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ヴァンパイア・パレヰド *12,22時頃更新  作者: 創作
第二章_刻々

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26.急死に煌めく閃光

 …何もないでくれよ


 ようやく到着し、遮蔽物越しに戦況を見る。戦いは中遠距離の牽制から近接戦へと様相を変えていた。


 …おかしい


 すぐに気づいた違和感。視線の先には千智が握る拳銃があった。スライド部分が下がったままになっている。


 …弾切れ


 再装填する様子もない事も考えると、予備弾倉はすでに尽きている。今は銃自体を鈍器のように扱い急場を凌いでいるものの幾ら『七天の担い手』と言えど、この状況は厳しい。


 一見、拮抗しているように見えるが、それは千智の駆け引きが上手いだけだ。実際は防戦一方の状況。神聖力による身体強化もいつまで持つか。


 攻防がしばらく続いた刹那。遂に恐れた事が起こった。千智の動きが鈍くなったのだ。


 敵はその瞬間を見逃さなかった。


 血で強化した拳を突き上げ、銃を握る手をカチ上げたのだ。

 彼女の体は大きく後ろに反り、体は無防備。


 …まずい


 『——やめろ、綾人』


 ミロの制止を促す声。

 しかし、それに反して体は勝手に動いていた。その武器を握った瞬間、手には激痛が走る。だが、俺は構わず足を踏み出し、投げ放った。


 間もなくそれは眼前の吸血鬼を射抜く。瞬間、その体は氷瀑ひょうばくのようなものに包まれたかと思うと、刹那に瓦解し、中から宝石の原石のような結晶体が現れる。


 その奥には何が起こったか分からず、動揺する千智の姿が目に入った。


 …よかった


 彼女が目に入ったその時、安心からか気が抜けるのを感じた。裂傷が入り乱れたような無数痛みが右手から生じ、それに耐えかねた俺はそのまま意識を失った。



 *  *  *



 《——千智》


 …っっ!


 私は焦っていた。銃は弾切れ、相手の追跡と読み合いでたっぷりと三十分は使っている。いつもなら、早くて十分遅くても二十分で応援が来るはずだ。


 …何かイレギュラーが起きてる


 相手の攻撃を避け、銃身で逸らしたりとどうにか拮抗を演じているが、そんな危うい状況がいつまで持つか。

 それに神聖力の励起状態を体がいつまで保てるかも分からない。


 「アレ?ちょっと動きが鈍くなってきた?」


 相手が首を傾げながら、嘲笑するように口角を上げる。


 「なら、そろそろ食事を邪魔したツケを払ってもらおうか!」


 その時、男の速度が飛躍した。血液操作により瞬間的に血流量を上げたドーピング。


 胸を狙った一撃の最中、私は反射的に銃身で行手を阻む。間一髪、急所は免れたものの上体は大きく逸れ、跳ね上がった。


 ——しまった


 私は大きく目を見開く。


 チェックメイトだ。


 敵はすでに体勢を整え、左手を握り込んでいる。私に成す術はない。死を待つだけの数瞬は驚くほどに長い。


 拳が切り裂く空気、見据える男が作り出す愉悦的な笑み。


 いよいよ拳が私の胴に到達しようというその時、驚くべき事が起きた。何処からか飛来した槍が男の体を突き刺し、瞬く間に絶命させたのだ。


 …あの槍は⁉︎


 余りある神聖力が起こす『結晶化』。それを起こせるのは真の聖武器…『神器』のみ。現存する聖武器でそれが可能なのはたった一つ。


 ——聖槍『ロンギヌス』


 …行方知れずの聖槍が、どうして


 だが、頭がうまく回らない。疑念の追求をしたいのは山々だが、途轍も無い疲労感が込み上げてくる。


 それもそのはず。


 そもそも神聖力の励起は常時行うものではない。本来なら、出来ないものを修道服などの礼装が可能にしているのだ。


 体がふらつき、私は思わずその場で崩れる。

 その瞬間、私は目を見開く。結晶の間から横たわってる人物が瞳に飛び込んでくる。


 …あれは


 何度も瞬きを繰り返し、目を拭っても目の前の状況は変わらない。黒のスラックスに水色の襟付きシャツ、紺のニットセーターにロングコート。横顔に背格好。


 …どうして、綾人が倒れてるの?


 答えはすでに出ていた。だが、この目で見なければと思った。


 私は重たい体に喝を入れ、ゆっくりと立ち上がると恐る恐る歩を進める。


 ようやく彼の所に至ると私は地面に引きつけられるように膝をついた。


 左手で体を支え、右手で顔を隠すようにかかる彼の髪に手をかける。


 …やっぱり


 手に伝わる感触が現実である事を指し示す。何故、どうして。疲労から朦朧とする頭を疑念が次々と駆け抜けていく。


 その時、膝にふと生温かさを感じた。


 徐に視線を上げると彼の手が目に入る。その手には裂傷が幾重にも走り、所によってはチリリと真紅の火花が走っていた。


 …嘘


 それは神聖力を受けた吸血鬼特有の症状。体の一部が灰塊となろうとしている兆候だった。


 綾人は——吸血鬼


 私はその事実にただ愕然とした。

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