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第74話『神殿騎士団、島の秩序を守る者たち』

──午前9時、アナナス島中央神殿・外苑区。


淡い海風が吹き抜ける広場には、きっちりと整列した女性戦士たちの列があった。


銀の鎧。肌を露出した神官風の礼装。腰には儀式剣、そして胸には神紋の刻まれた紋章。


彼女たちは、“神殿騎士団”──この島の“秩序”を守る存在であり、風俗禁止法の背後にいた武装組織だった。


「いいか、諸君。忘れるな。我らの使命はこの島の平穏。男どもが欲に溺れて争いを起こす前に、彼らを“導き”、抑え込むことにある──」


 


先頭に立つのは、神殿騎士団長クラリーチェ


艶のある長い黒髪をなびかせながら、冷ややかな視線で戦士たちを見渡す。


 


「快楽は罪ではない。だが、男がそれを自ら制御できるとでも? だからこそ──支配する必要があるのよ」


「「はいっ!!」」


 


一糸乱れぬ返事が広場に響いた。


その一方で──


 


「……なんか、すごい世界観出してるわね……」


神殿裏の高台から双眼鏡を覗いていたヴァネッサが、腕を組みながらうなった。


隣で、ミレーユが資料をパラパラとめくりながら答える。


 


「この島の政治構造は、神官団と神殿騎士団による二重支配。名目上は“男女平等”の聖域らしいけど……実態は“男を従わせる”システムの上に成り立ってる」


 


「支配と癒しのセット売りってやつか……」


 


流星がぼそっと呟いた。


すでに彼の記憶には、レイナの甘い香と膝枕──“選べない癒し”の余韻がまだ残っている。


 


「それじゃあ結局、癒しも快楽も、“統治ツール”にされてるだけじゃねぇか」


 


「ええ。……そして、騎士団の背後にいるのは、“夢魔系の上位種”らしいのよ」


アリシアが地図にマーキングを入れながら言った。


 


「この島にはかつて“聖霊の祈り”という結界術があって、純粋な心を保つ者しか入れないはずだった。でも、今は……」


 


「快楽で服従させて、その純粋さを演出してるってわけだな。外側だけ取り繕って、中身は奴隷化か」


流星が肩を落とした。


 


──だが、ヴァネッサはニヤリと笑っていた。


 


「わかりやすいじゃない。“男は支配されるべき”って思想? 上等よ」


 


腰の剣を抜きながら、どこか楽しげに声を弾ませる。


 


「筋肉も信念も、殴って通じる相手なら話が早い! ぶちのめして、わからせてあげましょう♡」


 


「お前、そういうところだけは頼もしいな……!」


流星が笑い、仲間たちもうなずいた。


 


──だが、その瞬間。


 


「そこまでです、旅の方々」


 


声と同時に、空気が一変した。


砂利を踏み鳴らす足音。立ち塞がるように現れたのは──


 


神殿騎士団の部隊。正規装備の女性戦士たちが十数名。


彼女たちは剣を構え、しかし礼儀正しく、威圧的に告げた。


 


「この島は“精神の安寧を第一とする場所”。異なる価値観を持ち込む者は、“保護対象”として拘束させていただきます」


 


「……へぇ、拘束プレイから来るとは。新しいじゃない?」


ヴァネッサが鼻で笑い、剣を肩に乗せた。


 


「悪いけど、私は“従属”より“対等”が好みなの。……来なさいよ、“自称女騎士団”さんよォ!」


 


「交戦許可──出ました!」


騎士団長クラリーチェの号令とともに、女たちが一斉に動き出す。


 


「ちょ、待て!? 話し合いとか──あっ!?」


流星は止めようとしたが、すでに遅かった。


剣と魔法と、そして乳揺れと太ももがぶつかり合う、“神殿騎士団vs爆走ハーレムパーティー”の戦いが幕を開けた。


 


◆ ◆ ◆


──結果から言おう。


 


初撃の衝突こそ拮抗したが、ヴァネッサのパワーファイト、アリシアの正確な魔術制圧、リリアの高速剣術、そしてミレーユの戦術支援により、騎士団部隊はものの数分で制圧された。


 


「な、なんなの……あの人たち……」


「男を……あんなにも真っ直ぐ、庇うなんて……」


倒れ込む騎士団員たちが、驚愕と共に呟いた。


 


──そして。


敗北を喫したクラリーチェは、唇を噛み締めながら立ち上がった。


 


「あなたたちは……なぜ、男をそんなにも“対等に扱う”の?」


 


それに答えたのは、アリシアだった。


 


「簡単よ。“愛する”っていうのは、“支配する”ことじゃないから」


 


「……!」


 


「癒しは、選ぶもの。快楽もまた、“相手の尊厳”があって初めて成立する。あなたたちのやっていることは、“快楽の独裁”なのよ」


 


騎士団員たちが、次第に言葉を失っていく。


その隙に、ミレーユが地図の奥を指差した。


 


「……結界の本体は、神殿の最奥部。“教主の間”と呼ばれる区域にあるはず。そこに、“神を騙る夢魔”がいる」


 


「行こう。終わらせに」


流星は、剣を握ったまま、まっすぐ前を見た。


彼の瞳に、迷いはなかった。


 


──快楽も、癒しも、選ぶ権利がある。

それを守るために、俺は剣を振るう。


 


それが、“風俗を愛する男”の矜持だった。

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