表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/229

第80話『夢魔イゼリア、欲望の支配魔術!』

「ようこそ、わたくしの愛と欲望の楽園へ──勇者、常盤流星」


その声が響いた瞬間、世界は反転した。


風が止み、音が消え、色が溶けていく。

重力が曖昧になり、足元が浮くような感覚の中で──

流星は、まるで眠るように瞼を閉じた。


次に目を開けたとき、彼はすでに“精神世界”の中にいた。


 



 


そこは、まさしく“理想の風俗館”だった。


黄金に輝く回廊、羽毛のようなベッド、甘やかすような香の漂う空気。

そして、四方を囲むのは──かつて心を奪われた“伝説の風俗嬢”たち。


「お帰りなさい、流星さま♡」


「あなたを癒すために、私たちはここにいるのよ」


「今日は、どのサービスにしますか? 特別メニュー、揃ってます♡」


しなやかな身体、美しすぎる曲線、完璧な笑顔。

彼の過去の記憶に刻まれた「理想の女性たち」が、実体を持ってそこにいた。


「う、うおお……これは……!」


煩悩が爆発しかけた。

流星の頭の中は、理性と欲望がせめぎ合う戦場と化す。


“このまま流されてもいいのでは”──そんな甘い囁きが、耳の奥で響く。


しかし。


 


──お前の煩悩こそ、私の糧。


 


その声だけは、甘さを含んでいなかった。


氷のように冷たく、深淵のように黒い声。

流星の周囲に現れたのは、夢魔・イゼリアの“真の姿”。


「この空間は、あなたの欲望を反映する世界。

 その欲望が膨れ上がれば膨れ上がるほど、私は満たされるの」


艶やかな指が、空中で舞う。

瞬間、風俗嬢たちがさらに露出を増し、ベッドが揺れ始める。


「煩悩に忠実な男よ。あなたこそ、最も上質な“供物”なの」


流星は膝をついた。

呼吸が荒れ、頭がぼうっとして、目の前の“理想”に視界が曇る。


(ダメだ……これは……抗えない……)


そのときだった。


 


──「流星、聞こえる!? お願い、目を覚ましてッ!!」


 


かすかに、現実の声が届いた。


それは──リリアの声。

すぐに、アリシア、ヴァネッサ、ミレーユの声も重なる。


「しっかりして! あんた、そんな軽い男じゃないでしょ!」


「誘惑に負けるあなたは、見たくないの!」


「帰ってきなさい……! 煩悩王でも、あたしたちの仲間でしょ!」


「あなたの剣は、ただの欲望じゃない。現実を守る力よ……!」


 


その声が、空間を貫いた。


風が吹いた。

イゼリアの笑顔が、わずかに歪む。


 


「なんてこと……この空間は完全な“快楽封印陣”のはず……!」


流星の目が開かれる。

瞳の奥に、確かな光が戻る。


「はっ……はああああっ……!!」


両手で顔を叩く。

幻の風俗嬢たちが悲しげに手を伸ばすが──その幻は、彼の意志で霧のように消えていった。


「たしかに……オレは風俗が大好きだ。癒しも快楽も、めちゃくちゃ好きだ!」


流星が立ち上がる。


「でも……!」


バッと手を前に突き出すと、幻のベッドが砕け散る。


「本当に好きなのは、俺が選んだ風俗で! 俺が決めた相手と! 現実の中で生きて感じる“愛”と“快楽”なんだよ!!」


その叫びに、空間が揺れる。


天井が崩れ、床が裂け、全ての“理想”が灰のように崩壊していく。


 



 


現実世界──神殿の中心。


祭壇の上で、流星の身体がピクリと動いた。


「戻ってきた……!」


リリアの叫びとともに、彼の瞼が開かれる。


「──ただいま……」


流星が起き上がると同時に、イゼリアが呻き声をあげた。


「この私が……心の世界で……敗れた……!?」


「悪いな……“理想”ってのは、自分で築くもんなんだよ……!」


流星が剣を構える。


後方からリリアたちも駆け寄り、神殿はついに最終戦へと突入する──!


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ