表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンパイア・パレヰド *12,22時頃更新  作者: 創作
第二章_刻々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/30

28.都合のいい弁明

 《——千智》


 私は気がつくと病床にいた。


 ——ゔ


 鈍痛が頭を打つ。暫く(うずくま)るような体勢でいると次第に意識が明瞭になり、視界も開けてきた。


 左腕からはカテーテルが走り、管を辿るとスタンドに吊り下がるパックが見える。


 一夜明けたのか、部屋の窓からは陽光が差していた。


 ——あ


 瞬間的に頭の中にある光景がフラッシュバックした。


 …ああ、そうだ


 綾人は『同族殺し』だった。意識を失ったままの彼を問い詰めるように拳をかざす私を何者かが気絶させたのだ。


 改めて事実を認識した私は思わず、頭を抱えて深く息をつく。


 数少ない安心出来る場所だった。楽しかった日々が逆転し、暗い影を落とす。


 『同族殺しは君の近くにいるよ』


 脳裏で死に際に愉快な笑みを浮かべていた彼の言葉が想起される。


 あの吸血鬼は私を知っていた。『神崎千智』。犬塚綾人の恋人である私を。


 そして気づいた。『イェグディエル』と呼ばれる祓魔師が『神崎千智』である事を。


 吸血鬼と祓魔師の恋仲。一般人とのそれよりタチが悪い。今回に限っては方や『イェグディエル』。方や教会にも目を付けられていた『同族殺し』。


 正直、目も当てられない。


 吸血鬼蔑視の社会的風潮もあるが、何より私が私自身を許せなかった。


 血の衝動で数多の命を奪う吸血鬼。能動的な『嗜好派』、衝動に振り回される『穏健派』。差異はアレ、『ある日人の命を奪う』という意味では同じだ。


 私はそんな彼らの存在を許せなかった。だから、剣を取ったのだ。


 …それだというのに


 最愛の人が吸血鬼。もう頭がどうにかなりそうだった。


 私は思考から逃げるように体を大の字にしてベッドに倒れ込む。


 その時、個室の扉が開いた。私は慌てて姿勢を畳み、掛け布団を引き上げる。


 「…千智さん、お目覚めになられましたか」


 医官の女性は静かに呟くと私の周りに点在する医療用モニターをチェック。それを終えると近くの丸椅子を引き寄せて座った。


 「千智さん、具合はいかがですか?」


 「ええと、頭が少し痛いのと体が重いくらい…でしょうか」


 「典型的な神聖力の過剰使用の症状ですね。話によれば、非番の折りに礼装もなく吸血鬼を追走したとか。…あんまり無理はしないでね、千智ちゃん」


 「すみません」


 私は柔らかい言葉に会釈を返す。すると彼女は口元に笑みを湛えた。


 後ろでお団子に纏めた髪に赤い丸眼鏡がよく似合う医官さん、坂口さんは昔からお世話になっている方だ。


 それこそ新人の頃に無茶ばかりするものだからよく彼女に叱られていた。


 それから幾らか雑談を挟むと話題は本筋に移った。


 「千智ちゃん、あの場で何があったのか、聞かせてくれる?」


 坂口さんはクリップ付きのボード片手に事情聴取を始めた。


 私は物思いに耽るように視線をやや下に傾け、左手を摩りながら、話し始めた。


 路地裏に倒れる女性を見つけ、吸血鬼を発見し、追跡した事。交戦し、たった一丁の銃で戦った事。()()()現場に現れた『同族殺し』に窮地を助けられ、私は神聖力の長期使用で気を失った事。


 彼女は相槌を打ち、時々先を促しながら私の話を聞き届ける。一段落すると彼女はボードと私のベッドの上に置いた。


 そして私を見つめた。視線が合う。ただじっと見つめる。坂口さんの瞳に吸い込まれるような感覚に襲われ、まるで時間が引き延ばされたような気分になる。


 そうして、しじまの中で彼女は言った。


 「…やっぱり」


 「ねぇ、千智ちゃん。ちょっと嘘ついているでしょ?」


 私はその言葉に思わず、心臓が飛び上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ