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1−3. 侯爵家の夜 (3)

 当主マーティン・クラレンス侯爵が大声で護衛達を呼び、女は縛り上げられ、短剣は後で調査する為に保管された。

「私と下女しかこの階にいない事を知っている誰かが手引きをしたと思われる。皆、部屋から出さない様にした後、一人一人聞き取りを行う。何か質問があるか?」


 すると、護衛の一人が声を上げた。

「その女が今おっしゃった下女ですか?見覚えが無いのですが」

護衛達が私を疑う様な目で見た。それに対して当主が答えた。

「今晩から仕事に就いたばかりで、敷地内の地理も分からないとの事だ。説明してくれ」


「下女のメアリです。本日から務めている事は執事様とメイド長がご存じです。そういう訳で、私が手引きをしようにも館内も通用門からのう回路も分かりません。また、見つかった時にむしろ疑われる立場ですから、私が手引きをする事は実行犯から見たら危なっかしい手だと考えます。むしろ、もっと古株、または恨みが発生した直後から潜入していた者が手引きをしたと思われます」

「そういう理由だし、そもそも実行犯を蹴っ飛ばして私を助けてくれた以上、むしろ共犯の恐れは最も少ない人物と考える。これを軸に捜査を進めるから、意思統一を頼む」


 先ずは実行犯の女の聞き取りを行った。護衛の男が縛られたままの女に活を入れた。女は虚ろな目をしていたが、やがて自分の置かれた状況を察したらしく、クラレンス家当主マーティンを恨めし気な目で睨んだ。


 だからマーティンは尋ねた。

「君にも言い分があるだろうから、名前、家名を述べた後に僕を殺すのが正当と思う理由を述べてくれ」

女は怒りを言葉に込めて吐き出した。

「あんたの兄が妊娠させて捨てたステファニー・ボイルの姉のドーラよ!妹に聞いたのよ!あんたの兄は侯爵夫人の座を約束して身体を求めておきながら、妊娠したと打ち明けた途端に姿を晦ましたのよ!それをあんた達兄弟の父親に話したら、証拠がないと突っぱねた!いくら侯爵家が偉いからって、ボイル家を馬鹿にし過ぎでしょ!だから家として家、侯爵家に復讐する為にあんたを殺すのよ!」


 マーティンは少し考えた上で口を開いた。

「貴族議会は二親等より長きに渡って恨みを引き継ぐ事を禁じている。その点はどう考えているんだ?」

「そんな人の感情を考えないルールなんて守れるか!それなら逃げ得じゃない!

そんなの絶対に許さない!」


 被害者感情を思うと、その場にいる男達は何も言えなかった。それでも殺されたくないマーティンとしては断罪するしかなかった。

「感情論で動いている事は分かった。でも、この件でボイル子爵からの申し入れは今まで無かった。貴族議会の告訴否決以来はね。これはボイル家の総意でやっているのか?」


「父親が家の女の事で事を荒立てる訳ないじゃない!これが長男が自殺に追いやられたなら家が潰れても復讐するだろうに!」

「長男なら跡継ぎだから、家の存続に関わるからそうだろうけど。つまり君も、長男以外の場合は矛を収める事だとは分かっているんだね?」

ドーラ・ボイルは涙声になった。

「だからって泣き寝入りなんか出来るか!それじゃ妹が浮かばれない!」


 マーティンは溜息を吐いて、話を纏める事にした。

「言い分は分かった。これが感情論で、家ではなく個人で動いていると言う事もね。でも、それだけにボイル子爵家には正式に抗議する事になる。その前の自殺は許されない事は理解してくれ。もうそういう行動を取った以上、君が責任を取るべき事である、それを両家で同意する必用がある。ボイル子爵との話し合いの席で君の言い分を披露する場が設けられる。くれぐれもそれまでは自殺はしないでくれ。ボイル子爵の前で証言をしてくれないと、最悪、貴族家同士の戦争になるからね」

さすがにドーラ・ボイルは黙った。


(そう、だから発覚する前に家のリーダーであるクラレンス侯爵本人を殺す必要があったのよ。迷っている暇は無かった筈。リーダーを殺してしまえば、体勢が整うまでに実家が謝罪し、釈明する時間がある。行動を起こしたら、即死させないといけなかった)

そうは言っても、メアリとしてはドーラに同情する気は無かった。これから自分に責任を押し付ける証言が出て来る筈だから。


 この場合、賊が家に入り込んだ責任が先ず問われた。だから守衛の任に当たっていた者達がまず呼ばれた。メアリが通用門から入って来た時から、通用門の警備をしていた護衛達は代わっていなかった。


 最初に証言した護衛の一人は、今日から務め出したメアリに鍵を貸して、トイレ休憩に行ったと証言した。


 この男をそのまま隔離して、同じ任務にあたっていたもう一人に聞き取りを行った。すると、その男も1時間前に10分ほど守衛を代わってもらったと証言した。


 それを聞いた後、衝立の影に隠れていたメアリを呼んで、マーティンは口を開いた。

「守衛の任に就く者が、下女に守衛を任せるってあまりに嘘臭いだろう」

「そうですね。但し、彼等は私の顔と名前を知っています。入門した時に話しましたから。だから後で面通しをした時に正しい証言が出来ます。ここからの他の人の証言も注意深く聞いてください」

マーティンは深く頷いた。

「うん。もちろん君に濡れ衣を着せる者達は許さないから、安心してくれ」

(いや、満更濡れ衣とも言い切れないんだけどね。今回は仲間で無いと言うだけで)

 インフルにかかってタミフル飲んでた時に考えたお話です。色々いっちゃってるところがあるかもしれません。もちろん、一ヶ月かけて少しは練ってはおりますが。

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