第68話『夢魔女王エイリーン登場! 真の黒幕、現る』
ユルヴァーナ村、地下神殿の最奥。
そこは、漆黒の結界に包まれた空間だった。
床も天井もない。ただ、浮遊する無数の“夢”が空間を漂っていた。
リリアが剣を構える。
アリシアが魔力を練り上げる。
ミレーユが符術を手に。
ヴァネッサがぐいっと胸を張った。
そして──その中心に、彼女は現れた。
「やっと来たのね……“現実に縛られし者たち”」
艶やかな黒髪、乳白色の肌、金と紫の混じった瞳。
姿こそ人間の若い女性に見えるが、圧倒的な“支配の気”が空気を震わせる。
夢魔女王。
千年の昔より快楽の王座に君臨したという、古代種の夢魔だった。
「私の理想郷へようこそ。ここでは、男は愛玩され、女は崇拝される──それこそが、正しい“癒し”なのよ」
「……なにその世界観。気持ち悪っ!」
即座にリリアが突っ込むも、エイリーンは微笑むだけだった。
「争う必要はないの。あなたたちにも、理解してもらうだけ……ふふ、時間はあるわ」
その瞬間、空間全体が輝きを放つ。
床が、天井が、世界そのものが“ひっくり返る”ような感覚に包まれ──
──視界が、白く弾けた。
◆ ◆ ◆
次に気づいたとき、流星は“見慣れない重み”を感じていた。
「う、わ……!? な、なんで……胸が、あるッ!?!?!?」
見下ろせば、自分の体が完全に女性のものになっていた。
細く、丸く、肌もやわらかい。髪は腰まで伸び、声も高く……完全に女の子だ。
「お、俺……俺ぇぇぇぇぇっ!!?」
隣から聞こえた悲鳴に、顔を向ける。
「ちょ、ちょっと、私の……っ、これ、でかすぎない!? こんなの走れないってば!」
金髪のアリシアが、もとい“アリシオ”が、巨乳ボディで狼狽えていた。
その後ろでは、リリアが筋肉隆々の体で半裸になっていた。
「ひゃっ!? な、なにこれ!? やだ、毛深い! 髭!? 髭生えてる!? ちょ、ムリ無理無理!!」
ヴァネッサに至っては──
「フッ……なんか、こう……俺、いけてね? すげー、パワーみなぎる!」
やたらノリノリだった。
そこに響くエイリーンの声。
「ここは、“幻想性別領域”。あなたたちは、互いの役割を“再定義”されるの」
「ふざけんな! 女が偉いとか男が服従とか、誰が決めたんだよ!!」
流星が怒鳴るも、声が高くて威厳がない。
“女流星”の姿は、もはやヒロイン枠。
「私が決めたのよ。私こそが、この世界の“愛の理”なのだから」
エイリーンの瞳が妖しく光った。
「さあ──あなたたちも、悦びなさい。“与えられる癒し”に、抗う理由なんてある?」
その時、流星は一歩前に出た。
揺れる胸に違和感を覚えながらも、キッと顔を上げる。
「あるよ。“自分で選ぶ”自由ってやつが!」
夢魔の支配に、反旗を翻す。
“逆転世界”での戦いが、今、始まった──!




