「ああ、そのうち『バベルの塔』が作られ、人や言語が分散されるな」と。

 人類はありとあらゆる想像の産物を実現化していった。きっとこんなもの使わぬだろうというものから、こんなもの作ったらいけないだろうというものまで。科学は進歩しすぎたのだ。そして人間の持つ想像力というものは枯渇しかかっていた。人類は発展を続けることを使命のように思い、その発展を社会生活の基盤としていたからである。資源も枯渇し、発想も枯渇し、新たなものが生み出しにくくなってしまった。

「神を作ろう」

 それは避けようのない結論だったのかもしれない。今まで彼らはそれを凌駕し続けることを糧に生きてきたのだ。最終結論として『作品』候補に上るのは最早宿命のようなものであった。


 神を作るためにありとあらゆる資金が投げ込まれた。他にめぼしい『作品候補』がなかったのも一因かもしれない。近年稀に見る一大プロジェクト。人類は大きな期待を抱いた。巨大な資金は巨大な組織も作った。科学者だけでなく、より原始的な神をも知る民俗学者、未だに敬虔な信徒でもある宗教学者。関係ありそうなものからなさそうなものまで、ありとあらゆる『神』を想像する者、創造する者が集められた。組織の外ではプロジェクトが発表された段階で、自分の宗教の神、自分が思う神について討論し、白熱していた。

 ある宗教団体はまだ完成もしていないのに「あそこで作られる神は我が主神様の情報や特徴を継承なされる。最早我らの神が宿るも同じことなのだ」と、暴走した。それに反発して自分達の神であると主張するものも出てきた。また新たに「色んな神様が統合されるのだ。新たな神のための宗教が必要だろう」とあちこちで新たな宗教まで立ち上がってしまう。それら加えて「幾ら科学が発展したとしても神は現世にいらっしゃってはならない存在なのだ」と宗教やプロジェクトまでをも邪魔しようとするものも出てきた。

 世界は混乱した。そして数々の集団が思想毎に別れてプロジェクトに影響を出そうと躍起になった。

「ああ、作らなくとも『バベルの塔』が壊れていくようだ」

 プロジェクトの中枢にいる者たちは民話学者の言葉に戦慄した。

「確かにその『バベルの塔』の情報も神のAIに取り込んでいる。このまま完成させてしまえば我らの神はそれを当たり前の行動と思い実行しかねない。他にも神が我らに牙を向ける要素が幾らでも思いつく。完成させるに当たりその思想にはプロテクトをかけよう」

 こうして彼らは自分達の作品である神に、人や大地に危害を加えぬよう『安全設計』の神を作ることとした。


「こんなの神じゃない」

 出来上がった神は平凡であった。人を殺めず、人々が住む大地も破壊できず、ありとあらゆる知識は持っていたが生物に平等である為に助言を授けぬことも多くあった。

 最初は全知全能の神を作ろうとしたのだ。人類の為にかけたプロテクトがそれを許さなかっただけなのだ。


「でも、私は嬉しいよ。こんなに多くの神の話を知っている友人ができた」

 民話学者達だけは大変喜んだ。

久しぶりに星新一の『神』を読んだため書いて見た。

現代の流れで行くとあの『神』を作るにはプロテクトかけられるななんて思っただけでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ