第6話 『ついに手に入れた!風俗への切符』
ギルドの受付嬢が、銀貨の入った革袋を流星に手渡すと、彼はついに確信した。
「……ついに……俺は……!」
ギュッと銀貨袋を握りしめ、その場で静かに──いや、劇的に宣言する。
「ついに……俺は“異世界風俗”への切符を手に入れたッ!!」
ガッツポーズ。満面の笑み。
獣耳の受付嬢は微笑を浮かべつつも、どこか生温かい視線を送っていた。だが、流星にはもう見えていない。彼の視線の先には、かつて夢見た桃色の楽園が広がっていたからである。
「やったぜ! これで俺も異世界風俗童貞卒業だッ!」
──その夜。
流星とリリアは、街外れの静かな宿にチェックインしていた。
素朴な木造の建物で、二階にある個室には二つのベッドと小さなランプが灯っている。
「じゃあ俺、今日は出かけるから。ちょっと夜の修行に」
「修行?」
「そう、心と体のリフレッシュ修行!」
「……もしかして、それって“風俗”と関係ある?」
「うん。全力で関係ある」
「……流星」
リリアが、ふいに真顔になった。
ベッドの縁に腰かけ、スッと視線を彼に向ける。その目は、冗談や軽口を許さない、本気の眼差しだった。
「“風俗”って……どういうところなの?」
「えっ?」
「正直に言って。私は……あまり詳しくない。娯楽施設か何か、とは思っていたけど……あなたが命をかけてまで通いたがってる場所、どうしても気になるの」
流星は、少しだけ迷った。
しかし、リリアの目が真剣であることを悟り、息を整える。
「風俗ってのはな……“合意のもと”で、女の子と……まぁ、その……」
「体を?」
「うん。でも、ただの欲望じゃない。癒しなんだ。仕事で疲れた心に寄り添ってくれる、プロの優しさがそこにはある」
「……プロの、優しさ……」
「そう。“やらしいこと”もある。でもそれだけじゃないんだ。会話もある。手を握ってくれたり、こっちの心の声を聞いてくれたり……。俺にとって風俗は、たぶん……“女神の社交場”なんだよ」
「……ふふっ」
意外な反応が返ってきた。
リリアは口元に手を当て、くすくすと笑っていた。
「何がおかしいんだよ」
「ごめんなさい。でも……真面目な顔で“女神の社交場”って言う人、初めて見たから」
「俺はいつだって本気だよ。風俗に関しては、な!」
リリアは立ち上がり、流星の顔を見上げる。
その表情には、どこか安心したような、柔らかさがあった。
「あなたがそう言うなら、私は信じる。……だけど」
「だけど?」
「女の子に優しくするなら、冒険仲間にも優しくしてほしいな」
「……そりゃもちろん。俺は風俗だけじゃない、仲間にも紳士だから!」
「……じゃあ、無事に帰ってきて。約束よ?」
流星は、ちょっと驚いてから──頷いた。
彼女の気遣いが、まっすぐに心に刺さる。
「行ってきます。異世界の、癒しを体験しに!」
そう言って扉を開けた瞬間──
「……あ、財布忘れた」
「ぷっ……!」
リリアが耐えきれずに吹き出した。
―――
こうして、風俗のために命を懸けた男・常盤流星は、ついに目標への一歩を踏み出した。
風俗通い、それは異世界でもなお、彼の人生の“癒し”であり、活力の源である。




