表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/229

第70話『愛と煩悩の境界線──ユルヴァーナに春が来る』

──夜明け前。

ユルヴァーナの空が、少しずつ春の匂いをまとい始める。


数日続いた幻術と快楽支配の事件が終わり、夢魔エイリーンの結界が消えたこの村には、ようやく穏やかな時間が戻っていた。


神殿風俗街の住人たちも目を覚まし、自らが“与えるだけの愛”に縛られていたことを思い出し──そして、静かに涙をこぼした。


癒しとは、支配ではなく。

快楽とは、拘束ではなく。


そう、選べること──

それこそが、この世界の自由だった。


「──ふぃーっ、やっと終わったかぁ……」


流星は広場の噴水に腰掛け、首筋の汗をぬぐいながら大きく伸びをした。


「これでようやく、まともに風俗に行ける世界になったってことだな」


「お前さあ……言い方よ」


呆れた声とともに、リリアが後ろからどかっと隣に座る。


変わらず鋭い目つき。でも、ほんの少し──

その目尻は緩んでいた。


「でもまあ……アンタの煩悩がなきゃ、この村も救えなかったのは事実だしね」


「むしろ、煩悩がなかったら何も始まらなかったっていうか……」


「ほんと……バカな男」


そう言いながら、アリシアも横に腰を下ろした。

肩を預けてくる感触が柔らかくて、流星は少しだけドキッとする。


「でも……私は、あなたが“選んだ愛”を信じたいと思った」


「えっ、それってつまり告──」


「黙ってろ変態」


「えぇっ!?」


「うおっ!? こら、背中に乗るな!」


「やーだー♡ 流星くんの背中、落ち着くんだもん〜」


ヴァネッサはすでに半分乗っかっていた。


「さ、今日も一緒に寝よ? 添い寝♡」


「いきなり再開すなァ!!」


「まぁまぁ、今夜は祝杯だし?」


「全員──落ち着けぇぇぇぇぇえええッ!!」


絶叫する流星の声が、春の風に溶けていく。


だが、その叫び声の奥には──

ほんのわずかに、笑みがあった。



数日後──


再建されたユルヴァーナ風俗街では、新たな風が吹いていた。


・女性客専用の癒しサロン

・男女カップルで楽しめる温泉型風俗店

・“選べる愛”をモットーにしたラウンジ式店舗


「……やっぱり“選べる”って大事なんだな」


流星は、のれんの前でふとつぶやいた。


ギルド長:「君たちが残した功績は大きいよ。ユルヴァーナは、今後も王国の“癒し文化”の拠点となるだろう」


「いや~、俺、ただ風俗に通ってただけなんですけどね……」


「そんな“信念ある煩悩”を持った男が、一人くらいいてもいい」


「やったー!? それって褒めてます!?」


リリア:「ま、あんたの煩悩がなきゃ、世界も救えなかったんだから……」

アリシア:「今日だけは……ちょっとだけ、許してあげる」

ヴァネッサ:「じゃあ今夜は“私がご褒美あげる♡”」

ミレーユ:「ま、そういう“バカ正直な英雄”も、悪くないかもね」


流星:「……うわーこれ、また地雷地帯の予感しかしない……!!」


春の訪れと共に──

一つの戦いは終わり、そしてまた新たな風俗(?)の旅が始まる。


だが、確かなことが一つだけある。


“風俗を愛する男”と“その煩悩を見守る女たち”の物語は──まだ、終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ