表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/229

第87話『村の長老、そして禁忌の扉』

──それは、布一枚すら許されぬ理想郷だった。


リヴァル村の最奥、“神域の回廊”と呼ばれる聖なる地。

その中央に佇むのは、一糸まとわぬ老人──“永遠の長”である。


白髪と長い髭が風に揺れ、その肌は歳月を物語るように刻まれていたが、その眼差しは鋭く澄んでいた。


「来たか……よそ者たちよ」


その声には、威圧ではなく、不思議な重みと静けさがあった。


アリシアは軽く頭を下げると、慎重に尋ねた。


「貴方が……この村を統べる“永遠の長”ですか?」


「“統べる”……いや、それもまた俗な言葉だ。

 我はただ、この村の“在り方”を見届けているだけだよ」


「服も着ずにですか……」


流星が呟くと、長老の眼がピクリと動いた。


「その嘲笑、煩悩の芽吹き……。

 お主の中にはまだ“恥”があるな?」


「いや、それは……見たくなくても見えちゃう位置にあるっていうか……!」


流星の反論に、リリアとアリシアは顔を逸らし、ヴァネッサだけが「ほほう」と興味津々。



長老が語るには──


かつてこの村には「裸の神」と呼ばれる存在が降臨し、衣服を脱ぐことで魂の本質へ近づくという“脱衣信仰”を広めたという。


「しかし神は、愛と快楽を追い求め、ある存在と契りを結びすぎた。

 そう……夢魔と、だ」


その結果、神は“癒し”を越えて“支配”に堕ち、精神と肉体の境界を溶かしてしまった。


「それが、今でもこの村に香として残っている……」


そして、村の最奥──“封印の間”には、その“怪物と化した神”の残骸が今なお眠っていると長老は言う。


「封印は完全ではない。

 奴の“気”が水と空気に混ざり、村人たちはそれを“神の恵み”と誤認してきたのだ」


アリシアは息をのんだ。


「それじゃあ、村人の信仰そのものが……偽りに操られていた……」


「“信仰の仮面を被った洗脳”ってことか……」


流星の拳が、ぎゅっと握られる。


「俺たちで、その封印の間に突入しよう。現実を見せてやらなきゃ、意味がない」


「しかし、お前たちには試練がある」


長老はゆっくりと石造りの扉を指さす。


「封印の扉を越えるには、“心の衣”すら脱ぎ捨てねばならん」


「精神論かいッ!」



その夜、神聖なる儀式“裸の舞”が始まった。


焚かれた香、焚火の火、松明の灯。

その中で、全裸の村人たちが円を描いて踊り始める。


流星たちも、半ば強制的にその中へ。


「うぅぅぅ……服がないって、こんなに無防備なのか……!」


「いや、逆に清々しいかも……? リリアさん、風、気持ちいいです!」


「ミレーユ、適応早いな!?」


ヴァネッサは満面の笑みで、「やっぱ野性よね♡」と踊り狂っていた。


アリシアは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、「……でも、身体が軽い。不思議……」と呟く。


全員の羞恥が、少しずつ浄化されていく。


だが──その奥には、いまだ眠る存在がいた。


“快楽に堕ちた神”。


“夢魔と融合した神性”。


“封印された狂気”。


流星たちは、あらゆる衣を脱ぎ捨てて──


いよいよ、決戦の地へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ