【第83話『服を脱げ──それが掟です』】
風が吹いた。
山の匂いが混じる柔らかな空気の中を、五人の影がのそのそと進んでいく。
目指すは、ギルドから届いた調査依頼の地──リヴァル村。
それは、「服を着ると呪われる」と噂される全裸信仰の村だった。
「癒しと健康の“裸文化”がどう影響しているか、調査してほしい」との依頼書に、
常盤流星は即座に拳を握りしめた。
「行くしかねぇだろ……これは絶対に、風俗系の聖地だッ!」
「またかッ!!!」
先を歩くアリシアが即座に振り返り、流星の頭に本を叩きつける。
「今回は“風俗”って書いてないでしょ!? ちゃんと“文化調査”ってあるわよ!?」
「いや、でも“裸文化”って、もうそれ、ラッキースケベ文化じゃない!?」
リリアも顔を真っ赤にして怒鳴るが、すでに流星の脳内はトロピカルな妄想でいっぱいだった。
◆
村の入口で出迎えたのは、ふんどし姿の筋骨隆々な男たち。
「ようこそ、旅人たちよ。ここリヴァル村の掟は──“すべてを脱ぎ去り、真なる姿で生きよ”!」
「ハイ来たぁああああ!!!」
流星、両手を高らかに上げて叫ぶ。が──
「まだ脱ぐな!!!」
リリアが咄嗟に抜刀し、流星のズボンを切りかけた。
「やっぱり呪いが始まってるじゃないの……この男に!」
◆
歓迎の儀式と称して、村人たちは“脱衣係”として近づいてくる。
アリシアのローブがバサリと剥ぎ取られ、ミレーユのドレスもビリリと破かれる。
「ちょっ……!? や、やめなさい、王族への無礼をッ!!」
「アリシア!? 下着見えてるわよ!?!?」
リリアは自分の帯が引きちぎられ、刀の鞘で胸元をかばいながら全力で抗議する。
「全員一度落ち着けぇぇぇ!!!」
だが唯一、誰よりも冷静な男がいた。
流星である。
「ふむ……なるほど、全裸というのは究極の誠実。“すべてを隠さぬ”という、信頼の証なんだな……」
「その解釈で納得するなァァァ!!!」
全員が叫んだ。
◆
とりあえず、村から配布された“腰布”で身を包み、調査は開始された。
リヴァル村では裸のまま農作業をし、裸のまま湯治し、裸のまま寝る──
そこには羞恥も警戒もない。だが“笑顔だけ”が、やたらと整いすぎていた。
「アリシア……この村、何か“操作”されてるわね?」
「ええ……感情に、何かフィルターがかかってる。これは……幻術香か何か?」
そのとき、流星が村の祭壇近くで見つけたのは、封印された“黒い玉”。
「これは──魔石?」
アリシアが駆け寄り、目を細めた。
「……違う。“快楽を吸収して膨張する”系の封印石。しかも、活性化しつつある……」
ミレーユが呟いた。
「つまり、この裸文化はただの癒しじゃなく、封印された何かを肥やすための“儀式”かもしれないのね」
──全裸で調査しないと呪われる村。
だが、呪いの正体は“煩悩”そのものだった。
「くっ……また“煩悩型事件”かよ……!」
「いつも通りじゃないッ!!」
ヒロインたちの総ツッコミが、静かな村にこだました──。




