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ヴァンパイア・パレヰド *12,22時頃更新  作者: 創作
第一章_欺瞞

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15.望まれぬ邂逅

 「…そこを動くな」


 宵闇の静寂の中に凛とした鈴音のような透き通る声音が轟いた。決して大きくはないその声。しかし、不思議な圧がある。俺は徐に半身となり、来訪者に目をくれる。


「貴方、聖教の人間…ではない。格好が違う。ならその武器は何?」


 自身と俺と双方に問うているのか俺を訝しむ言葉は何処か自問的だ。


 相手は修道服に身を包んでいる事から聖教の修道女シスターなのは明らか。装備は多分、自動小銃マシンガン。空はすでに雲に覆われ、一帯は闇。互いに薄らとしか認識できない。


 だが、驚嘆すべきはその威圧感、佇まい。一見で分かる。彼女はかなりの強者だ。


 脳裏にはすぐにミロが送ってきた『七天の担い手(セブン・フォース)』と目される彼女の姿が浮かんだ。


 …聖教と戦う義理はない


 撤退しようと『影』をよどませる。転移のような大立ち回りは出来ないが、影を用いての移動くらいなら俺にも出来る。


 「…『同族殺し(エピュラトゥール)』。貴方が……?」


 困惑を滲ませる声にふと既視感を覚える。威圧感、攻撃性。そういったものを排すると脳裏には彼女が、千智の顔がチラついた。だが、それはあり得ない可能性だとすぐに切り捨てる。


 …こんな所にいるわけがない


 いつもの彼女からはこんな敵意や圧なんてものは感じない。雰囲気がまるで違う。それとも隠しているのか。


 混乱する。


 頭はふつと湧いた思考をどうにかして否定しようとする。体に動揺が広がっていく。それはまるで清らかな水の中に漸次的に墨が落ち、漆黒に濁らせていく様だった。


 ——いや違う、違うはずだ


 俺はあり得ざる可能性を強引に捩じ伏せる。


 幸いにも月は雲間に隠れ、一帯は闇に覆われている。影の使用には事欠かなかった。元から撤退するつもりであったため『影』は起動しており、俺の体は半ば飲み込まれている。


 間もなく俺の体は影に呑まれた。


 「待って——」


 呼び止める彼女の声が聞こえる。だが、俺はその言葉から逃げるように階下へと下った。




 「はぁ…はぁ……はぁ」


 俺は両膝をつき、心臓を握り込むように胸を抑える。呼吸は荒い。冷や汗がどっと込み上げる。体は明らかな不調を来していた。


 …今は任務中だ。今のお前は『同族殺し(エピュラトゥール)』だ。犬塚綾人じゃない


 自分に言い聞かせるように胸中で唱え、深呼吸を繰り返し、平静を取り戻す。


 それから俺は影を用いての移動を幾度か繰り返し、仲間と合流した。


 俺が離れている間にミロ以外の観測者オペレータが同部隊を監督。聖教の援護をしていたようでそのままビル群から退去するよう命じられる。どうやらあの修道女シスターは単一で動いていたようでそれ故に蜂合ってしまったらしかった。


 「綾人、大丈夫か…なぁ」


 先ほどの部隊員が気さくに話しかけてくる。語尾には憂慮があり、声は小さい。


 「大丈夫です。少し頭がクラクラするくらいで…」


 答えると彼はやや口角を上げながら話し始め、やがて顔を曇らせた。


 「能力の過剰使用か。あの感じだとまたかなり格上を相手したんだろ。お前ぇより弱っちいオレが言えることでもねえけどよ。


 あんま気ぃ張るなよ。独りで抱え込むなよな…おじさんは心配になるんだよ。無理効かせてる若者わかもん見ると」


 どうやら相手は俺の状態を心因性のものではなく、能力使用による不調と見てとったらしい。真偽はともかく詮索されないのは助かる。


 「すいません。気をつけます」


 俺はただ、そう返事をした。


 現場を後にする最中、辺りの空気が弛緩したように感じる。その時、ミロから無線が入り、聖教がビル群全体を制圧した事を知らされた。


 作戦成功の報せが届いたのか、幾許かの後、何処から歓声が聞こえた。


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